既報の通りKDDIは17日、au携帯電話の夏モデルを発表、5月下旬以降に順次発売する。3月30日に発表したスマートフォン「ISシリーズ」に引き続き、今回は通常の携帯電話の発表で、3月発表のデジタルフォトフレーム「PHOTO-U SP01」を含む全13機種をラインナップする。同社のコンシューマ事業本部サービス・プロダクト企画本部長増田和彦氏は、繰り返し「徹底的にこだわった」とコメントし、さまざまな点でこだわりのこもった製品やサービスを用意した。
スマートフォンにはauらしさ、携帯は基本機能にこだわり
現在、携帯市場はiPhoneに代表されるスマートフォンと、これまでの携帯という2つに分類される。auでは、スマートフォンはISシリーズで採用したAndroid OS、Windows Mobileというオープンプラットフォームで展開していく。取締役執行役員常務の田中孝司氏も認めるとおり、auは「スマートフォンで出遅れた」(田中氏)が、「単に海外の端末を売るのではなく、auらしさを打ち出していきたい」(同)考え。
その上でISシリーズでは、「スマートフォンをどういう形で日本に根付かせるか」(増田氏)という考えから、独自のUIや日本独自のサービスへの対応などを加え、「日本市場に向けたスマートフォンのあり方を試行錯誤していく」(同)。
スマートフォンが伸びてきているとはいえ、従来の携帯市場の方がまだ大きい。それに対しては、今夏のモデルでは、auでは「ユーザビリティの向上として、プラットフォームと基本機能の強化に徹底的にこだわった」(同)という。
auの携帯電話では、プラットフォームとしてKCP、KCP+と進化させてきて、今回、さらにそれを「KCP3.0」を採用する。従来使われてきたチップセットに対し、スマートフォンで多く利用されているモバイル向けチップ「Snapdragon」に対応したプラットフォームで、KCP+の機能を踏襲しつつ、Snapdragonに最適化したという。KCP3.0は、今後順次対応端末を増やし、3.9Gともいわれる次世代無線通信LTE時代まで継続して利用する意向だ。同社が今後予定する3G通信の高速化にも対応する。
今夏の新端末では、1GHz動作のSnapdragonを「REGZA Phone T004」「BRAVIA Phone S004」の2機種に搭載。たとえばEメールメニューの起動で2009年秋冬モデルの約2.3倍まで高速化するなど、基本性能が大幅に向上しているという。
同社のユーザー調査では、「ボタンの押しやすさ」「操作のわかりやすさ」といったユーザビリティ関連の要望が高まってきており、メールや通話だけでなく、カメラ、ワンセグ、防水といった機能へのニーズも高いという。
こうした基本機能を「徹底的にこだわる」(増田氏)ことで、ユーザビリティの向上を図ったのが今夏の端末だ。調査では、携帯の水ぬれに困った人が78.5%いたということで、まずは全機種防水機能を搭載。さらに増田氏は、携帯のキーの押し方が3種類に大別できると指摘。1つ1つのボタンを押す「決め打ち」、指を離さずに滑らすように押す「流し打ち」、両方の指を使う「両手打ち」の3種類で、それぞれに適したキーの形を着せ替えることができる「beskey」を提供することで、「入力のしやすさに徹底的にこだわった」(同)。
フェムトセルでエリアにも徹底的にこだわる
ソフトバンクモバイルが基地局倍増をうたい文句にエリア対策を実施しているが、auでもエリア対策をさらに進めるため、自宅用小型基地局「auフェムトセル」を提供する。従来、同社サイト上で受け付けていた電波改善要望に対しての対応も強化する。
要望への対応強化では、自宅で電波が入らないという要望が寄せられた場合、48時間以内に訪問調査を含めた対応を実施する。その際に、フェムトセルの無償提供にも応じ、自宅の電波状況を改善していく。
auフェムトセルは無償で提供される。ただし、フェムトセルに対応するのはおおむねここ1年内に発売された機種。黒い部品はGPSアンテナ。事前に登録された場所からフェムトセルを大きく移動させると電波は停止するそうだ |
フェムトセルは、auのFTTHサービス「auひかり回線」利用者のみに提供されるが、今後他社FTTHや、ADSLサービスへの提供も検討していく。基本的には、主に高層マンションの20階以上の高層階や、高層ビルの狭間など、都市部で電波の入りにくい場所がターゲットで、高層マンションの新設などを踏まえ、対象となる可能性があるのは、今後4年間で10万世帯以上を試算しているという。
郊外では、従来通り基地局の拡大でカバーする方針で、要望が寄せられた全国約2,350コースのゴルフ場クラブハウス、約900カ所のサービスエリア・パーキングエリア、約940カ所の道の駅、2,000平方m以上の商業施設約15,000カ所の全フロアについて、基地局を設置してエリア対策を実施する。
田中氏は、エリアや通話品質について「徹底的にこだわる」と強調。生活圏内のエリア拡充をさらに図っていく考えだ。なお、ソフトバンクは店舗や企業向けにも無線LANアクセスポイントを提供するなどの施策を始めているが、同社では店舗などに対しては、従来通りレピーターなどの提供で対応していく考えだ。
携帯以外のオプションとしては、新たにmicroSDサイズの無線LANカード「au Wi-Fi WINカード」を開発。世界最小サイズということで、対応するT004、S004のmicroSDスロットに装着すると、無線LAN機能が利用できるようになる。無線LANを内蔵した「AQUOS SHOT SH008」と利用できる機能は同じで、自宅や公衆無線LANなどで、3G回線ではなく無線LANでアクセスができる。
3G回線のように通信量の制限がなく、YouTubeやニコニコ動画といった動画共有サービスなど、大容量のWebサイトもそのまま閲覧でき、「LISMO Video」などのコンテンツのダウンロードにも対応する。また、au Wi-Fi WINサービスでは、無線LAN接続中もEZwebや携帯メール、各種携帯サービスが利用可能だ。無線LAN通信はパケット料金が不要なので、携帯の通信料を抑えることができる点もメリットとなる。
au初のデジタルフォトフレーム「PHOTO-U SP01」は、7インチWVGA液晶を備え、リモコンで遠隔からの操作も可能。携帯やPCからSP01に割り当てられたメールアドレスに写真を添付して送信すると、それをそのまま閲覧できる。1メールあたり20MBまで送信でき、サーバー上でWVGAサイズに変換されてSP01に届く形だ。
今回新たに、SP01向けの専用料金プラン「PHOTO-Uプラン」が新設された。同プランでは、2年間の継続契約をすることで、月額基本料金1,440円が390円に、パケット通信料金が1,440~1,830円が390~780円になる「誰でも割シングル(特定機器)」が利用できる。また、2011年5月までは基本使用料のみの月額390円で使い放題になる。
使いやすさにこだわるサービス
携帯サービスでは、今回発表の全モデルにメール絵文字を3,000文字用意。赤外線通信時に、画面に機種ごとの赤外線ポートの場所を表示するなど、「細かな使いやすさに徹底的にこだわった」(増田氏)。
健康サポートサービスKarada Managerに歩数計アプリを追加し、サイトもリニューアル。携帯標準のカレンダーも強化し、従来別アプリで提供されていたau oneカレンダーアプリを統合したのも、使い勝手を高める施策だ。
AR(拡張現実感)アプリの「セカイカメラZOOM」も携帯向けに提供。KDDI研究所が開発した実空間透視技術とセカイカメラを融合させ、「Twitterクライアント機能」も追加したほか、ほかのサービスとの連携も検討していくという。
そのほか、同社ではCSR活動の一環として、au Smart Sport「Green Road Project」の第4弾「沖縄Walk」を5月18日から開始する。7月29日までの間、au Smart Sport Run&Walkで1km走行するたびに1円をKDDIが寄付するというもの。今回は、沖縄の特定非営利活動法人アクアプラネットに寄付され、サンゴ礁の再生活動やサンゴの苗の育成に活用されるという。