台湾ASUSTeK Computerは14日、米NVIDIAの3D機能「3D Vision」を搭載したゲーミングノートPC「G51Jx 3D」を発表した。同機能を搭載したノートPCが国内で販売されるのはこれが初めて。ASUSとNVIDIAの両社は同日、共同で記者発表会を開催し、今後の戦略などについて説明した。

3Dノート「G51Jx 3D」を持つASUSのEmilie Lu氏(左)とNVIDIAのSteve Furney-Howe氏(右)。両氏がかけているのが3Dメガネ

NVIDIAの「3D Vision」では、ディスプレイに左目用・右目用の画像を交互に表示させ、それに連動して3Dメガネのシャッターを開閉することで、立体視を実現している。このため、ディスプレイは通常の2倍となる120Hzで駆動し、専用の3Dメガネが付属する。この方式は「アクティブシャッター式」と呼ばれ、一般的な偏光式に比べると、フル解像度のまま3Dにできるというメリットがある。

アクティブシャッター式と偏光式の比較。解像度に大きな違いがある

立体視のために、「NVIDIA 3D Visionキット」が標準で付属する

IRエミッターには、深度を調節できるダイヤルがついている

調節時の画面。深度を浅くすれば効果が薄くなり、3D酔いしにくい

NVIDIA Japanの日本代表で米国本社バイスプレジデントであるSteve Furney-Howe氏は、冒頭で「10年前のベストと現在のベストでは定義が大きく様変わりしている。今のベストなビジュアルコンピューティング・エクスペリエンスとは、どれだけ三角形を動かせたかではなく、"現実"をどうやって創り出すかだ」と挨拶。3D Visionにより、「つい最近まで、アバターのような3D映像を見るためには特別な場所に行く必要があったが、同じような体験を自宅で楽しめるようになった」とアピールした。

3Dのコンテンツとしては、まずゲームはすでに400以上のタイトルが対応。主要なプレイヤーソフトにも対応しており、ブルーレイの3D映画などを簡単に楽しむことができる。最近では、インターネットのストリーミングやデジタルカメラの写真などでも3Dコンテンツがあるが、こちらの再生も可能だ。初回出荷の限定300台には、ゲームソフト「AVATAR THE GAME」が付属するという特典も用意されており、購入してすぐ3Dを体験することができる。

ノートPCとしての主なスペックは以下の通り。発売は4月24日(土)より開始する予定で、希望小売価格は20万9,800円。

■「G51Jx 3D」の主な仕様
CPU Intel Core i7-720QM(4コア/1.60GHz)
チップセット Intel HM55 Express
メモリ 4GB
HDD 約500GB
光学ドライブ Blu-rayコンボドライブ
GPU NVIDIA GeForce GTS 360M
ディスプレイ 15.6型ワイドTFTカラー液晶(1366×768)
バッテリ駆動 約1.8時間
本体サイズ 375(W)×265(D)×34.3~40.6(H)mm
重量 約3.3kg
OS Windows 7 Home Premium 64ビット

「G51Jx 3D」。「Republic of Gamers(R.O.G.)」ブランドのノートとなる

暗い部屋でも操作しやすいイルミネーションキーボードを採用

左側面のインタフェース。VGAとHDMI、それにeSATAポートも用意されている

右側面。Blu-rayコンボドライブ、USBポート、オーディオ端子など

記者発表会には、特別ゲストとして米Stereo D最高技術責任者・共同創設者で3Dコンソーシアム事務局長である泉邦昭氏が招かれ、3Dの動向について説明した。

米Stereo Dの泉邦昭氏。3Dコンソーシアムの事務局長も務める

今後も続々とハリウッドの3D映画が登場するという

3D映画としては「アバター」のヒットが記憶に新しいが、2012年までに50本以上もの3D映画が上映される予定だという。このような状況になったのは、「不正コピー対策として、ハリウッドが戦略として3Dを推進した」(泉氏)という事情があるが、これによって「3Dには活況がある。3D映画はもうかるという形が完璧にできた」(同)と評価する。最近では、家電としても、3D対応のテレビやデジタルカメラも登場してきた。

過去にも何度か3Dがブームになったことはあったが、全て一時的なもので終わってしまった。泉氏もよくそれについて聞かれるそうだが、「今回は違う」と断言。「技術の進化によって、お客さんが満足できる画質で提供できるようになった。それから何よりも大事なのはコンテンツだが、ハリウッド映画で感動するような素晴らしい作品が出てきた」とし、「過去のブームとは全く違う」という見解を示した。

もう一人の特別ゲストは、漫画家のモンキー・パンチ氏。3Dが好きで、個人でも楽しんでいるそうだが、自身が描くマンガを3Dにできないかと10年も前から取り組んでいるという。「2Dと3Dでは、モノクロとカラーくらいの違いがある」と同氏。しかしマンガを3Dにするのはなかなか難しく、「Photoshopを使って力業でやったこともあるが、1枚の絵に1カ月もかかってしまった。仕事にならないので挫折した」(同)こともあるとか。

漫画家のモンキー・パンチ氏。ルパン三世のテーマで登場

10年前に3Dにしたルパンの絵。しかし「がっかりした」という

「3Dが発展するためには、我々のような素人が気軽に手を付けられるものでなくてはだめ。例えば一般の家庭で、奥さんやじいさんばあさんが3Dに興味を持つようにならないと、普及しないんじゃないか」と同氏。「いままでプロジェクタを使っていたが、今回こういうPCが出て、もっと手軽に見られると喜んでいる。これを機に3Dが普及して、最終的には、僕の描いたマンガも3Dで見られるようになるといい」と期待を述べた。

また同日、同社からはNVIDIAの「Optimus」技術を搭載したノートPC「U30Jc」も発表されている。内蔵グラフィックスと外部GPUを使用状況に応じてシームレスに切り替えられるOptimusによって、高性能と長時間駆動を実現したモデル。Optimusを搭載したノートPCも国内では初だ。こちらの発売日も24日(土)で、希望小売価格は99,800円。主な仕様は以下の通り。

■「U30Jc」の主な仕様
CPU Intel Core i5-430M(2コア/2.26GHz)
チップセット Intel HM55 Express
メモリ 2GB
HDD 約320GB
光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ
GPU NVIDIA GeForce 310M
ディスプレイ 13.3型ワイドTFTカラー液晶(1366×768)
バッテリ駆動 約9.1時間
本体サイズ 328(W)×238(D)×20~29.9(H)mm
重量 約2.1kg
OS Windows 7 Home Premium 64ビット

「U30Jc」。Optimusを搭載するノートPCは日本では初とのこと

本体カラーはシルバーのみ。ボディはアルミニウムを採用している

ASUS日本法人のシステムビジネスグループ・ビジネスデベロップメントマネージャであるEmilie Lu氏は、「ASUSは会長もCEOもエンジニアの出身。だからこそ、我々は最新の技術で製品を作り、そして完成させることに強い伝統と情熱を持っている」と述べ、日本市場での展望については、「今年はモバイルで全てのセグメントに製品を投入する。国内での販売目標は50万台。3Dに関しては販売パートナーから多くの引き合いがあり、前向きに予測している」とコメントした。

同社の新しいスローガンは「Inspiring Innovation・Persistent Perfection」(希望を与えるイノベーション・目指し続けるパーフェクション)

ブランド戦略。同社マザーボードではお馴染みの「Republic of Gamers(R.O.G.)」ブランドをノートPCにも導入する