競合は受け付けない自作PCも無料引き取り

代表取締役を務める永野間祐一氏はPC好きが高じて、秋葉原で集めたジャンクパーツから完動品を作り出し、ネットオークションで販売するなどして利益を出す形で、約9年前から株式会社いっとくとして事業化をスタートした。その後同社はリサイクル業者との取引を開始し、動かないPCや周辺機器、古いパーツ類を「商品」として扱う方法を確立した。

株式会社いっとく 代表取締役 永野間祐一氏

「一番多い問い合わせは、"自作PCでも引き取ってもらえるか?"というものです。皆さん、処理に悩んでいるようですね」と同氏は語る。

現在PCにはリサイクルの義務があるが、その処理業者はメーカーとなっており、自作PCは完全に取り残されている。メーカー不在のPCの処理を担当する一般社団法人「パソコン3R推進協会(PC3R)」も拡張ボードやケースなどは扱わない。

また、プリンタをはじめとする周辺機器類にはリサイクルの仕組みがない。個人ユーザーの場合は自治体に粗大ゴミとして引き取ってもらうことは可能だが、レアメタルなどの多くの資源を内蔵する機器を引き取り先がないからといって廃棄してしまってよいものだろうか?

PC内部には豊富な資源が含まれている

また、法人は個人と異なり、リサイクル費用を負担しなければならない。個人向けで2003年10月以降に販売されたPCなら、無償で廃棄できる「PCリサイクルマーク」が添付されているはずだが、法人向け製品にはこれがない。処分時にPC1台、ディスプレイ1台ごとに数千円の料金がかかる。したがって、法人でまとめてIT機器を廃棄しようとすると莫大なコストとなる。

「大企業の場合、新規購入時にまとめて引き取ってもらうなどの方法があるかもしれませんが、そうした方法がとれない中小企業や逐次廃棄したい場合は大きな悩みになるでしょう。しかし、故障したPCにも価値があり、資産であるということを知っていただきたいです」と、同氏は語る。処分に困るCRTディスプレイなども大量引き取りが可能であるため、法人での需要も伸びているという。

とことんまでのパーツの商品化が成功の秘訣

いっとくでは、3つの業者を使い分けることであらゆる部品を処理できるという。なかには金属の形にしてリサイクルするのではなく、部品をそのまま利用する業者もある。「一番欲しいのは、液晶がつかなくなってしまったノートPCですね。割れていると難しいのですが、バックライト切れなどは、技術力のある当社の技術者なら簡単に直して再商品化できます。あとは、CPUやメモリ、拡張ボード類です。古くても壊れていなければ、修理用パーツとして必要としている人がいます」と同氏。

ユーザーの手元にある限りゴミでしかないPCやパーツ類も、欲する人の手に届けば資源化するまでもなく有効利用されるのだ。

こうしたパーツの商品化の実現がいっとくの強みだという。「リサイクルのみで対応していた同業他社の中には、最終的なパーツの行き先である海外の景気が悪くなった2009年に事業が立ちゆかなくなったケースもあります」と同氏。

対応できない素材として挙げられたのは唯一木材で、木製ケースの大型スピーカーなどの扱いは難しいという。しかしそれ以外の周辺機器やゲーム機、家電類は受け入れ可能であり、対応範囲は幅広い。

再生可能なPCは部品を在庫品から入れ替えて再生

再生不能な場合はパーツ単位に分解し、再利用可能なものと資源化するものに分ける