間もなく提供が開始されるApple iPadとその電子書籍販売サービス「iBookstore」において、どのようなコンテンツが提供されるかは多くが興味を持つところだ。paidContent UKのサイトで紹介されているデモの数々は、従来の書籍の概念を覆す非常にインタラクティブなものとなっている。
まずは論より証拠、paidContentの記事「First Look: How Penguin Will Reinvent Books With iPad」を見てみよう。表題の通り、Appleがスペシャルイベントで発表した5つのiBookパートナーのうちの1社である英Penguin Booksが初めて公開した同社コンテンツ群となる。
ご覧のように、タッチ操作や加速度センサを利用してコンテンツとインタラクティブに対話できていることがわかるだろう。これらは子供の教育用だが、アニメーションやビデオ、音声などは従来になかったものだ。このほか「Vampire Academy」という本では単に本を読むだけでなく、オンラインコミュニティを介して他のユーザーとチャットできたり、あるいは旅行ガイドでは実際の地図やGPSと連動させて、さまざまな情報を参照できる。これもiPad型のデバイスならではのものだ。
このほか、paidContentでは英Financial Times (FT)が主催したDigital Media & Broadcasting ConferenceでのPenguin CEOのJohn Makinson氏による講演のビデオ映像も紹介している。
Makinson氏によれば、タブレット型デバイスとPCでの消費者心理は異なっており、iPadはよりユーザーを惹きつける有料配信モデル創造の本当に最初のチャンスであると語っている。Penguinでは電子ブックの売上は来年には書籍全体の10%の売上に到達すると見込んでおり、現状の英国における4%の水準から倍以上になると見込んでいる。また7:3というAppleとの分配比率についても悪くないとしており、既存書籍の書店との取引では先方に50%程度のマージンを残さなければいけない現状を指摘する。
このMakinson氏の話で一番興味深いのはEPUBについての部分だ。EPUBは業界標準の電子ブックフォーマットだが、基本的にはテキスト文字とレイアウト、画像の埋め込みにとどまり、WebブラウザにおけるHTML+JavaScriptの組み合わせのような自由度は少ない。Penguinでは音声、ビデオ、ストリーミングまで、ありとあらゆるコンテンツを盛り込んでいきたいとしており、現状のEPUBでは不足だというのが同氏の意見だ。そこで究極的には、EPUBを使ったiBookstore経由での配信よりも、HTMLやApp Store向けアプリを活用していきたいというのが今後の計画だ。今後ユーザーのニーズを測りつつ調整していくというものの、より高い自由度や課金モデルの構築を目指してオンライン配信とアプリ作成にまい進する新聞社や雑誌社の姿が見えてくる。