ワコム主催のイベント「Wacom Live 2010」において、イラストレーター・デザイナーの村田蓮爾氏を迎えてのトークセッションが行われた。村田氏はイラストレーターとして活動しながら、アニメやゲーム作品のキャラクターデザイン、また自転車・時計・サングラス等のプロダクトデザインも手掛けるなど幅広く活躍し、高い評価を得ている。特別出演として、村田氏と親交の深い安倍吉俊氏、加藤アカツキ氏が登壇した。

村田氏が自身の制作環境を語った

村田蓮爾の制作環境

話題はまず村田氏の現在の制作環境について。村田氏の使用マシンはMacintosh G5のデュアル2GBモデル。「最近何かヤバい。デカいブラシを使うとついていけなかったり……」と言いながらも、「PCにはあまり興味がないので、積極的には新しくしていない」とのこと。ペンタブレットは液晶ペンタブレット「Cintiq 21UX」の先代モデルを使用。村田氏は「ダイレクト感がいいです」とこの製品を評価する。以前は通常のペンタブレットを使っていたが、描いている所に線が見えないことになかなか慣れず、液晶ペンタブレットに乗り換えたとのこと。アプリケーションは「Photoshop CS3」を使用している。

もともとアナログで制作していた村田氏は、アニメ『LAST EXILE』のデザインを行っている時、必要に迫られてデジタル環境に移行した。移行当初は「紙の上で出る自然なムラなどのテクスチャを再現するのが難しい」と自身では感じていたそうだ。

独自の質感が村田氏の作品の大きな魅力のひとつだが、これは「Photoshop」のブラシ濃度を10%程度にして重ね塗りをするという手法で実現されているという。安倍氏はこれについて「よくこんな面倒くさい作業をするなと思った」と半ばあきれつつも、Photoshopであの質感を表現する技術に感心していた。

対照的に安倍氏は新しい環境に貪欲で、マシンはIntel Core i7プロセッサ搭載の27インチiMacに30インチシネマディスプレイを併用、ペンタブレットは「Intuos4」のLargeモデルを使用している。この他、音楽・写真用やTwitterの表示専用など大小合わせて8台のモニタに囲まれているという。アプリケーションは「Photoshop CS4」、「Painter 11」といずれも最新版。安倍氏はアルバイトで漫画家のアシスタントをしながら美術系予備校に通い、大学では日本画を専攻。マンガと絵画が同時進行で、さらにパソコン通信で作品を発表するなど色々な活動を行ううちに、それが仕事に繋がったという。本格的にデジタル環境での制作を始めたのは、Macを購入した1994年頃。「まだレイヤーがなくて、塗り重ねが面倒でした」というが、当時から彩色はデジタルで、キャラクターの絵はほとんどアナログで描いたことがないそうだ。

加藤氏はこの中で唯一のWindowsユーザー。ペンタブレットは「Cintiq 12WX」を使用しているが、「12型は色の表現が多少弱い」と感じたため、表示用にナナオの液晶モニタを併用。「でも21型がひとつあれば十分なので、乗り換えるかもしれません」とのこと。アプリケーションは「Photoshop CS3」、「Painter 11」などを使用しているが、「ペイントツールSAI」を周囲で使っている人が増えつつあり、興味を持っているとのこと。「CGがあったからこそ絵を描いている」と加藤氏は語る。昔から絵の具を使っても上手くいかず、大学で知人の環境を使ってCGを扱った時に「これでオレでも色が塗れるじゃんと思って、そこから絵を描き始めました」とのことだ。こうした背景もあって、「アナログの絵を再現しようとせず、CGでできることをやろう」という考えで制作していると述べた。

「New Cintiq 21UX」の印象

ステージ上ではトークをしながら村田氏のライブペインティングが行われていた。ファーストインプレッションを尋ねられた村田氏は「そんなに変わらないかなぁ……」とコメント。それを聞いた安倍氏が「『Intuos3』から『Intuos4』になったとき、精度がすごく変わりませんでした?」と質問したが、「筆圧、よく分からないんだよね」との答え。いまいちピンと来ない様子の村田氏だったが、液晶表面がアクリルから強化ガラスに変わったことで、圧力がかかった際の液晶の滲みがなくなったということを知ると、「あぁ、それは良くなりましたね」と回答。また、村田氏と交代して使用した安倍氏は「始めて使うモノという違和感がないですね。これが最初にあったら、こっちを使ったかも」とコメントした。(※Cintiq 21UXは初期出荷モデルに関しては液晶表面がアクリルだったが、ガラスに変更された)

オプションボタンに割り当てている機能や、電子ペンの芯交換に関してなど、ペンタブレットに関するトークは大いに盛り上がった。

村田氏がトークしながら作品を仕上げていく