ワコムのクリエイター向けイベント「Wacom Live 2010」では、様々なジャンルのクリエイターたちのトークや、そのテクニックを披露するさまざまなセッションが開催された。
セッション『あなたのWebをカッコよく仕上げるIntuos活用法』では、サンデイデザインのアートディレクターである古沢伸明氏と、フリーランスWebデザイナーの田中クミコ氏が登壇した。この気鋭のクリエーター2名が、ワコムのペンタブレット「Intuos4」を活用したWebデザインを披露。「Intuos4だからこそできるWebデザイン」を来場者に提唱した。
アナログ感で画面の奥行きや空気感を演出
古沢氏は、Webサイトのタイトルまわりに「汚れ」や「カスレ」といったアナログ感を加えることによって、既存のサイトの雰囲気全体を大きく変えられるという例を見せてくれた。「Adobe Photoshop」とIntuos4で、サンプルとして取り上げた既存サイトのテキストレイヤーをビットマップイメージに変換しながら実際に「汚れ」感などを表現していた。
「Webサイトの雰囲気が物足りないというとき、そこにアナログ感を与えていくと、画面の奥行きや空気感がだいぶ違うなと感じるはずです。既存のサイトの背景だけを汚してあげるだけの加工で、全体の雰囲気を大きく変えることができる。これは簡単で便利な手段ではないかなと思います」(古沢氏)
普段通りの筆圧でペンタブレットを使いこなす
田中氏はサンプルの料理サイトにIntuos4とPhotoshopでひと手間かけて印象度をアップさせるというデモを披露。タイトルの文字をテキストではなく、Intuos4でその人なりの筆跡で描き、背景色やトピックスのトーンに合わせて配置するという制作プロセスを見せてくれた。
「書き方のコツなどはほとんどなく、筆圧も普段のボールペンとかクレヨンを持ったときと同じ感じで書けばいいと思います。ペンタブレットをそんなに意識しないで、いつもどおりに書けばいいと思いますね。書き味も細かく設定できていますので、いろいろと試してみてください」(田中氏)
アナログ感を簡単につくりだせるツールとしてのIntuos4を高く評価していた2人。その微妙な筆圧によって太さやカスレ、濃淡が変化する様に来場者は見入っていた。
背景に手描きのパターンを添えて賑やかさを
さらに田中氏は、背景画像にオリジナルの手描き模様(パターン)をタイル状に組み込む作業も見せてくれた。縦横400ピクセルの大きさの新規レイヤーに、音符や星、花などをバランスよく手描きで描いた模様を作成。それを手際よくまとめ、全体のトーンに合わせた色を付けて1枚のパターンとして登録する。それを背景のパターンとして読み出して、タイル状に背景に敷き詰めると、背景画像全体が賑やかな雰囲気になった。「ポイントはタイルの四隅に模様の空きができないように絵を入れていくことです」と田中氏は語った。
筆圧によって濃淡の抑揚を出す
田中氏はさらに、ブラシツールで描くヘッダデザインのデモンストレーションも披露。ブログなどのヘッダおよびナビゲーションまわりに、「汚れ」や「カスレ」といったアナログ感を加えるときのブラシツールの小技を教えてくれた。
「ブラシのオプションを巧みに使うことで、マウスで描くのっぺりとベタな線よりも、筆圧によって濃淡に抑揚が出る線になります。陰影を付けるように、黒の次は白と、色を変えながら、何度も往復させて、筆圧を変えて描いていくのもポイントです。『消しゴム』も同じようにブラシを使うと良いでしょう」(田中氏)
田中氏は背景の「汚れ感」に合わせるようにタイトルにも手をいれ、さらに「ソフト円ブラシ」で「焼き付き」感、「焦げ付き」感のある汚れを付ける作業も見せ、全体の調和を図りながら15分ほどで完成させた。
●Flashコンテンツの制作でも「Intuos4」が大活躍
古沢氏は最後に、Intuos4とPhotoshopのブラシツールを用いて、Flashコンテンツへの応用を教えてくれた。ある画像がスプレーを吹きかけられて消滅するようなイメージのFlashコンテンツを短時間でつくるという流れだ。
「ブラシツールの『スプレー』を選びます。Intuos4でスプレーすることで、筆圧によって自由自在に太さを変えられるので、強く押せば太く、小さい線でスプレーしたい場合は軽くタッチすればいいのです。そのとき、スプレーの太さを大きめに選ぶことがポイントです。このあたりがマウスにはできないところで、筆圧で吹きかける大きさを自由に変えられるところがペンタブレットのいいところです」(古沢氏)
数種類のスプレーを使用して作成したイメージをビットマップイメージとし、Flashとしてモーションを加えれば完成となる。
このセッションで印象深かったのは、Intuos4の筆圧による表現力の豊かさと、作業時間の大幅な短縮への貢献だ。2人のクリエイターが見せてくれた制作テクニックやアドバイスを、来場者が熱心にメモをとって学んでいたのも非常に印象的だった。