米Appleが4月3日のiPad発売と同時に提供を開始するとみられる電子書籍販売サービス「iBookstore」では、現時点で5つの出版社パートナーが発表されている。これらはすべて「世界6大出版社」に含まれる企業だが、残り1社であり世界最大の出版社 - 米Random Houseの去就に注目が集まっている。英Financial Times(FT)は、同社がiBookstoreのビジネスモデルを巡っていまだAppleとの契約締結に至っていない現状を伝えている。
米Appleの電子書籍販売サービス「iBookstore」 |
世界6大出版社のうち、「Hachette」「HarperCollins」「Macmillan」「Simon & Schuster」「Penguin」が出版社パートナーとして発表済み |
FTがRandom House CEOのMarkus Dohle氏のコメントを伝えるところによれば、4月3日のiPadリリース前にAppleとの契約が結ばれる可能性はあるものの、依然として懸案事項が残っている状態だという。 その理由は、電子書籍の売上を7:3でコンテンツ事業者と分け合う価格モデルで、これがいかなる商品の販売にも適用されることにRandom House側が躊躇しているという。
従来の書籍モデルであれば、出版社は書店に対して割引価格の書籍を卸し、書店はそれに対してマージンが出る程度に価格を上乗せして販売を行っていた。こうした形態であれば出版社は価格競争に巻き込まれず、一定水準の売上を確保できたからだ。
ところが、iBookstoreでは出版社自身が価格を設定し、その売上を販売代理店であるAppleと分け合う形となる。こうした形態では、出版社自身が低価格競争に巻き込まれる危険性があるというのがRandom Houseの懸案事項となる。
Random Houseの今後の動向は不明だが、前述のように「Hachette」「HarperCollins」「Macmillan」「Simon & Schuster」「Penguin」といった5大出版社はすでにAppleとの契約に同意している。また直近では、Wall Street JournalもApp Store用のアプリ形態でコンテンツの提供を発表しており、次々と大手がiPadに集まりつつある(「米大手新聞Wall Street Journal、iPadコンテンツ市場に参入へ」)。ある程度の市場形成が見込まれる以上、遅かれ早かれRandom Houseを含む大手メディア企業らはiPadに参加せざるを得なくなる可能性が高い。