教員のICT活用指導力について
──政府機関や教育機関への支援とは具体的にどのような内容ですか?
教育関連の諮問委員会の一員としてアドバイスを行ったり、必要な調査やレポートを行ったりと様々な取り組みや働きかけをしています。特に大規模なのは、こうしたスキルを子どもたちに教える「教育者向けの技能開発プログラム」です。求められるスキルが変化することになれば、教える側の先生たちも変わらなければならない。インテルは、以前から教育者向け支援に力を入れてきましたが、それは子どもたちの変化を考えているからです。
教育者が養うべきスキルの例
- ○×式ではなく、記述型の質問を行う → 生徒が批判的思考や問題解決のスキルを身に付けることに繋がる
- 子どもたちと一緒に、よりプロジェクト型の学習を行う → 生徒が自発的に、きちんと方向性を決定できる
- 教室の中で、協力を促すグループ分けを行う → コラボレーションの力を養う
- 教員自らが意味のある形で、ICT技術を教室で使う → 子どもたちにICTスキルが身に付く
我々の調査によると、教育省がこうしたスキル変革を推進している国では、詰め込み型教育の国よりも成果が上がったという結果が出ています。批判的な見方をする人もいますが、教育改革のためには進めていくべきであると思っています。
また新しいスキルには、「新しい評価システム」が必要不可欠となってきますので、そちらにも投資をして取り組んでいます。「制度の標準化」や「評価制度」に対しての支援です。
IT企業が取り組む新たな評価システムプロジェクト「ACT21s」
──評価システムはどうなってきますか
これまでの一般的な教育現場では、計算問題や読解力、記憶力といったものをテストで評価してきました。しかし、それだけでは21世紀型のスキルを教えていく過程で、批判的思考や問題解決能力といったものが身についているかどうかを評価することができません。その評価方法自体を検討し、スキル習得をより効果的なものにするために変更を加えていく必要があります。
──そのために取り組んでいることは何ですか
シスコ、マイクロソフト、インテルの3社では、21世紀型スキルを評価するための大規模なシステム開発や、世界共通の教育評価基準の策定のためのプロジェクト「ACT21s (Assessment & Teaching of 21st Century Skills)」を共同で進めています。
ACT21sは、オーストラリア、フィンランド、ポルトガル、シンガポール、英国の5カ国が創設に加わったグローバルなワーキンググループで、各国の政府や教育機関などと連携しながら、心理統計学者、認知科学者、政策決定者などの研究者のグループでリサーチを行い、現在「ホワイトペーパー」の作成などを進めています。内容は、従来の評価用テストにどのような変更を加えていくべきかから始まり、テストデータの解析やプロセスの記録などのICT活用について、政策におけるポリシー策定までと、多岐に渡っています。
またACT21sは、OECD(経済協力開発機構)のPISA(国際比較調査データ)や、IEA(国際教育到達度評価学会)のTIMSS(教育動向調査)といったグローバルな認定機関とも協力しています。これらのプロジェクト調査やコンテンツに関しては、オープンソースの「テスト評価バンク」に公開されていきますので、自由にアクセスして活用していただくことが可能です。