前回は、ひまわり証券 営業企画グループの認定テクニカルアナリスト、小山みちる氏と、同社取締役 経営企画グループ ゼネラルマネージャーの鈴木伸夫氏のお二人から、「10万円あれば、日経225先物取引が始められる」という話を伺った。そして、まずは少額でも実際に取引をして、市場とのコミュニケーションをとり、相場感覚を勉強することが大切だというお話をしていただいた。

しかし、こう考えた人はいないだろうか。「昼間は仕事がある。いちいち相場を見ていられない。会社のトイレにかけこんで、携帯電話で相場をこそこそチェックするのは嫌だ」。そう、確かに、先物取引を始めると、いつも相場が気になってしまい、仕事との両立は難しくなる。先物取引も仕事も、どちらも中途半端になってしまって、どちらもうまくいかなくなってしまうのではないかと不安になる人も多いだろう。

「昼間には時間がとれないという方にお薦めなのが、万能注文です」と語る小山氏

「そんな昼間には時間がとれないという方にお薦めなのが、万能注文です」(小山)。万能注文は、ひまわり証券が提供している自動売買サービス。事前に「○○円で日経225miniを2枚購入し、○○円になったら売る」などの注文を設定しておくと、その通りに売買を実行してくれるという自動注文執行システムだ。

つまり、朝ほんの少し早起きして、注文を設定し、会社に行く。昼間は相場のことは気にせず、自分の仕事に専念し、夜帰宅してから結果を見るということができる。忙しいビジネスパーソンにはぴったりのシステムだ。ただ、当然ながら「使い方が難しいのではないか」「そんなお手軽なやり方で、本当にいいの?」という不安もあるだろう。今回から3回にわたって、小山みちる氏に、「万能注文」の使い方を教えていただく。

「最も大切なのは、マネーコントロールの考え方」

ただし、まだ先物取引をしていない人が、いきなり万能注文を使うというのは、難しいのではないだろうか。「むしろ、初めての人にこそ万能注文を使ってほしいですね。そして万能注文で思い通りに取引できるようになったら、本格的な裁量取引やシステムトレードに挑戦してほしいと思います」(小山)。

つまり、裁量トレードを目指すにしろ、本格的なシステムトレードを行うにしろ、まずは万能注文によるトレードから始めるのが、無理のない"先物トレーダーへの道"だと言うのだ。「万能注文は、取引開始の時点で予め損切りや利食いの注文もセットで入れられるので、リスク管理が上手でない初心者の方でも安心して取引することができます」(小山)。そして、万能注文で取引している間に「市場とのコミュニケーション」を通して相場を学び、次のステップへと進んでいくというわけだ。

「先物取引で最も大切なのは、マネーコントロールの考え方です。先物取引は証拠金取引ですから、日経225miniの場合は投資した金額の約20倍の取引をしていることになります。」(小山)。ポイントは、たとえば100万円の資金があったとして、100万円めいっぱい取引をせずに、口座に余剰資金を残しておくことだ。というのは、多くの人にとって先物取引でもっとも避けたいのが追加証拠金、いわゆる追証(おいしょう)だ。

例えば、1万円の値段を付けている日経225miniを5万円の証拠金で1枚購入した場合、実際には証券会社に5万円の担保を預けて、100万円の取引をしていることになる。仮に日経225miniが1万円のときに購入して、すぐに9,800円に下がったとする。すると、100万円で購入したものが、98万円に下がったことになるから、当日に決済しなくても2万円の含み損が出ていることになる。すると、5万円の担保しか預かっていない証券会社としては、この含み損で担保は実質的に3万円に目減りした事になる。そこで、新たに証拠金を2万円入れてもらい、担保を5万円に戻すことになる。

この2万円分が追証といわれるもので、翌日正午までに入金できない場合は、取引が強制決済されてしまう。決済されればその時点の損だけで済むのだが、追証を入金して取引を継続した場合、うまく相場が戻ってくれることもあれば、それ以上に下がって損失がさらに膨らむこともある。損失が膨らむとますます決済の決断ができなくなり、次々と追証を入金して決済を先延ばしにしてしまいがち。この悪循環に陥ると、最悪の場合、投資資金が尽きたところで決済せざるを得なくなり、投下した資金のほとんどを失うことにもなりかねない。

「1回の取引でどれぐらいの損失を許容できるか」を見積もって資金管理

「マネーコントロールの基本は、自分のリスク許容度に合った取引枚数を正しく知ることがポイントです。それを理解するために、追証の水準を目安にすると分かりやすいかもしれません。」(小山)。小山さんに、追証を目安にしたマネーコントロールを教えてもらおう。まず、あなたが100万円の資金を、投資に使ってもいいと考えたとする。これは日経225miniが約20枚購入できる金額だが、もちろんそんなめいっぱいのことをしてしまえば、明日からすぐに追証となる可能性大だ。「最初はいくら資金があっても、まずは1枚から始めて、それからリスクを見積りながら、枚数を増やしていくようにしましょう」(小山)。

証券会社に口座を開設して、100万円を入金した。そこから証拠金5万円を出して、日経225miniを1枚購入した。すると、残りの95万円は余剰資金として残されていることになる。取引で含み損が発生して、先ほどの例では追証が必要な局面になっても、余剰資金の範囲内であれば、追証は発生しない。証券会社としては、すでに口座にお金があるのだから、追証を要求する必要がないのだ。

では、証拠金5万円、余剰資金95万円のパターンで、どうなったら追証が発生するのだろうか。「日経平均1万円のとき日経225miniを買った場合でしたら、日経平均が500円未満に下落しないと追証は発生しません」(小山)。日経平均が500円になったら、あなたに追証がかかるかもしれないが、その前に日本が破産している。

では、2枚買った場合はどうか、3枚買った場合はどうかというのを、表にしてみた。もちろん、実際にはこの他に手数料も必要なので、正確なものではないが、目安にはなると思う。

日経225miniの枚数 余剰資金(証拠金が1枚5万円の場合) 追証がかかる日経平均(円未満)
1 95万円 500
2 90万円 5,500
3 85万円 7,167
4 80万円 8,000
5 75万円 8,500
6 70万円 8,834
7 65万円 9,072
8 60万円 9,250
9 55万円 9,389
10 50万円 9,500

例えば、あなたが100万円の資金をもっていて、日経225miniを5枚購入したとしよう。すると、日経平均が8,500円未満に下落すると、追証が必要になる。それより小さな変動幅であれば、余剰資金の中で決済が行えるので、追証は不要だ。

これはあくまでも追証がかからないことを基準とした計算例だが、取引枚数の増加に伴って、許容できる日経平均の幅が小さくなっていくのが理解できたのではないだろうか。追証がかからないということは、最低でも証拠金の金額は口座に残っているということだが、これを、自分がどのくらいの資金を残したいかを基準にすることによって、取引枚数と日経平均の変動幅の関係を把握することができる。例えば、5枚の取引で最悪でも70万円の資金を残したいと考えるのであれば、日経平均が9,400円まで下落したら損切りしなければいけない。

初心者には「デイトレーディングがお薦め」

では、日経平均はどのくらい動くと考えればいいのか。「この5年間の市場では、平均して1日で200円程度動いています。でも、リーマンショックのときは1日で約700円下がりましたし、今後相場がまったく別の局面に入っていくことも考えておかなければなりません」(小山)。ここが小山さんのいう「市場とのコミュニケーションをとってほしい」の本質だ。どのような相場になっていくのか、それを正確に予測するのはプロのアナリストでも難しいもの。出来るだけ実践経験を積むことで、1日の値幅や相場の流れなどを感覚的につかむことができ、ある程度の予測をたてながら取引することが可能となってくる。

小山氏は、「初心者の方にお薦めしたいのが、デイトレーディングなんです」と教えてくれた

「そのためにも初心者の方にお薦めしたいのが、デイトレーディングなんです」(小山)。 スイングの長期間取引となると、数千円の変動も十分ありえるが、1日で何千円も変動することは極めて考えづらい。さらに、デイトレーディングであれば、夜間取引が行われていない時間に海外で相場が暴落して、朝、取引が始まった途端に大きな損失を抱えていた、というようなこともない。

「そして、最も大切なのが、例えば1回の取引で許容できる損失値幅を100円と決めておいて、100円下がった値段で逆指し値注文をあらかじめ入れておき、損切りをすることがマストです」(小山)。

つまり、まずやるべきことは、自分が1回の取引で許容できる損失額がどのくらいで、連続して何回までなら耐えられるか見積もることだ。ここから、自分が投資できる資金との関係で、最高で何枚まで買えるのか、余剰資金をいくら持っておくべきなのかが決められる。そして、逆指し値注文をきちんと入れておく。こうして、あらゆるリスク要因に対して、予め対応しておくことが大切なのだ。

しかし、「逆指し値注文って、具体的にどうしたらいいの?」「昼間の仕事中は、相場を見たり、注文をだしたりできません」という人も多いはず。こういう人のために、「万能注文」が存在する。

次回は、この「万能注文」の具体的な使い方を、小山さんに教えていただこうと思う。それまでは、ひまわり証券WEB TV「イブニング@ライブ」を見て、先物相場の知識を増やしておいていただきたい。小山みちる先生がナビゲーターとなって、当日の相場の動きを解説してくれる。平日夕方5時10分頃に更新されるが、視聴は24時間いつでもOKだ。