ニコニコ動画に投稿された動画の中であまり再生数が伸びなかったものを供養するイベント「動画供養」が、4月17日に都内のスタジオで開催され、その模様がニコニコ生放送で中継された。
「動画供養」はもともと作曲家の船村徹氏が始めた「歌供養」に倣ったもので、当日は鳥羽一郎をはじめ演歌界を代表する歌手が参列。また導師として本物の住職でもあるニコニコ動画ユーザー「蝉丸P」が登場し、供養後には法話も行われた。
動画が流れているモニターに向かう蝉丸Pというシュールな組み合わせに、コメントでは「どう見ても笑ってはいけないシリーズだろ」というツッコミも入った。たしかに厳粛な雰囲気の場に似つかわしくない動画ばかりが流れていた |
自身も「アイドルマスター」などの動画を投稿している蝉丸Pは、法話の中にもこれらの話を例に出しながらわかりやすく「供養」の意味について解説。
すべてを紹介したいところだが、その一部を抜粋してお届けしよう。
自分のリテラシーを過信している方もおられますが、たとえば「アイドルマスター2」が発売されるとか、いや取りやめだとか聞くと、右往左往して案外簡単に釣られるものです(蝉丸P)
供養とは亡くなられた方をはじめ、自分や身の回りの人、この世の中のすべてのものが幸せで苦しみから逃れられますように、と自分の心を養っていただくもの。この養ったものをお供えするから"供養"と言われているのです(蝉丸P)
ニコニコ動画でも、批判したいこともあるし指摘したいこともある。でもそれを言った後、ツンデレ風に「GJ!(グッジョブ)」「お疲れ!」と言っていただけたら、それを励みにみんながニコニコしながら動画を作成してやっていけるのではないか(蝉丸P)
こうした法話に、ユーザーからは「相変わらずわかりやすい例えだ」「ありがたいお言葉」「聞き入ってしまった」といったコメントが付き、参列していた鳥羽一郎も後から「とても良いお話でした」と感銘を受けた様子で語っていた。
なお、イベント後に蝉丸Pに話を伺うことができた。
──動画供養というとずいぶん珍しいイベントですよね
蝉丸P 面白い形の供養っていうのは他にもあるんですよ。人形だったりペットだったり、服の供養だったり。だから動画供養ってそんなにすっとんきょうな話でもないんです。
──動画供養には再生数の少ない動画を再発掘する意味もあるとのことですが、個人的にはどんな動画を応援されていますか?
蝉丸P ニコマス(ニコニコ動画における「アイドルマスター」関連の動画のこと)系の方はものすごい技術を使っているのに再生数が少なかったりするんです。そういうところで勝負してないのかなとも思いますし、MAD系の潔さを感じるので応援したいですね。
──アイドルマスターといえば法話の中にも出てきましたね
蝉丸P 前日に小ネタをちょっと仕込んでおくか、と(笑)
──ニコニコ動画でもわかりやすく仏教について解説されていますよね
蝉丸P ニコニコ動画というツールを使っているだけで、お彼岸で話したり街角で立ったりするのと、やっていることは同じだと思うんですよね。ネタも交えていますけど(笑)
続いて生放送第二部として、動画供養に参列した鳥羽一郎、静太郎、天草二郎、走裕介によるコンサートが行われ、『兄弟船』『師匠(おやじ)』など7曲を披露した。
ネットで演歌を聴くというめったにない機会を得たユーザーからは、「まさかニコニコで鳥羽さんを聞くとは」「動画供養を見に来たと思ったら演歌番組だった」「演歌需要はあると思う」といったコメントが寄せられ、盛り上がりを見せていた。
放送終了後、鳥羽一郎は「若い人が演歌離れしていることもありますし、この機会に『こんな歌もあったよ』『こんな人もいるよ』と思っていただけたら。そういう意味では素敵な番組だと思いました」とコメントした。
来場者数は2万人、総コメント数は10万を超えた今回の動画供養。これを機に、ニコニコ動画で本格的に演歌が聴けるようになる日が来るかも?