間もなくリリースされるiPadには、キャリアとの契約が必要ないWi-Fi専用版と、3G通信機能を搭載した両対応版の2種類が用意される。だが米国でのiPhone独占提供キャリアであり、iPadでもデータ通信サービスを提供する米AT&Tによれば、ユーザーの多くはWi-Fi版に集中し、3G版の提供で同社の新規契約増にはあまり結びつかないと予測している。
同件については、英Reutersが2日(米国時間)に米AT&T会長兼CEOでプレジデントのRandall Stephenson氏のコメントとして報じている。その理由として、利用形態から考えてユーザーがWi-Fi版に傾いていること、そしてiPad 3Gの契約形態が米国で一般的な1年縛りや2年縛りのサブスクリプション型ではなく、ユーザーが適時利用量に応じて料金を支払うプリペイド型という点にある。
iPadにおけるAT&Tとの契約オプションには、通信容量250MBを上限にした月額14.99ドルのプランと、通信容量無制限の月額29.99のプランの2種類がある。だがフル契約をつねに結ぶユーザーは少なく、同社の携帯回線契約数を押し上げる要因にはならないというのだ。
これは米国を含む、すべてのiPad 3G提供地域にいえる傾向かもしれない。iPad 3GはSIMフリーの形態で提供され、好きなキャリアと適時契約を結ぶことができる。プリペイド回線契約による収益増はあっても、キャリアにとっての"うまみ"は少ないようだ。一方でStephenson氏は、一部ヘビーユーザーによる帯域占有についても警告しており、わずかな収益増に対してこうしたユーザーがどれだけ出現するかに神経を尖らせている様子もうかがえる。
AT&Tでは以前、ワイヤレス部門CEOのRalph de la Vega氏がAT&Tのデータ通信料金の従量制への移行をほのめかして話題になったことがある。de la Vega氏によれば、同キャリア内のわずか3%のユーザーがネットワーク帯域全体の40%を消費しており、特にニューヨークやサンフランシスコなどの地域で携帯がつながりにくい状況が続いているという。従量制や容量キャップの導入は、こうしたユーザーへの警告でもある。Stephenson氏はこの考えを支持し、「ヘビーユーザーにはライトユーザー以上に支払いを請求する柔軟な料金体系への移行を、業界全体で考えるべきだ」とコメントしている。
米国における現状は、月額料金で15~30ドル程度を支払えばスマートフォンでの無制限データ通信が可能となっている。iPadにおける月額30ドルはこれを基準に設定されたものだが、もし一部のヘビーユーザーが帯域を大量消費するケースが頻発した場合、順次見直される可能性がある。一方でWi-Fi利用が中心とAT&Tが見積もっていることが、帯域への負荷が少ないだという安心材料にもなっている。