米陸軍(US Army)の幹部らが3月初旬に米カリフォルニア州クパチーノにある米Apple本社を訪問し、キャンパスツアー後に同関係者らとのミーティングを行ったことが話題になっている。その目的は何か? もちろん、Appleの持つ技術、特にモバイル技術を軍隊の最前線に導入することにある。いつの日か、戦場で兵士らがiPhone型モバイルデバイスのタッチパネルを集団で操作する姿を見ることになるかもしれない。
この幹部らのApple訪問記は、米陸軍のニュースページに掲載されている。米陸軍少将でRDECOM (Research, Development and Engineering Command)担当のNick Justice氏とそのチームメンバーらは5日にAppleキャンパスを訪問し、同社研究所や施設を見学した後、現在陸軍内で利用されているApple技術についてミーティングを行ったという。
軍隊用の装備といえば、耐久性やセキュリティを考慮した無骨なイメージが強いが、専用デバイスの開発には何十億ドルといった予算が必要とされ、コスト的にも技術トレンド的にも必ずしも要求にマッチしたソリューションとは限らない。現在陸軍では商用モバイルデバイス、例えばiPad、iPhone、iPod、MacBook、iMacといった製品の評価を行っており、これらをいかに活用するかに注視しているという。
「陸軍は旧来のソリューションから離れ、こうしたデバイスの兵士による戦場への携行を検討している。現在継続的に商用技術の転用を評価しており、こうした既存の知識を活かさない手はない。納税者の資金を預かる以上、適切な技術を見極め、可能な限り利用していきたい」とJustice氏は語る。
興味深いのは、すでに一部で技術の活用が始まっている点だ。今回の計画は「Connecting Soldiers to Digital Applications」(CSDA)プロジェクトの一環だというが、特に商用携帯電話におけるデバイスとアプリ、そしてネットワークの関係に注視しているという。その成果の一部が陸軍の開発したiPhoneアプリで、暴動などの情報を集める「COIN Collector」、軍隊向けSNS「MilSpace」の2つがすでに検証されているという。
また、こうした内部利用向け以外の一般向けアピールとして、同軍は2月に軍の最新技術や情報を紹介するiPhoneアプリ「Army Technology Live」をApp Storeに登録している。このほかAppleInsiderによれば、ハッキングの検証やデジタルサーベイランス(監視)システム用途向けにApple製品を導入しているほか、イラクでの通訳用途にカスタム仕様のiPodを兵士に携行させていたという。
意外というと失礼だが、思っている以上に軍の世界にはAppleを含む一般商用IT製品が浸透しているようだ。この陸軍幹部と研究員らによるAppleキャンパス訪問は、将来の研究開発に向けた討論を約束して終了したという。