SBI証券は2月18日、コモディティ初心者を対象にコモディティの基礎から現状までを解説するセミナー『今年こそ挑戦したいコモディティ投資入門』を開催した。講師を務めたベリーライフコンサルタント代表の斎藤和孝氏は、今度注目したい商品として「コーヒー」などを挙げた。

『今年こそ挑戦したいコモディティ投資入門』講師を務めたベリーライフコンサルタント代表の斎藤和孝氏

コモディティには「一次産品」という共通点

斎藤氏は、商品ファンドなどの投資商品開発や販売戦略の作成に携わった経験を持つファイナンシャルプランナー。セミナーは、東京都新宿区のSBI証券新宿支店で開催され、約40人が参加した。

斎藤氏は、大学卒業後に商品先物会社に入社。在職時にファイナンシャルプランナーの資格を取得し、その後、独立してベリーライフコンサルタントを立ち上げた。斎藤氏はセミナーの冒頭で、「商品(取引)をやったことのない人に、取引をする上で『何が大事なの』ということを伝えたい」と述べ、講演を開始した。

最初に「コモディティとは?」と題し、投資対象としての主な商品について説明。投資対象となる商品は、「一次産品である」という共通点がある。具体的には、「貴金属(金、白金、銀)」「レアメタル(アルミニウム、亜鉛、チタン)」「穀物(大豆、トウモロコシ、小麦)」「エネルギー(原油、ガソリン、灯油、ナフサ、天然ガス)」「ソフト(天然ゴム、コーヒー、オレンジ、砂糖)」などとなっている。

投資対象としての主な商品

このうち、砂糖やガソリンなどは、価格がいくら上がってたからといって現物を購入しても、投資対象の商品として取引されることはない。だが、「金」だけは、現物が投資対象として取引される。金は曲がったとしても価値があり、重さで計って取引される。一方、同じ貴金属でも「銀」は変色しやすいなど、保存が難しいという特徴がある。

商品市場の歴史は古く、1531年、ベルギーのアントワープで世界初の商品取引所が開設され、先渡し取引が行われた。日本では、1730年、大阪堂島で、堂島米会所が開設され、米の先物取引が行われた。だが日本では、「いろんな歴史があって、現在米の先物取引は行われていない」(斎藤氏)。

「人口増加」も商品価格の主な変動要因

商品取引の取引方法には、「先物取引」「差金決済」「証拠金取引」などがある。先物取引は、「一定の将来において売り手と買い手がその商品の価格を事前に取り決めて、約束の期限に受け渡しまたは差金決済によって取引を完了させる取引」。取引対象となる商品は、規格が決まっており、どんなものでも取引できるというわけではない。先物取引では、売り手は少しでも高く売っておきたいし、買い手は少しでも安く買っておきたい。斎藤氏は、「先物会社の新入社員でも、売りから入って買い戻すというのが、イメージできない人は多い」と説明した。

「差金決済」は、「決済期限を待たずに、契約日と決済日の差額を売り手と買い手の間で授受して、取引を終了させること」。「証拠金取引」は、「契約時点では売り手も買い手も、代金の全額を授受せずに、総代金の5~20%程度の証拠金を預託して、売買に参加できる」取引となっている。金1g=1,000円のとき、100万円を投資する場合、現物取引では100万円で現物1kgの投資ができるが、証拠金取引では、10倍のレバレッジ(てこ)をきかせて、100万円の証拠金で10kgの投資が可能。だが斎藤氏は、「含み損が一定以上になると『追い証』が必要になるので、100万円しか投資できない人は(証拠金取引で)10kg買ってはいけない。3kgにとどめるべき」と述べた。

商品価格の主な変動要因としては、(1)需給関係、(2)天候要因、(3)経済要因、(4)政治要因、(5)人口増加、などがある。1の需給関係は、景気がよくなれば需要が増えて価格が上昇し、景気が悪くなれば需要が減少して価格が下がるというもので、全ての商品に関連し、2~5のあらゆるファクターに影響される。商品取引の世界では、「『需給に勝るものなし』という格言がある」(斎藤氏)。

商品価格の主な変動要因

2の天候要因は、農産物の供給を左右するもので、高温、低温、寒波、熱波、台風、洪水などがある。これまでに起きた主な「天候相場」を起こした天候要因としては、1998年の米国の干ばつ(大豆が高騰)、2006年のエルニーニョ発生によるオーストラリアの大干ばつ(穀物が高騰)、2007年のラニーニャ現象によるインドネシアの大洪水などがある。

経済要因・政治要因としては、景気後退や失業率上昇(→消費減少・在庫の増加などで需要減による価格下落)、金利の上昇や下落(→預貯金、株式、債券などの資金流入・流出)など。だが、斎藤氏によれば、経済要因・政治要因である2008年のリーマン・ショックが引き起こした金融危機では、多くの人のお金がバブルで消えたと言われているが、「実は消えたわけではなく、空売りなどで上手に儲けた人もいる。我々が上手にできなかっただけ」と話した。

また、斎藤氏が重視しているのが5の「人口増加」。「インドの人口がとんでもなく伸びており、いずれ中国を抜く。日本もベトナムに抜かれる」と述べた。

主な投資方法は、「現物」「先物・CFD」「ファンド」

では実際に「コモディティ(商品)」に投資するには、どのような方法があるのだろうか。大きく分けて「現物投資」「先物、CFDへの投資」「ファンドへの投資」がある。現物投資は、貴金属、特に金の現物を持つ長期的資産として有効だが、他の商品は現物を持つことは困難。斎藤氏は金の現物投資に関し、「手数料などのコストを考えると、先物会社の店頭で1kgの金の現物を買うのが、最もコストが安くすむ」と述べた。

「コモディティ(商品)」に投資するには、「現物投資」「先物、CFDへの投資」「ファンドへの投資」の3つの方法がある

先物、CFDへの投資に関しては、まずCFDについて説明した。CFDは、「Contract for Difference」の略で「差金決済取引」のこと。証拠金(保証金)を業者に預託し、原資産となる国内外の株価や金価格など、金融商品の価格や指数を参照して、差金決済による通貨の売買を行う取引を指す。証拠金を預け、レバレッジをかけて取引を行うことから、外国為替証拠金取引(FX)も、差金決済取引の一つといえる。

先物、CFDへの投資は、資金効率が良く、高パフォーマンスが狙える。だが、斎藤氏は「リスク管理が難しく、レバレッジによって大きな損失の可能性もある」と指摘した。

ファンドへの投資については、「優秀なファンドを選択することにより、中長期的運用戦略として有効」と説明。優秀なファンドを選ぶためには、中長期(5年~10年)の展望に基づいて、成長が見込めるものを選ぶ。短期的要因(天候、イベントなど)で判断せず、大きな流れをつかむことも必要。また、斎藤氏は、「ファンド自体が分散投資ではあるが、投資対象をさらに分散させるために複数の異なるファンドに分散する」のも有効であると話した。

さらに、「グローバルな投資をすれば、為替リスクはつきもの。円だけを基準に考えず、複数の通貨を資産に組み込むという考え方を持つことも必要」とし、「信頼のおける、自分の目線に合った代理店、アドバイザーを選ぶ」ことも重要と話した。

「コーヒー」「水資源」「カナダ」「インド」が注目

ここまで述べた後、斎藤氏は、今年以降のコモディティ投資の注目点について話した。2009年までの概況としては、2008年秋のリーマン・ショックにより、世界中のマーケットは大きな打撃を受けたが、2009年は回復の動きがみられ、投資リターンを大きく上げるチャンスがあった。

2010年以降、注目したい商品について斎藤氏は、「レアメタル」「コーヒー」「水資源」を挙げた。注目する理由について、レアメタルに関しては、「金をはじめとして産出量が限られ、また原産国が偏っている」ことを挙げた。コーヒーについては、「(需要増に応じ)ベトナムでは10年で7倍の生産増だが、中国・ロシアでの需要がさらに飛躍的に伸び、供給不足の懸念がある」と注目の理由について述べた。水資源については、「工業化、灌漑農業などで2025年には世界人口の半分が水不足に陥る可能性がある」とし、水資源を扱う企業などが投資対象として有望だと話した。

2010年以降、注目したい商品は「レアメタル」「コーヒー」「水資源」

今後注目したい国については、「カナダ」「インド」「VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)」を挙げた。カナダについては、「採掘コストの低いサンドオイルが豊富で、サウジアラビアに次ぐ世界第2位の産油国」であると説明。インドに関しては、「IT以外に製薬産業が勃興し、ジェネリック医薬品で大飛躍する可能性がある」と説明した。VISTAについては、「ほとんどが資源国という共通点がある」とし、ベトナムは金、インドネシアはスズ、石油、南アフリカはダイヤモンド、プラチナ、トルコは石炭、アルゼンチンは鉄、銅、ウランが豊富であると述べた。

最後に斎藤氏は、コモディティ投資に関して心がけておく点として、「とりあえず使わないお金があるからなんとなく投資するというのではなく、(老後のための資産形成など)きちんと目的と出口を決めて投資してほしい。ローリスクでハイリターンは存在しない。(積み立てなど)同じものをずっと買い続けるのもいいのではないか」と述べ、講演を締めくくった。