Q:次にあなたの事を。たしかAMDを辞任するときの理由は、家族と過ごす時間を満足に取れないから、という事だったと思います。でもFreescaleの社長もやはり激務に思えるのですが、十分な時間はとれそうですか?

A:あの時とは大分状況が異なっている。AMDでは最後のときは、APAC(Asia Pacific)全体を統括する立場にあった。なので私自身は日本に居る時間は少なく、大半はアジアを飛び回っていた。

飛び回る事そのものに異論はないが、当時ウチの子は大変に小さかったから、子供と過ごす時間が無いのは問題だった。でも今は、子供も成長した(笑)。彼らは大変忙しい(ので私を相手にしてくれない)。加えて言えば、Freescaleは東京以外に大阪と名古屋にもオフィスがあり、特に名古屋オフィスが統括している三河地区は、非常に我々のプレゼンスが大きい。この地域には我々の重要な顧客とビジネスがあるため、恐らくは私の仕事時間の25%~35%はこの地域で過ごす事になると思う。これは私個人から見ればラッキーである(*4)。

*4: 氏の家族は名古屋にお住まいであり、氏は現在単身赴任状態である。

Q:もう名古屋オフィスにはいかれました?

A:まだ私は着任3日目なんだが(笑)。まぁ22日に大阪オフィスに、23日には名古屋オフィスを訪ねる予定だ。また仙台も近いうちに訪れるつもりだ(*5)。私の組織に属する社員がどこに居ようとも、私は会いに行くつもりだ。

*5: 仙台のデザインセンターはすでに閉鎖されたが、東北セミコンダクターの中にFreescaleのオフィスが残っているとの事だった。

Q:この2日間でどのくらいの社員の方と会われました?

A:小さなグループミーティングを何度か開催しており、概ね30人程度と会っている。社員に語りかける機会もあり、多分百数十人になっていると思う。社員と会うことは実に楽しい。

Q:ところでFreescaleにおいて、貴方はどういう任務を担っているのでしょう? 例えば何か数値目標があったりするんでしょうか?

A:少なくとも経営陣から、何か数字で目標を示された訳ではない。ただご存知の通り、私は自分自身や私のチームに高い目標を課すことにしている。ただしその目標が不合理なものであってはいけない。なので私はまずは何が合理的で何が不合理かを学ばなければならない。

加えて、私は製品について学ばねばならないし、顧客についても学ばねばならない。もちろん従業員についてもだ。個人的な希望だが、フリースケール・ジャパンとは長い時期をともにしたいと考えている。そして全ての製品カテゴリーでNo.1ベンダを目指すつもりだ。それにどの位掛かるか、それはわからない。ただこの目標を達成するために私は頑張るつもりだし、チーム、およびカスタマサポートチームへのサポートにも力を尽くすつもりだ。

Q:あなた自身は、どの程度で学習が終わると思いますか?

A:私自身は毎週かなりの時間をチームからの学習時間にあてる予定だ。そして私は良い生徒になるよ(笑)。実際、製品の数がかなりあり、また対応すべき業界も非常に多い。正直、どこまで学習すれば終わるのかさっぱり判らない。とりあえず判るのは、もっと学ぶ必要がある事だけだ。幸い私には良い先生が多い。長年の経験と幅広い知識を持つ社員が教えてくれる。またFreescale University of Japanは素晴らしい学習の場だ。

物事にはステップがあり時間もかかるが、私は学習に時間や情熱を費やしている。やるべきことをちゃんと理解するのに3カ月はかかるだろうし、必要なだけ時間をかけたいと思っている。なぜなら、フリースケールのエンジニアがビジネスを理解しているのと同じくらい私自身もビジネスを理解したいと思っているからだ。顧客の要望はそれぞれの事情に応じた細かいものだし、私はそれを正確に理解して話をせねばならない。私は顧客と会うとき、エグゼクティブの方々だけでなく、担当エンジニアやミドルレベルのマネージャの方々とも話したいと思っている。私の役割は、FreescaleとFreescaleのビジネスのエキスパートとして、顧客のあらゆるレベルの組織に対して会社の代表を務めることだ。

Q:ところで先ほど名古屋エリアで25%~35%を過ごすと仰いましたが、これはつまり自動車メーカーとの関係を重視していると考えて宜しいのでしょうか

A:名古屋だけではなく、西日本全体と考えて欲しい。我々にとって非常に重要な会社は大阪にあり、これは自動車メーカーではない。我々は西日本に多くのビジネスチャンスがあると考えている。こうしたビジネスを獲得するために十分なリソースが無いだけだ。それに、中部は日本の(地理的な)中心だしね(笑)。中部では、FAの分野で重要な会社がある。西日本にはまだまだ多くのビジネスが可能なはずだが、現状のFreescale Japanはあまりに東京中心になっている。しかし、私は東京中心ではなく、日本中心(Not Tokyo Centric, Japan Centric)だ。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの代表取締役社長としてインタビューに応じてくれたDavid M. Uze氏