欧州50種株価指数
FXオンラインジャパン アナリストチームが最新のデイリーレポートをお届けする。アイスランドの火山噴火の影響が、欧州株式市場全体を直撃している。昨日の欧州株式は、火山噴火がおさまる気配がなく欧州各国の空港が連日閉鎖していることから、ブリティッシュ・エアウェイズ(BAY.L)やルフトハンザ(LHAG.DE)といった航空株が下落。また、この影響は他の産業、特に旅行関連株へも波及し、欧州株式の下げ要因となっている。
それはEMU(欧州経済通貨同盟)に加盟している欧州各国の主要企業50社により構成される欧州50種株価指数も同様。現在は、心理的ラインである3000ポイントを一気に下抜ける展開となっている。
しかし、昨日の欧州市場引け後に独大手自動車メーカー(DAIGn.DE)は、同社が抱えるメルセデス・ベンツ部門の2010年度の税引き前利益額が当初予想を大幅に越え、約25億~30億ユーロの見通しとなることを発表した。同社は欧州50種の構成銘柄の一つであり、指数ウェイトは3%を越え、10位以内に入る。ウェイトの大きい同社の利益見通しがどこまで好感されるかが本日の焦点となろう。また、米企業決算では再び好調な内容が続いていることから、合わせて投資家のリスク許容度を拡大させれば、3000ポイントのラインを目指すきっかけになろう。
現在の状況を日足でみると、上述した3000ポイントのラインはもちろんだが、25日MAもブレイクしている。特に後者の25日MAは3月以降同株価指数を下支えしてきただけに、調整色の強まりと受け止めることもできる。つまりバイアスはショート。
このように考えれば次の下落ポイント、2900ポイントのライン&89日MAが重なる水準でサポートゾーンを形成するかどうかが鍵を握るだろう。
しかし、1時間足で詳細に見ると2925ポイントレベルがサポートとして意識されていることがわかる。4月上旬にも同様の展開が見られ、3000ポイントのライン突破の基点となったことから、変則的なダブルボトム形成により今回も同様の展開になることも想定しておいた方が良いだろう。
本日は2900ポイント台での攻防次第となりそうだ。
NY金先物(6月限)
米証券取引委員会(SEC)が16日、サブプライムローンを組み込んだ債務担保証券(CDO)の販売に絡み、ゴールドマン・サックスを証券詐欺罪で提訴したが、この件に関して米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ゴールドマン・サックスと同様の商品を組成した金融機関として、ドイツ銀行やスイスのUBS、更に現在はバンク・オブ・アメリカの傘下にある米メリルリンチの名前を挙げている。
この記事が示唆するところは、今回の提訴が一金融機関に留まらず世界の主要金融機関全体に波及する可能性があるということだろう。これを突破口に金融規制の動きが強化されると、リスクマーケット全体から本格的に投機マネーの引き揚げが加速する可能性もあるため、商品市場でも先行き不透明感を更に強めている。何故なら商品の場合、金融規制の対象は、主に原油や穀物市場などを対象としたものになる見通しだが、商品インデックス・ファンド(注記参照)等にまで本格規制が導入されると、商品市場全体が本格調整に入るリスクも否定できない状況となっている。
ただこの問題も昨日の米金融大手シティグループや本日のIBMの良好な決算発表を手掛かりに株式市場が反発。これを受けドルキャリートレードの動きが出てきたことで、金相場をサポートするかたちになりつつある。
このように本日は、ゴールドマン・サックスの提訴に伴う先行き不透明感を、引き続き良好な企業業績が打ち崩せるかどうかを試す展開になると思われる。
本日は注目のゴールドマン・サックス(GS.N)や同じ金融機関ではステート・ストリート(STT.N)、そしてUS・バンコープ(USB.N)が米市場オープン前に決算を発表する予定となっている。金融セクターで市場予想を上回る強い内容となれば、株式市場全体でのリスクテイクを喚起する可能性が大きくなる。このような展開となれば、特に金相場を大きく売り込む理由も無くなり、買い戻し優勢の展開となろう。 また、金の需給面では特に割高感がある市場ではないので、1,100~1,130ドル水準では買い妙味もあるようだ。
もちろんゴールドマン提訴問題による調整局面に終止符が打たれたと判断するのは時期尚早だが、昨日の株式市場が良好な企業決算に素直に反応したことは、本日のリスクテイクにとってはポジティブ要因だろう。
※注記:「S&P GSCI」や「Dow Jones-AIG Commodity Index」は、代表的な商品指数で、こうした商品指数に連動するように運用されるインデックス・ファンドの運用資産額は1800億ドル(約19兆円)に達している。