今年10月31日に本格的に国際化する羽田空港の最新レポート。都心に近く、地方空港からの便も多い羽田から国際線がたくさん飛ぶようになれば海外旅行はもっと身近になる。シリーズ第2弾の今回は、行き先の最新事情をお届けしよう。
羽田からニューヨークへ直行!
去る2月17日、アメリカ系航空会社5社が一斉に羽田発着便の申請をした。日本とアメリカの間では昨年12月にオープンスカイ(航空自由化)協定が結ばれ、原則的に両国の航空会社は自社の裁量で便の就航ができるようになった。
ただ、羽田空港の場合、4本目のD滑走路ができても発着枠はすぐに満杯になるため、航空会社が希望しても国際線の乗り入れは制限される可能性が高く、日米路線は1日8便までに限定。日系航空会社とアメリカ系航空会社とで4便ずつを運航することになっている。
この1日4便の枠に、アメリカ系5社が合計11便を当局(アメリカ運輸省)に申請した。 具体的な行き先は、アメリカン航空がロサンゼルスとニューヨーク(JFK)、コンチネンタル航空がグアムとニューヨーク(ニューアーク)、デルタ航空がロサンゼルスとシアトルとデトロイトとホノルル(ハワイ)、ユナイテッド航空がサンフランシスコ、ハワイアン航空がホノルル(ハワイ)。人気都市や現地での乗り換えが便利な行き先ばかりだ。ハワイアン航空のホノルル便のみ1日2便で、残りは1日1便(デイリー)のスケジュールを想定している。
現在、日本路線を運航していないハワイアン航空だけでなく、残り4社もすべて羽田への就航を希望。少ないパイを奪い合う格好になった。
ANA、JALの羽田発も多彩に
日系の航空会社も羽田-太平洋(アメリカ)路線の就航を計画。ANAは2010年度のANAグループ航空輸送事業計画の中で3月に発着枠が増える成田と羽田を合わせた「首都圏デュアル・ハブ」モデルの構築を明言。これは、分かりやすくいえば、成田と羽田を中心にした路線ネットワークをつくるということ。事業計画では「羽田空港を発着する米国路線の開設も検討中」(同社広報部)だ。
JALもおそらく夏頃までにはアメリカ西海岸線の就航を決めるだろう。行き先はロサンゼルスかサンフランシスコが有力だ。
太平洋路線以外にも、新路線が続々とできそうだ。
すでに発表されているANAの台北(松山空港)線やシンガポール航空のシンガポール線のほか、キャセイパシフィック航空の香港線、ブリティッシュ・エアウェイズのロンドン線など多数の航空会社が新規路線の開設を計画または準備中だ。JALも台北(松山空港)線、ロンドン線、パリ線、シンガポール線、バンコク線などを検討しているのはまず間違いない。
人気の台北行きが1日8往復も登場
では、羽田が本格的に国際化したら、どこへ行けるようになるのだろうか。具体的に見てみよう。
新滑走路の供用開始と同時に羽田空港には新しい国際線ターミナルが完成するが、今でも羽田空港には暫定の国際線ターミナルがあり、以下の便がすでに運航されている。
●ソウル(金浦空港)往復…ANA、JAL、大韓航空、アシアナ航空が各1日2便。
●上海(虹橋空港)往復…ANA、JAL、中国東方航空、上海航空が各1日1便。
●北京往復…ANA、JALが各1日1便、中国国際航空が1日2便。
●香港往復…ANA、JALが各1日1便。
このうち、香港線だけは夜9時前に羽田を出発し、羽田への帰着が午前6時前後の、いわゆる深夜・早朝便。これが、10月31日以降は一部の便を除き昼間の時間帯に変更される。さらに、新しく開設される台北線も昼間の時間帯に運航され、ANA、JAL、チャイナエアラインなどが合計1日8便を運航予定。結果、昼間の時間帯にはソウル、上海、北京、香港、台北の5つの地域へ行けることになる。
これ以外の行き先はすべて午後9時以降、午前8時までの間に発着する予定。前述したアメリカ(ハワイ・グアム含む)やシンガポール路線のほか、羽田空港への就航に合意しているカナダ、イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、タイ、マレーシアへの路線も、この深夜・早朝時間帯(夜9時~11時、午前6時~8時はリレー時間帯)に運航されることになる。10月31日に新滑走路の供用がはじまっても、昼間の時間帯は国内線も増えるため、国際線は行き先によって時間帯が分けられることになっている。
成田にはない"便利な"深夜・早朝便
ところで、深夜・早朝の発着便は不便なのだろうか。
そうではないのが、海外渡航のおもしろいところ。まず、深夜に出発するなら都内で仕事を終えてから羽田に行くという旅のスケジュールが組める。また、早朝に帰国すれば、そのまま仕事に行くことができる。たとえば週末をめいっぱい旅行に当てて月曜早朝に帰国し、そのまま仕事に行ってもいいわけだ。
アメリカン航空が申請した羽田-ロサンゼルス線のスケジュールは、羽田を夜中の0時5分に出るから、都内で残業してから出ても間に合う。また、帰国便はロサンゼルスを夜7時20分に出て羽田に夜10時20分に着くが、現地でギリギリまで過ごし、帰国便は首都圏の終電に間に合う効率的なスケジュールといえる。深夜・早朝に運航できない成田では設定できないこうしたスケジュールが羽田なら組めるのである。
さらに、である。羽田から直行便がない都市に行く時は、成田を使うことになるのかといえば、そうとは限らない。
たとえば、ドバイへ行く場合、成田からならドバイへの直行便が就航するが、キャセイパシフィック航空が羽田-香港線を就航すれば、羽田-香港-ドバイという行き方もある。直行便が便利なのは間違いないが、羽田の方が自宅や会社から圧倒的に近い旅行者や羽田発の方が旅費が安い場合は、成田からの直行便よりも羽田発の乗り継ぎ便を選ぶ価値がある。
乗り継ぎ便の場合、スケジュールによってはかなり不便なこともあるが、香港の他、ソウル、台北、上海、北京と羽田からの便数が充実した近場の都市は、乗り継ぎにも便利な空港だから、この方法はかなり使える手段となるだろう。他にも羽田便の便利さを書けばきりがないほどだから、このへんにしておこう。
今回、アメリカ系航空会社がこぞって羽田への就航を表明し発着枠を取り合う一方で、「実は、成田空港の発着枠はすでに7つほど余っている」(航空業界関係者)。かつて、成田空港は発着枠が一杯で数10社が乗り入れの順番待ちをしていた時代があったが、状況は大きく変わってきたようである。
ただ、もちろん成田はまだまだ圧倒的に国際線の便数が多いわけだから、羽田と併用するのが賢い方法だろう。羽田発が満席だったら行きは成田からにして、帰りは羽田にする、といった具合だ。
前述したANAの事業計画にある羽田と成田の「首都圏デュアル・ハブ」という考え方は、そのまま利用者にも使える考え方である。
羽田就航に合意している国・地域
韓国、中国、香港(以上、既存路線あり)。アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、タイ、マレーシア、シンガポール、台北