こんにちは。一日3時間をニコニコ動画に費やすダメ社会人、山田井ユウキです。

今日もさっそく最近流行の動画や埋もれている良動画を独断と偏見で皆さんに紹介していこうと思います。選ぶ基準はただ一つ、僕の趣味です!

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ニコニコ動画を見ていると、時折「ゆっくり」という謎の単語に出会うことがあります。これは「SoftTalk」や「棒読みちゃん」という文章読み上げソフトで制作された音声のことで、ニコニコ動画ではナレーションや実況動画などに幅広く使用されています。

今回はこの「ゆっくり」を用いた動画を紹介していきながら、その魅力を解説していきたいと思います。


「ゆっくり」発祥の地とされる動画がこちら。そもそも「ゆっくり」とは東方シリーズのキャラクターがデフォルメされたコミカルな生首のイラストのことであり(正確には『ゆっくりしていってね!!!』というセリフが名称の元ネタ）、文章読み上げソフトとは何の関連性もありませんでした。そんな両者を結びつけたのがこの動画の功績であり、これ以降ニコニコ動画では「ゆっくり」といえば「東方シリーズの生首キャラ」を指すようになっていったのでした。

そして現在の「ゆっくり」は、その抑揚のない声の何とも言えない雰囲気に魅了されたユーザーによって各ジャンルへと拡散、様々な動画に使用されるようになります。

便宜上、これ以降の解説では「SoftTalk」と「棒読みちゃん」をまとめて「ゆっくり」という名称で呼ぶことにします。


2ちゃんねるで生まれたドラゴンボールのコピペを「ゆっくり」に朗読させた動画。2分にも満たない短い動画なのでまずはこちらをサクッとお楽しみください。この平坦な声を可愛いと思えるようになったら……あなたも「ゆっくり」の虜になってしまったのかも?


「ゆっくり」のシュールな声色を逆に利用して動画におもしろみを持たせた作品もあります。手書き紙芝居動画の作者である「春原ロビンソン」の作品では、テンポが良くキレのあるネタをゆっくりに朗読させることで絶妙なミスマッチ感を演出しており、ニコ動における"ゆっくり芸"の一つの完成形とも言えるスタイルを確立しています。


ゆっくりジャンルでも最大勢力の一つが、ゲームの「実況プレイ動画」とコラボした「ゆっくり実況」動画です。その始祖とも言えるのが、こちらの「超魔界村ゆっくり実況」。通常の実況動画とは異なり、後から実況のセリフを考えて音声を作ることができる分、ネタが練り込まれているのが特徴と言えます。超魔界村のゆっくり実況はまだ完結していないシリーズであり、続編の投稿が待ち望まれています。


ニコ動で人気のバイオハザード4にも、ゆっくり実況動画が存在します。セリフの面白さはもちろん、仮にゆっくり実況がなくても十分人気が出そうなほど極まったスーパープレイは、バイオハザード経験者ならぜひ一度は見てほしいところ。それにしてもホラーゲームとゆっくり声って、他の動画以上に何とも言えないギャップがあって脱力感もひとしおですね……。


こちらはお馴染み「モンスターハンターポータブル 2ndG」をゆっくり実況でプレイした動画。単なる実況ではなく、"ブーメランのみでクリアする"という狂気に満ちた縛りプレイが、より動画としての面白さを引き立てています。ちなみにシリーズPart16ではSoftTalk男性2のバージョンが「アラン」という名称で登場。いつものゆっくりとはまた違った味わい深い声をお楽しみください。


ここまで動画をご覧いただいておわかりの通り、「ゆっくり」は文章読み上げソフトであり、ボーカロイドのように"歌わせる"ためのソフトではありません。しかし、だからといって諦めないのがニコニコ動画ユーザーの凄いところ。この「ゆっくりが歌う『アンインストール』」は、ゆっくりボイスを歌声として操るうｐ主(動画投稿者)の一人、「アンインストールの人」による作品で、60万を超える再生数が、この動画がニコニコユーザーに与えた衝撃の強さを物語っています。

では最後に、僕の一番好きな「ゆっくり」動画をご紹介して締めくくりたいと思います。


ゲーム「ロマンシングサガ ミンストレルソング」に登場する楽曲「熱情の律動(リズム)」。フラメンコを思わせる軽快なリズムが特徴で、ネットで空耳の歌詞が作られるほどの人気ぶり。その歌詞(空耳ver.)をゆっくりに歌わせた本動画は、不思議な中毒性により一度聞くとループから抜け出せなくなること間違いなしです。

──まったく無関係だった二つの文化がたまたま出会ったことで化学反応が起こり、生み出された「ゆっくり」というジャンル。これこそが、ニコニコ動画がクリエイティブな場として機能していることを表す何よりも確かな“シンボル”と言えるのかもしれません。

勝手エヴァンジェリスト・山田井ユウキ

1980年生まれ。レビューサイト「カフェオレ・ライター」で、映画、漫画、ゲームなどを独自視点からレビューする他、「builder by ZDNet Japan」「ハリウッドチャンネル」など各種媒体で記事を連載中。どんなに忙しくても一日数時間ニコニコ動画に費やすという、社会人としてあるまじき生活を謳歌中。好きな動画ジャンルはゲーム実況、ボカロ、他エンタメ系全般。

(タイトルイラスト:3P3P)　※本コラムで紹介している動画は、作者やサイトなどの都合により削除されることもあります。あらかじめご了承ください。