FXオンラインジャパン アナリストチームが最新のデイリーレポートをお届けする。昨日の欧米市場は、大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズによるギリシャやポルトガル国債の格下げにより投資家が質への逃避を強め、株式、商品市場は急反落。為替市場はリスク回避のドル&円買い一色の展開となった。

特にこの影響を受けたのが金融株。ドイツ銀行は投資銀行部門で四半期ベースでの利益額が過去最高となったが、約5%の下落。ソブリン・リスクの震源地であるギリシャでは、同国の国債が『ジャンク等級』まで引き下げられたことから、銀行株指数が9%以上の下落となった。

これにより、ユーロドルへの売り圧力が強まり、1.32のラインをついに突破し、約1年ぶりの1.31台までユーロが急落する展開となった。

本日の主要経済指標

・08:50 日・3月小売業販売額

・08:50 日・3月大型小売店販売額

・10:30 豪・1Q消費者物価

・12:00 NZ・4月NBNZ企業信頼感

・18:30 南ア・3月消費者物価指数

・20:00米・MBA住宅ローン申請指数

・23:30米・週間原油在庫

・27:15米・ FOMC(連邦公開市場委員会)政策金利

要人発言

・15:15シュタルクECB理事の発言

・17:30ウェーバー独連銀総裁の発言

・19:00トリシェECB総裁ギリシャ問題についてドイツ当局者と協議

ギリシャ問題に関しては楽観論と悲観論が入り混じり、その都度株式とユーロの乱高下を演出している。

昨日の欧米市場は、格下げ報道をきっかけに後者の悲観論が急速に台頭し、投資家心理がかなり冷え込んだ展開となったことから、本日の東京マーケットでは企業業績を横目に見ながら、リスク回避と利益確定売りが優勢の展開となるか注目。

為替市場ではソブリン・リスクの高まりから、海外投資家のリスク許容度は急速に縮小している。特にユーロドルでは、約1年ぶりとなる1.31台まで下落する等、ユーロショートがかなり積み上がっているにもかかわらず、更に売り浴びせられる状況となっている。

やはり、今回のS&Pによるギリシャ国債への格付けが『ジャンク級』まで引き下げられたショックは大きい。なぜなら市場では、今回のS&Pに追随しムーディーズやフィッチ・レーティングスもギリシャ国債の格下げを実行するとの懸念が早くも出始めているからである。

現状、ユーロドルは1.31後半まで値を戻しているが、これはオーバーシュートにより買い戻しと見た方がいいだろう。目先、1.3150を完全にブレイクするようなら、1.30台も視野に入る可能性が高まってくる。

また、同じリスク通貨として豪ドルの下落圧力も強まっている。欧州とは違い景気回復の力強さは感じられるが、キャリー取引の主要なターゲットとして見られているだけに、このようなリスク回避の動きが強まった際は、ユーロ同様に急落するリスクがある。今回はそのリスクにさらされ、豪ドル円は85.00のラインブレイクが再び視野に入っている。

本日は10:30に1Qの消費者物価が発表予定となっているが、前期比/前年比で共に上昇しているとの見通し。仮に市場予想を上回る内容となれば、RBA(豪準備銀行)の利上げ観測が再び強まり、ショートカバーのきっかけとなる可能性もあるため注視したい。

一方、株式市場では引き続き企業業績に注目が集まろう。日本でも主要企業の決算発表が佳境をむかえつつあるが、これまでの内容を見ると、やはり新興国、特に中国の旺盛な需要を背景とした業績回復や、2011年3月期の業績見通しが急回復するとの想定理由となっている。

本日も機械、電気機器そして輸送機器をはじめ、鉄鋼や非鉄金属といったセクターでの決算が予定されており、どこまで新興国市場に食い込めたかが明暗を分けそうだ。

ソブリン・リスクの高まりによりリスク回避が強まる中、そのリスクを幾分でも相殺する材料があるとすれば、やはり企業業績の改善しか現状では見当たらないため、主要企業の決算内容に注視したい。

ウォール街株価指数 日足

ドル円 日足