West Village Investmentが開発した「順張り職人225」「逆張り職人225」は日経225先物を扱うトレードシステムだ。ふたつのシステムは、それぞれ順張り、逆張りを基本としたシステムで、本来は両者を組みあせてポートフォリオを組んで使うものだ。今回は、それぞれのシステムのロジックをご紹介していこう。

職人シリーズは「6勝4敗を目指す」

「私たちが最優先しているのは、負けないことです。私たちとしてはお客様の資金を失わすわけにはいきません。ドローダウンの期間、負けることは避けられませんが、その金額をいかに小さくするか、徹底的にこだわっています」(West Village Investment 代表取締役 西村貴郁氏)。

「最優先しているのは、負けないこと」と話す、West Village Investment(WVI)代表取締役、西村貴郁氏

さらに「勝率にもこだわっている」(West Village Investment 取締役 システム・アナリストの岩本祐介氏)という。よく1勝9敗でも、小さく負けて大きく勝てばいいといわれ、それは机の上の理論では正しい。「でも、お客様は9敗してしまうと、自分の資金が失われるのではないかという、ものすごい恐怖感に襲われます。これではトレードが続けられません」(西村)。

職人シリーズは6勝4敗を目指しているという。しかし、1勝9敗理論は、9敗で小さく負けて、残りの1勝で大きく取り戻すというものだ。ということは、職人シリーズの1回あたりの利益は小さくなってしまうのだろうか。だとすると、6回小さく勝って、4回大きく負けるということになりかねない。

「競馬でいうと、全レースにかけるのではなく、よく知っている馬にだけ賭ける感じでしょうか。トレード回数を絞って、勝てる可能性が高い局面だけ、エントリーする仕組みになっています」(西村)。例えば、サブプライムローン問題のときは、ほとんどトレードしなかったという。無理をしない。「買い」のシグナルがゼロになり、「売り」だけで大きな利益を出した。「それが大正解でした」(西村)。

一方で、初心者の人にも分かりやすい、トレンドが安定している相場では、職人シリーズは小さく勝つ。「イメージとして、個人投資家の方が勝ちやすい簡単な相場では、『もっと勝てるんじゃないの?』と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、弊社のシステムは継続して勝っていくシステムなんです。逆に、サブプライムローンのような荒れ相場のときは、悠々(ゆうゆう)と大きな利益を上げていきます」(西村)。

「取引対象の価格は見ない」というロジック

では、安定して勝つ職人シリーズはどのようなロジックをもっているのだろうか。テクニカル分析は一切していないという。では、ファンダメンタル指標をもとにしているのだろうか。「ファンダメンタル分析に近い考え方ですが、皆さんが思われるファンダメンタルとは違うと思います。取引対象の価格は見ないというのが特徴です」(西村)。

取引対象の価格というのは、職人シリーズの場合、日経225の取引価格のことだ。取引価格を見ないで、取引をしているというのだろうか。

「世界経済のさまざまな指標をベースに、日経市場がどうなるかを予測している」と、職人シリーズのロジックについて説明するWest Village Investment 取締役 システム・アナリストの岩本祐介氏

「見ないということは、別のものを見ているということです」(西村)。「例えば、株と金利の関係だとか、原油が上がると相場がどうなるとか、そういう市場観がありますよね。そういう世界経済のさまざまな指標をベースに、日経市場がどうなるかを予測しているわけです。そういう意味では、ファンダメンタル的といえばそうですけど、よく言われるファンダメンタル分析とは違います」(岩本)。

さらに、職人シリーズだけに限らず、West Village Investmentのシステムは、シンプルな考え方をとっていて、複雑な計算はあまりしていない、ロジックも分かりやすいという。

「弊社のシステムを何度も購入していただいているお客様ですと、中のロジックを確かめて、あ、今度はこうきたわけねとおっしゃってくださる方もいらっしゃいます。その期待に応えていくのが岩本の仕事です」(西村)。

シンプルな戦略をとるのには理由がある。「極端な言い方をすると、365の戦略を用意して、365日毎日別の戦略を使ったとしたら、果たして勝てるでしょうか。どこかで痛い目を見ることになります。でも、365日同じ一つの戦略で通したら、そしてその戦略が優れたものであったら、365日後、確実に利益が出る。私たちはそう考えています」(西村)。

しかし、そのシンプルな戦略を作り上げることは非常に難しい。West Village Investmentは、例えば、過去7年程度の市場データを用意して開発に入るが、直近1年分のデータはあえて使わず、6年分のデータをもとにロジックを練る。そこでシステムを組み上げ、今度はとっておいた直近1年分のデータを使って検証する。この直近1年分のデータは、ロジックを作る上で参考にはしていないので、ある程度正確なテストができるのだ。

「いわば、仮想の未来を用意しておくわけです」(岩本)。こうすることで、バックテストに適合しすぎて、実践ではまったく勝てないという問題を避けるのだ。その後、短ければ3、4カ月、長ければ1年間のリアルな運用を経て検証した後リリースすることになる。

「一度株式投資に失敗した世代」に人気

そのロジックはどういところからヒントを得ていくのだろうか。

「私たちは理系の人間ではなく、アナリストですから、まずは市場の傾向を知ることから始めます。例えば日経先物市場であれば、一日だけ見ると下落しやすい性格をもっています。だったら、デイトレードのシステムは作りやすいなというように、徐々に詰めていきます」(岩本)。

「順張り職人225」資産曲線(2004年4月~2009年7月末までの価格データよりWest Village Investmentが検証。検証結果は過去のデータであり、将来の実績及び確実な利益を保証するものではない)

その手法でテクニカル分析のような指標は使わずに、さまざまな機関から公表される経済指標をそのまま使っている。「テクニカル分析を始めると、数値いじりに終始してしまう」(岩本)。「私たちは数値を加工しない。経済指標を歪めない。相場の声を忠実に聞く」(西村)。

二人が何度も「シンプル、シンプル」と口にするのは、職人シリーズを使った投資家が、何がどのように投資されているのかが理解でき、勝ったときも理由がよく分かるし、負けたときも理由がはっきりするからだ。理由がはっきりしていれば、負けが続いたとしても「こういう相場状況だから負けた。しかたがない」と、自分の心理をコントロールできるようになる。職人シリーズの顧客層は99%が男性で、40代から60代だという。

「あるお客様に言われたのですが、そのお客様は一度株式投資に失敗した世代だとおっしゃるのです。だから、自分自身で投資を行いたい。客観的に評価できる、自分でも評価できるシステムにかけてみたい。そうおっしゃられました」(西村)。

また、開発手法にもいわゆる一般の製品開発と同じようなビジネス感覚がある。「シンプルで納得がいく」という点に利用者は魅力を感じているようだ。「裁量をやられていて負け続けていて、自分には投資の才能がないと思いこんでいる方に、ぜひ一度試してみていただきたい」(岩本)。

開発をした岩本氏は、前回お伝えしたように、裁量トレードをやってきて成績が上げられず、そこからシステムトレードを勉強し出したという経歴の持ち主だ。裁量トレードの難しさ、リアルな資金を失う恐怖を知っている人が作り上げた「順張り職人225」「逆張り職人225」は、「負けない」トレードシステムなのだ。