最近人気のタフネス性能を備えたコンパクトデジタルカメラに、ソニーから新製品が登場した。「サイバーショット DSC-TX5」は、タフなのにオシャレなカメラに仕上がっている。

水にも衝撃にも泥にも強く、さまざまなシーンで使えるDSC-TX5

スライド式レンズカバーなのに防水

デジカメの3大天敵といえば、水、ホコリ、衝撃だ。精密機器なのだから当然だが、突然の雨、水や砂、塩だらけの海や川、子供と遊ぶどろんこ遊びや砂場遊び、転びやすく濡れやすいスキーなど、デジカメを持っていきたいのに持ち出せないシーンは多いものだ。

遊んでいたら、それだけいい表情になることが多く、決定的瞬間も起きやすい。にもかかわらず、そんなときに限ってデジカメが持ち出せない。そんな課題に果敢に挑戦しているのが、最近増えているタフネスデジカメだ。

水が入り込まないように防水仕様にしてホコリの侵入も防ぎ、衝撃にも強いタフネスデジカメは、ほとんどのメーカーがリリースする人気ジャンルに成長している。

今回ソニーから登場したDSC-TX5は、一見するとまったくタフネスデジカメに見えないのが特徴の1つだ。タフネスデジカメは、強靱なボディを持つ分、いかにも「タフ」といったデザインになりがちで、それはそれで1つの魅力ではあるが、DSC-TX5は、姉妹機のDSC-TX7とほとんど変わらないスライド式レンズカバーや背面のタッチパネル、薄型のボディを実現していて、普段遣いでもまったく違和感がないデザインに仕上がっている。ちなみに、このスタイリッシュデザインで、JIS/IEC保護等級8(IPX8)相当、水深 3.0m/60分までの撮影が可能となっている。

普通のTシリーズといってもおかしくない、薄型のスタイリッシュなスタイル。このボディ、防水、防塵、耐衝撃性能を備えている

カラバリも豊富でスタイリッシュ

本体サイズは94(W)×56.9(H)×17.7mm、約128gで、DSC-TX7が97.8×59.5×17.5mm、約133gだから、タフになってもサイズが大型化されていない点は見事。

デジカメをイベントのためだけに持ち出すのではなく、普段から持ち歩いてもらうためには、こうした気軽に持ち歩く気になるようなデザインは重要ではある。その点、DSC-TX5なら、ソニーらしいスライドカバー採用のフラットなボディは親しみやすい。

電源を入れるのはスライドカバーを開けるだけ。グローブを付けていても、小さなボタンを押すより簡単だ。シャッターボタンは細長く小さめ。ズームレバーも小さいが、指が引っかかるようなデザインになっており、比較的操作しやすい。

電源のオン・オフは、スライドカバーを上下にスライドさせる。滑りやすい手袋では開けにくいと感じるかもしれないが、コツをつかめばスムーズに開け閉めできる

可動部が多いスライドカバーを採用しながらも、防水や耐衝撃性能を実現したのが、ほかのタフネスデジカメとは異なる点だ。スキーのグローブや手袋などをつけていても、スライドカバーを開け閉めするだけで電源オン・オフができるので、素早い操作が可能だ。

本体上部。シャッターボタンは細長く、親指全体で押すようにすると、手袋をしていても押しやすい。ただ、電源ボタンと再生ボタンは手袋を付けて押すのは難しい

タッチパネルで分かりやすい操作

背面は、タフネスデジカメなのにタッチパネルに対応。タッチパネルのUIはアイコンが大きめなので、ボタンよりもグローブを付けていたり水中で操作したりするときに、押しやすいのがメリットだ。ボタンの場所を覚えて手探りで操作するのは難しいが、軽くタッチするだけで操作できるので、タッチパネルの方が操作しやすいように感じた。

背面はタッチパネル操作に対応し、ボタンはない

アイコンも大きく、指での操作はやりやすい

撮影時に表示されるアイコンはカスタマイズが可能。指でドラッグ&ドロップすることでアイコンを置き換えられる。自分が使いやすいようにカスタマイズできて便利

タッチパネルは従来通り感圧式だが、軽いタッチでも動作し、動きはなめらか。スマートフォンに多い静電容量式と比べても、グローブなどを付けて操作できる分、タフネスデジカメとしてはこちらの方が操作しやすいだろう。手袋していても操作できるのは感圧式ならではだ。

UI自体はDSC-TX7などと同等のもので、大きなアイコンで指での操作に配慮されている。撮影時は、画面の左右にアイコンが並び、それをタッチすることで素早く設定変更できる。

通常の設定変更は指で直接タッチするが、露出補正の場合、指でスライドさせるとダイナミックに露出を変更できる

指での操作に便利なUIも搭載されており、たとえば露出補正では、画面下にバーが表示され、そこを指でなぞることで露出がダイレクトに変わる。プラスマイナスのアイコンを何度もタッチする必要もない。すでにこなれたUIなので、TXシリーズに慣れた人は違和感がないだろう。タフネス性能を備えているのに、タッチパネルの動作には影響がないようだ。

再生画面では、画像を指で左右になぞるだけで画像送りできるので、グローブや手袋を付けていて、小さいボタンで押しづらい、というようなことはなさそう。

再生時の画面。静電容量式のようにマルチタッチの操作はできないが、なめらかに動作する

高感度に強いExmor R

主なスペックとしては、レンズにカール ツァイス バリオ・テッサーを採用。光学倍率は4倍で、焦点距離は35mm判換算で25~100mmと広角対応だ。広角レンズは、一般的な風景用途でも便利だが、特に画角が空気中の1.33倍になる水中撮影で、広い範囲を押さえるのに威力を発揮する。

25mmスタートの広角レンズを搭載。風景撮影、室内撮影に加え、水中撮影にも便利な画角だ

撮像素子は裏面照射型CMOS「Exmor R」を採用。1/2.4型有効1,020万画素となり、レンズを含めてDSC-TX7と同等と考えていいだろう。スペック上の違いとしては、液晶モニタがDSC-TX7の3.5型92万1,600ドットから3型23万400ドットにスペックダウン。液晶自体も高画質のTruBlack技術は搭載されていない。

アクセサリーも充実しており、こちらは水や汚れに強いソフトキャリングケース。5色のカラーが用意されていて、カラビナでバックなどに装着できる

水中にも持っていけるストラップ。水に浮くので、水中にカメラを落としても、すぐに見つけられる

水深40mまで持ち出せるマリンパック。DSC-TX5はタッチパネルだが、パックのボタンを押すと、画面をタッチして操作できるようになっている。すべての操作ができるわけではないので、あらかじめ装着前に必要な設定はしておきたい

さらにDSC-TX7はAVCHD方式のフルHD動画の撮影に対応しており、マイクもステレオマイクを搭載しているが、DSC-TX5ではMP4形式720pのHD動画、モノラルマイクになっている。

一部省略された機能はあるが、Exmor R搭載による機能は健在で、裏面照射により感度が向上し、高感度画質が改善されている。特に秒10コマの高速連写を生かした手持ち夜景モードでは、ノイズが従来比1/4になるぐらい美しい高感度画質を実現している。

短冊形の写真を連写してそれを合成する「スイングパノラマ」を搭載するので、カメラを振るだけで最大258度のパノラマ写真が撮れる。防水機能と組み合わせれば、水中でも簡単にパノラマ写真が撮れるというメリットもある。新機能である「顔・動き検出」も備えており、パノラマ撮影中に動く被写体があっても、それがぶれて記録されないような配慮もされている。

高速連写を使えば、動きのあるシーンでも決定的瞬間をとらえやすい。下手な一眼レフカメラよりも高速な秒10コマという連写は、決定的瞬間を切り出すだけでなく、コマ撮りアニメのような動きのある写真が撮れる。連写枚数が10枚までなので、1秒間しか連写できないというのは残念な部分だし、相変わらず連写後にそれを記録する時間で待たされてしまうが、一眼に比べてタイムラグの多いコンパクトデジカメでも、決定的瞬間を収めやすくなるのは大きなメリットだ。

逆光補正HDR ON(左)とOFF(右)

露出を変えた2枚の写真を、一度のシャッターで連写して撮影し、それを合成する「逆光補正HDR」も搭載。露出アンダーの写真とオーバーの写真を合成することで、ダイナミックレンジを擬似的に拡大する機能で、暗部が明るく、明部は抑えた写真が撮影できる。シーンによっては効果が薄い場合もあるが、一般的なダイナミックレンジ拡大の技術のように、1枚の写真で補正するよりも画質が良いため、逆光シーンでは積極的に使っても良さそうだ。

基本的にDSC-TX5は、DSC-TX7の姉妹機という感じで、一部のハードウェア的な制約をのぞけば、おおむね同等の機能を備えている。フルHDやステレオマイクといった機能の代わりにタフネス性能が追加されており、新たな撮影シーンでの撮影が可能になった。

いつでもカメラを持ち出し、いつでも写真を撮れる。昼も夜も水の中も、どこでもカメラを構えて決定的瞬間を撮影できるのがDSC-TX5だ。

作例