前回は、ひまわり証券 営業企画グループの認定テクニカルアナリスト、小山みちる氏に「万能注文」の基本的な使い方を教えていただいた。ポイントは、「イフダン±逆指値付注文」を使って、購入したい価格になったところで日経225miniを買い、同時に、利益確定ラインとロスカットラインをあらかじめ設定しておくことだった。これで、昼間は仕事に集中して相場を気にしなくても、自動的に先物取引ができるようになった。

今回は、さらに話を進めて、小山氏に、米国市場の動きを見て、戦略的に万能注文を使って注文を出す方法を教わった。やや専門用語なども登場するので、初めて読む人は前回の記事から読み始めてほしい。

日米市場の連動性は「単純ではない」

「アメリカ市場と日本市場は連動性が高いことは、皆さんよくご存知だと思います。米国市場が値上がった(始値よりも終値が高い=陽線)翌日の日本市場は高く始まる傾向があります」(小山)。

小山氏は、身振り手振りも交えながら、日米市場の関係について説明してくれた

もちろん、米国市場が値下がった(始値よりも終値が安い=陰線)翌日は、日本市場は安く始まる傾向がある。もし、米国が高ければ日本も高く、米国が安ければ日本も安いという単純な関係だったら、話は実に簡単だ。米国の市場価格を確かめて、日経225miniを取引すれば、全員が利益を出せることになってしまう。

「日米市場の連動性は、単純ではないんです。米国が上がったときは、翌日の日本市場も高く始まりますが、その後じりじりと下がっていくことの方が、わずかですけど多いんです」(小山)。逆に、米国市場が下がったときは、日本市場も安く始まるが、その後じりじりと上げていく場合が多い。

「なぜそうなるかというと、日本市場はギャップが大きくなりやすい性質があるからです」(小山)。日経225先物取引は24時間いつでも取引できるわけではない。9時~11時までの前場と、12時半~15時10分までの後場が、基本の取引時間だ(この他に、16時半~20時までの夕場もあるが、これは翌取引日扱いになる)。つまり、夜の間は取引ができない。これがギャップ(前日の終値と翌日の始値の差)を生む原因だ。

この時間の間に、ニューヨーク市場(夏時間)が日本時間で22時半から朝5時まで取引が行われている。夜中の間に米国市場が値上がりして、朝5時に引けたとする。日本市場も上がる可能性は高いが、朝5時の段階では取引ができない。取引をしたいけどできないという状態が朝9時まで続くのだ。朝9時になって、日本市場が開くと、たまっていた買い圧力が一気に放出されて、高い価格から始まりやすい。

ところが、米国市場と日本市場は連動性が高いとはいえ、100%連動しているわけではなく、互いに独立している部分もある。朝方高い価格で始まるのは、米国市場の影響だが、次第に「日本市場が本来あるべき価格」に戻っていく。一種のリバウンド効果だ。

「日本市場の前日の終値よりも、当日の始値が大きければ大きいときほど(=ギャップが大きい)、その日は下落して終わる傾向が高くなります」(小山)。

前日の終値は、日本市場の適正価格だったかもしれない。ところが夜中の間に米国市場が高騰したので、引きずられて当日の日本市場も高く始まる。しかし、これは高くなりすぎた価格なので、一日かけて本来あるべき価格に落ち着いていく。

基本戦略だけでも"かなりの成績"に

もちろん、必ずそうなるというわけではない。その傾向があるというだけで、どのような条件のときに、こうした状況が生まれるのかは、もっと市場を深く学ばないと分かってこない。しかし、その傾向をはっきりとつかめるようになれば、この日の戦略は実に簡単だ。朝方に「売り」を入れ、夕方に「買い戻して」決済すれば、高く売って安く買うことになるので、利益が出る。

逆に、米国市場が下落して、日本市場が前日終値よりも低い価格で始まったときは、じりじりとあげて終わる傾向があるから、朝方「買い」を入れ、後場に「売り」決済をすれば、安く買って高く売ることになるので利益が出る。

「この基本戦略だけでも、適切に使うことができれば、かなりの成績が出せます。ただ、日経225先物市場は平均して1日で190円ほど、変動しますので、リスク管理上、利益確定の指値注文、ロスカットの逆指値注文を必ず組み合わせてください」(小山)。

まとめると、前日の米国市場が値上がった場合は、「寄付きで売り」「利益確定」「ロスカット」「利益確定もロスカットも起こらなかった場合は、大引けで決済」の4つの注文を入れておくことになる。利益確定ラインとロスカットラインを定めて、上下で挟み込むようにしてやり、その間で変動した場合は大引けで決済して、翌日に持ち越さない。デイトレードのもっとも基本的な戦略だ。

もちろん、米国市場が何ドル以上値上がった場合に有効な戦略なのか、利益確定ライン、ロスカットラインをいくらぐらいに定めると、もっとも利益が出るのか。これは、それぞれの投資家のもっとも重要なノウハウだ。一般には過去のデータにあてはめてみて、検証をしてみるということを繰返し、自分なりの利益確定ライン、ロスカットラインを定めていく。

万能注文は「システムトレードへの第一歩」

では、この戦略を実際に万能注文で設定してみよう。

ニューヨーク市場が大きく値上がりした場合に、この戦略が使える。利益確定ラインを-100円、ロスカットラインを+200円と定めよう(先に売ってからの取引なので、値下がりすると利益が出て、値上がりすると損失が出る)。なお、これらの数値は、例を示すために作っただけの任意の数値なので、くれぐれも参考にはしないでいただきたい。あくまでも万能注文の注文の方法を学ぶための例だ。

前日のニューヨーク市場が値上がりした場合の戦略を、取引システム『先物&オプションWeb』から、発注画面のデモに入力した例。このデモは、無料で会員登録も不要で利用できる

前回紹介した「利益確定ライン、ロスカットラインの両方を設定する注文」なので、注文タイプは「イフダン→±逆指値付注文」を選ぶ。そして、朝方の寄付きで売るのだから「寄成」(寄付きで成行き)を選び、売数量は1にする。これで、市場が開いたときに成行きのそのときの価格で、1枚分の売り注文が執行される。

次に、利益確定は「後場不成」で-100円を入れる。「不成」とは「設定した-100円の利益確定の指値注文が行われなかった場合は、当日の最後の大引けで自動的に決済する」という意味だ。ロスカットの方は「逆指値(成行)」で+200円を入れる。逆指値には「成行」と「指値」の2種類があるが、「逆指値(成行)」を使うのが安全だ。+200円で「逆指値(指値)」を入れた場合、普段は問題ないが、注文が殺到しているときなどは注文が執行される前にどんどん相場が上がっていってしまうことがある。

こうすると、注文はあくまでも「+200円で決済」だから、実際の相場が+205円、+210円となっていくと、永遠に決済されないことになってしまう。ロスカットの網を相場がすり抜けてしまうような現象が起きるのだ。一方で、「逆指値(成行)」で注文した場合、注文の執行に時間がかかって相場が+205円になってしまった場合でも、成行きで+205円で執行される。相場が荒れているときでも、きちんと損切りの安全弁として働いてくれるわけだ。

前日のニューヨーク市場が値下がりした場合は、すべてを裏返した戦略となる。「イフダン→±逆指値付注文」で買数量が1。これで寄付きで成行価格で、1枚を買う。利益確定は「後場不成」で+100、ロスカットは「逆指値(成行)」で-200円。これで、利益確定ライン、ロスカットラインを設定し、その間で推移した場合は大引けで、成行きで決済される。

前日のニューヨーク市場が値下がりした場合の戦略を入力した例

なお、しつこいようだが、利益確定100円、ロスカット200円という数値は、例を示すために適当に示したもので、なんら根拠のある数字ではないので、くれぐれも参考にはしないでいただきたい。では、どのぐらいの数値にするのが適当なのか。また、ニューヨーク市場の値上がり、値下がりとは始値と終値の差が何ドル以上のことをいうのか。さらに、この戦略を使うと、どのくらいの確率で利益を出すことができるのか。数々の疑問がわいてくるだろう。これを解決することが、まさに「相場の勉強」なのだ。

「万能注文を使うことで、昼間忙しくて相場を見る時間がとれない方でも、取引ができるようになります。そして、実はこれがシステムトレードへの第一歩になっているのです」(小山)。

先物取引は、リスクのある投資だ。相場を携帯電話で見て、その場の雰囲気や勘だけで場当たり的に注文を出していたのでは、まぐれ当たりしか期待できない。しかし、こうして戦略を作り上げていくことにより、確実に利益が出せる投資に育てていくことができる。万能注文は、注文の手間を省いてくれるツールというだけでなく、自然と戦略を考えることになる学習ツールでもあるのだ。

以下の画像は、冊子『Mr.デリバティブ堀川の225先物(mini)トレード戦略』の表紙。より詳しい戦略の立て方、パフォーマンスの検証、万能注文を使った発注手順などが解説されている。ひまわり証券 投資情報室長の堀川秀樹氏と小山みちる氏が分かりやすく高度な戦略を解説してくれる。ただし、ひまわり証券先物・オプション口座に10万円以上の残高がある方限定で読むことができるようになっている。