すべてはこのNew York TimesサイトのFlashビデオリンク切れ映像から始まった

時はさかのぼるが、今年1月27日のiPad発表会の日、米Apple CEOのSteve Jobs氏が行った1つのデモストレーションが、対立のサインとなっていた。互いにパートナー関係にあると思われていたApple、Adobe、Googleの3社は、実は水面下で激しいつばぜり合いを繰り返していたことが顕在化したからだ。iPadのデモで登場したFlashビデオのリンク切れから始まったいざこざは、現在新たな展開を生み出しつつある。

AppleがiPhone OSでFlashをサポートしない正確な理由を知るものは内部関係者だけだが、「【レポート】Apple ジョブズCEOの"怠け者"発言にAdobe CTOが反論 - Flashの裏事情と見解」のSteve Jobs氏自身の発言にもあるように、今後技術的進歩があるにせよ、iPhoneやiPadでFlashが動くことはなさそうだ。だがiPadのデモストレーションで登場したリンク切れのように、これらデバイスを利用するユーザーがWebアクセスで不自由を強いられるのは不愉快だ。それがベンダーの政治事情とあってはなおさらだろう。

そうした中、ビデオソリューションを提供する米Brightcoveが発表したのが「Brightcove Experience for HTML5」だ。

iPhone OSはFlashをサポートしないが、HTML5による動画プレイバックには対応するため、「<VIDEO>」タグ経由での動画配信では前述のようなリンク切れを起こさない。Brightcove Experience for HTML5ではH.264コーデック変換やFlash/HTML5ビデオ用動画プレイヤー作成機能を有しており、Flash対応と同時にHTML5フレンドリーな配信プラットフォームを構築できる。

Brightcove Experienceは接続したデバイスを自動的に検知し、Flash配信とiPhoneなどのプラットフォームに向けたHTML5をサイト側で切り替える。また既存のBrightcove Experienceが持つ広告配信や解析機能なども順次HTML5対応を進める計画を出しており、iPhoneユーザーがFlashまわりで苦慮する場面は少なくなりそうだ。なお前述のNew York Timesは、Brightcoveの採用でサイトをiPhone/iPadに全面対応するよう改装を進めているという。

「捨てる神あれば拾う神あり」ということわざがあるが、捨てられる側となったFlashを拾い上げたのは他ならぬGoogleだ。米ZDNetは、GoogleがChromeブラウザやOSプラットフォームにAdobe Flashをバンドル提供する計画があると関係者の話を報じている。「【レポート】新たな「シリコンバレーの戦い」に突入したAppleとGoogle」にもあるように、AppleとGoogleは強力なライバル関係にあることが示唆されているが、同じくAppleと対立が深まりつつあるAdobeがGoogleと手を組むことで、Apple包囲網を敷く形になる。敵の敵は味方ということだ。もし新たな追加情報がある場合は、追ってレポートしていく予定だ。