KDDIは2010年3月期の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比1.6%減の3兆4,421億円、営業利益は同0.1%増の4,439億円、経常利益は同4%減の4,229億円、当期純利益は同4.5%減の2,128億円だった。
売上高は、携帯電話事業分野で端末が高くなる一方、毎月の料金が安くなるシンプルコースの浸透により、音声ARPU(1契約当たりの月間平均収入)が前期比390円減の5,410円となったことなどの影響を受け、縮小。しかし同分野は販売奨励金、端末販売原価の減少、固定通信事業の赤字幅が低下したことなどにより、営業利益はほぼ前年並みとなった。
事業分野ごとにみると、携帯電話事業の売上高は対前年同期比2.5%減の2兆6,501億円、営業利益は同3.5%減の4,837億円、経常利益は同3.6%減の4,906億円、当期純利益は同7.3%増2,932億円。固定通信事業の売上高は同1.1%減の8,392億円、営業損益は442億円の赤字、経常損益は568億円の赤字、当期純損益は684億円の損失となった。
固定通信事業の売上高は、同社と中部テレコミュニケーションのFTTHサービス拡販、連結子会社であるジャパンケーブルネットグループのCATV局数拡大などにより増収であった一方、KDDIの音声系サービスでは減収となったことなどで、全体として減収だったが、アクセスチャージや通信設備使用料などの営業費用も減少したことから、営業損失は前年同期比で、123億円縮小した。
2011年3月期の連結業績見通しは、売上高が同0.1%減の3兆4400億円、営業利益は同0.3%増の4,450億円、当期純利益は同12.8%増の2,400億円としている。携帯電話事業の営業利益は同11.1%減の4,300億円とみている。前期は1,020万台だった「au」携帯電話端末の販売台数を、今期は1,060万台と見込んでおり、携帯電話の累計契約数は前年比93万件の3,280万件を目指す。
営業減益との予想の背景としては以下のような点が挙げられている。前期には3万6,000円だった携帯電話の販売手数料平均単価を、今期は2万9,000円にまで圧縮する意向だが、音声収入がさらに減少となることが見込まれ、au携帯のARPUは、前年比400円減の5,010円と想定していることなどがある。
固定通信事業は前期442億円の損失から542億円改善、100億円の黒字に転換する見込みだとしている。これは、固定系アクセス累計回線数が、前期の594万から648万に増加することが見込まれること。それらのうち、FTTHの累計契約数が同じく151万から204万に伸長、この領域の事業の採算が改善することなどを要因としている。
同社の小野寺正社長は、今年度の課題として、携帯電話事業では「シンプルコースへの移行に伴う、音声ARPUの逓減の下での抜本的な収益性の改善、800MHz帯の周波数再編に向けた、(新800MHz帯/現行800MHz帯/2GHz帯に対応する)トライバンド対応端末への移行促進、スマートフォン、データカードなど、新たな領域への取り組みとデータARPU向上、モバイルブロードバンド時代に向けたインフラ強化などを図っていきたい」と述べた。固定通信事業では「営業利益ベースでの黒字化、FTTHのさらなる顧客基盤の拡大」を重点とした。