損害保険ジャパンは8日、シンガポールの損害保険会社Tenet Insurance(テネット)の普通株式および優先株式の全てを取得することに関して、テネットの親会社であるHwa Hong Corporationと合意したと発表した。
シンガポールは、完全に自由化された市場の下、国内外の多くの保険会社・再保険会社がしのぎを削る熾烈なマーケット。東南アジア域内の元受・再保険のハブとしての機能を有し、「情報や人材の集積という面でも域内随一を誇っている」(損害保険ジャパン)。
シンガポールの保険市場は、中国や東南アジアの持続的な経済成長、積極的な移民政策による中長期的な人口増、保険普及率の向上、などを背景に順調な拡大をみせている。2000~2008年度における損害保険市場の年平均成長率は9.1%で、他の東南アジア諸国と比べても遜色ない水準を記録している。また当面、年率5%内外のGDP成長が見込まれており、持続的な市場拡大が期待されている。
損害保険ジャパンでは、1989年に損保ジャパン・シンガポールを設立。シンガポールの顧客への保険サービスの提供を行うと同時に、東南アジア周辺国に所在する同社グループ会社の受再保険拠点として、同社を機能させてきた。また、東南アジア域内における現法支援および内部管理・ガバナンス強化の観点から、2008年に、同国に地域統括会社(損保ジャパン・アジアホールディングス)を設立した。
今回株式取得で合意したTenet Insuranceは、収入保険料規模でシンガポール第26位の損害保険会社。50年超の歴史を有するシンガポールでは数少ない独立系資本の現地保険会社で、「ローカル保険会社ならではの機動性を生かし、傷害保険や火災保険などを中心に、特定チャネル・マーケットに特化する戦略で成長を遂げてきた」(損害保険ジャパン)。
損害保険ジャパンは、今回の株式取得価額を9,500万シンガポールドル(約62億円)と見込んでいる。日系の大企業マーケットを中心として事業運営を行っている損保ジャパン・シンガポールと、同国の中堅中小企業・個人リテールマーケットを主体とするテネットとの補完関係により、「両社の強みを生かしつつ、事業インフラの共有やIT投資の充実化などを通じて、保険料設定や再保険交渉力などの面を中心に競争力向上を図り、規模の利益を追求する」としている。