AppleのiPhoneにユーザーが望む機能の1つに、"マルチタスク"動作が挙げられる。例えばIMなどのサービスをバックグラウンドで常駐しておけば、いつでも他のユーザーから呼び出しを受けてチャットが可能だからだ。現状でサポートされていないこの機能だが、米AppleInsiderの11日(現地時間)のレポートによれば、今年夏にリリース予想のiPhone OS 4.0でこのマルチタスクがサポートされる見込みだという。
このマルチタスクサポートの話題は、AppleInsiderの記事「Apple's iPhone 4.0 software to deliver multitasking support」で紹介されている。Apple新技術の予測で定評のある人物がAppleInsiderに語ったところによれば、iPhone OSでマルチタスクを実現できるソリューションを開発したという。だが、それがリソース保護やバッテリ持続時間の問題をどうクリアしたのかについては説明していない。
また別のあるユーザーによれば、こうしたマルチタスク管理のためにマルチタスクマネージャを提供する計画だという。この管理ツールは、Mac OS Xに導入されているインタフェース技術を利用しているようだ。
冒頭で紹介したように、マルチタスクにはさまざまなメリットがある。IMばかりでなく、iTunesの代わりにインターネットラジオを常駐させて移動中に聴いたり、Google Latitudeのような位置情報サービスを活用したアプリを動作させたりといった用途だ。だが現状ではサードパーティのアプリやAppleが提供する一部のアプリは同時に1本までの動作しか許容されておらず、ホームボタンを押したり、電話などの呼び出しに応じると、自動的にアプリが終了するようになっている。バックグラウンドでの動作が認められているのは電話やSMS、メール、iTunesなどだけだ。
以上がマルチタスクを導入するメリットだが、一方でデメリットもいくつかある。まず複数のアプリを常駐動作させることで、プロセッサやメモリのリソースが消費され、動作が緩慢になってしまう。アプリの一部は「同時に動かせるのは1本のアプリのみ」という原則を前提に設計されているため、例えばゲームなどのアプリではマルチタスクを許容することによって動作が難しくなってしまう。
もう1つはセキュリティ上の問題だ。1本のアプリのみに動作を限定したことで、スパイウェアやトロイの木馬のようなマルウェアの動作を難しくしている。iPhone OS自体はマルチタスクが可能なはずだが、さまざまな理由でサードパーティのアプリの動作を制限しているとみられる。例えばJailbreakしたiPhoneではマルチタスクを利用できるようになるが、同時にマルウェアや外部からの攻撃に弱いという弱点を持っており、実際にウイルス感染の危険性が指摘されている。
ほかにマルチタスクを導入する際に問題となるのがユーザーインタフェースで、どうやってユーザーに現在動作中のアプリを知らせ、さらにどのようにスムーズに切り替えさせるのかという点が課題となる。ホームボタンを押せばいつでもアプリを終了できるという現在のシンプルさが損なわれるため、もしマルチタスクが導入された場合は初代iPhone登場から3年ぶりの大きなチャレンジとなるだろう。一方で、マルチタスクは動作中のアプリ同士が連携する新しいソリューションが登場する可能性も内包しており、非常に興味深い。