前回は、「先物取引ってそもそも何ですか?」という話を、ひまわり証券 営業企画グループの認定テクニカルアナリスト、小山みちる氏と、同社取締役 経営企画グループ ゼネラルマネージャーの鈴木伸夫氏のお二人にお聞きした。今回は、ひまわり証券が扱っている日経225先物、TOPIX先物を、個人の資産運用として始めるのには、どう考えたらいいのかをお二人に教えていただいた。
レバレッジにより、「少ない資金で投資可能」
個人の資産運用というのは、要は「老後の生活資金」である。いわば"自分年金"。だから、あまり大きな利益は望まないけど、確実に運用できるものがいいとだれもが考える。20年前は、銀行の「定期預金」や「郵便貯金」、「国債」の利回りが高かったので、これらが、自分年金の役目を果たしてくれていた。しかし、今の時代、この3つでは、物価との兼ね合いを考えると、実質目減りしてしまうこともある。
小山氏はレバレッジについて、そのメリットを説明してくれた |
では、リスクが比較的少ないといわれる「株」や「ファンド」のほうはどうかというと、世界的な金融危機を引き起こした「リーマン・ショック」などにより、"リスクの棚卸し"のようなことが起こって、痛い目を見ている人もいるはずだ。そこで、「同じリスクを取るなら、もっと利益がだせるもの」として、「日経225先物」「TOPIX先物」や「FX(外国為替証拠金取引)」などに注目が集まっている。しかし、レバレッジが約20倍使えるという指数先物、100倍のFXは「怖い、リスクが多きすぎる」という恐怖感もある。レバレッジというのは、簡単にいえば「借金をして投資すること」なのだから、当然といえば当然である。
「レバレッジがかけられるというのは、逆にいえば少ない資金で投資を始められるということでもあるんです。少ない資金で投資をして、利益を複利で回していくことができます」(小山)。
「ゼロ円になることはない」日経225先物
「例えば、日経平均の場合、7,000円にまで下がってしまうことはあるかもしれませんが、断言はできませんけど、半分の5,000円になってしまうことって考えられますか? 株はゼロ円になってしまうことがありますけど、日経平均はゼロ円にはならない」(鈴木)。
100万円持っていて、あなたは「日経平均が半分の5,000円になることはない」と確信していたとする。そうしたら、50万円を投資して、レバレッジ2倍で、100万円の日経225miniを1枚買う。残りの50万円はより安全な国債を買っておくというリスクヘッジができるのだ。
「日経225先物というのは、日経225銘柄の分散投資でもある」と語る鈴木氏 |
「日経225先物というのは、日経225銘柄の分散投資でもあるんです」(鈴木)。株を買うときの基本は分散投資だ。異なる業種の株をいくつか買っておくことで、ある株が下がっても、ある株が上がるということで、リスクを減らすことができる。しかし、10社の株を買うだけでも、大量の資金がいる。日経225先物は、mini(ミニ)であれば100万円で225銘柄に分散投資していると考えることもできる。ゼロ円になることはない、225もの銘柄に分散投資できる。日経225先物は、こういう観点で見れば、リスクの極めて少ない投資でもあるのだ。
「日経先物は、きちんと向き合えばリスクが少ない投資ですし、少ない資金から始められる。どうして、もっと広まらないのか不思議なくらいです」(小山)。「日経225先物市場そのもののリスクが高いのではなく、リスクの高い投資法もできる投資でもあるんです」(鈴木)。
「資産の5%を失ったら損切り」が鉄則
よく話に聞く、「家をなくしてしまった」「先祖から受け継いだ田畑を売る羽目になってしまった」などという話は、価格が下がったときに、損切りをすることができず、追加証拠金をどんどん入れていくというケースがほとんどである。損を取り戻そうと、無理な取引をし、どんどん深みにはまっていくパターンだ。
「日経225先物、TOPIX先物を始められるのであれば、損切りという考え方がマストです」(小山)。ところが、これがなかなかできない。損切りをしてしまえば、損は確定してしまう。利益は早く確定したいけど、損の確定はできるだけ先延ばしにしたいのが人間の心理だ。
「取引というのは、買ったら売らなければ終わりません。株を買ってもっているだけの人は、含み損、含み益がでているだけで、取引は終わっていません。買いから売りまで、あるいは売りから買いまでのシナリオを、きちんと描いておくことがとても大切なんです」(鈴木)。
取引のシナリオとは、自分で、この取引ではいくらぐらいの利益を出したいのかをあらかじめ描いておくことだ。そのシナリオ通りの利益が得られる状況になったら、先延ばしにすればひょっとしたらもっと儲けられるのではと思っても、売って取引を終わる。当初のシナリオから大きく外れて、損が出た場合は、もっと先延ばしすれば反転するのではないかと思っても、売って小さな損を確定し、次の取引を考える。いわゆる「指し値(いくら以上になったら売りという注文)」、「逆指し値(いくら以下になったら売りという注文)」をきちんと使いこなすことが重要なのだ。
「一般的には、資産の5%を失う状態になったら損切りというのが鉄則です。弊社のシステムでも、取引をするときに同時に逆指し値注文が入れられるようになっています。この逆指し値注文を入れるというのは、必ずやってほしいですね」(小山)。
「10万円あれば、かなり取引が可能」
では、これから日経225先物をやってみようという人は、いくらぐらいから始めるのが適切なのだろうか。
小山氏は先物投資の安全な始め方について、笑顔で話してくれた |
「一般的には30万円ぐらいの資金を用意して始められる方が多いようですが、まずは実践してみよう、先物取引を練習してみようというのであれば、10万円あれば、かなり取引ができます」(小山)。
日経225mini(ミニ)の1枚の価格は100万円。レバレッジは20倍ほどだから、証拠金5万円を用意すればミニ1枚の取引ができる。そして、5,000円の損になるところで「逆指し値」注文を出しておき、損切りするわけだ。つまり、日経平均が50円変動したら売るあるいは買って、損を確定するようにしておく。こうすれば、証拠金に5万円を使っているので、毎回失敗したとしても10回取引ができることになる。
デイトレーディングだけにすれば、最低でも10営業日、つまり2週間は取引ができる。いくら初心者でも、いきなり10戦10敗ということはないだろうから、買ったり負けたりを繰り返して1カ月間ぐらいは取引ができると見ていいだろう。ということは、1日あたり3,000円ぐらいのコストなのだ。比べていいものかどうかはわからないが、パチンコに通いつめたりするよりは、ずっと低コストで、金融の勉強にもなる。
「初めての方は、10万円を用意して、裁量でトレードしてみるのがいいかと思います。こういうときに市場はこう動くんだとか、こういうときには損をするんだということが感覚でわかってきます。こういう市場とのコミュニケーションをしてから、資金を増やして資産運用に使うとか、トレードシステムを購入してシステムトレーディングを始めるというように進んでいかれるといいと思います」(小山)。
1カ月間、実践的なトレーディング講座を受講するのだと考えれば、忙しい人でも時間はとれるし、10万円という金額も決して高いものではない。「本を読んだり、セミナーを受けるのもとてもいいことですが、やはり自分でポジションをもって体験することが一番です。価格が変動すると喜んだり、不安になったりという心理の動きがあります。これも含めて、先物取引なんです」(鈴木)。
日経225先物、TOPIX先物だけではなく、最近ではFX(外国為替証拠金取引)も人気が高い。FXはレバレッジが大きいので、1万円ぐらいの資金から始められることや、口座開設が手軽にできることなどから、初心者にも入りやすいトレードといわれている。先物との最も大きな違いは、日経先物は取引できる時間が「朝9時~夜8時」で、FXは「24時間」ということだ。昼間仕事に集中しなければならない人は、日経先物を始めるのはなかなか難しいかもしれない。しかし、逆にいえば、FXを始めた場合、24時間相場の動きが気になってしまうということも言える。
「あまりどちらがどうと難しく考えることはなくて、普段から日経平均に興味のある方は日経先物、ドル/円などの為替相場に興味のある人はFXを考えてみるといいのではないでしょうか」(鈴木)。
言われてみれば、仕事をリタイアしたビジネスパーソンの多くは日経先物を始める例が多いし、輸入品や海外旅行に興味のあることが多い女性は、FXを始める例が多いような気がする。自分が興味のあることに投資をする、それはある意味、大正解なのかもしれない。