--携帯電話はパワフルになっています。Operaは今後、どのような機能強化を考えていますか?
常に、端末側の役割や機能をみています。インプットメソッド、アウトプットメソッド、画面の大きさ、通信速度などをすべて考慮に入れています。通信速度は実にゆっくりとしたペースでしか高速化していません。LTEなどといわれていますが、現実ではいまだに3Gは少数派に過ぎないのです。3Gが提供されている市場でも、EDGEやGPRSが多いのです。このような現実世界の事情にわれわれは対応しなければなりません。
われわれは現在、PC側でブラウザにサーバ機能を取り入れる「Opera Unite」という新機能に取り組んでいます。これにより、Webサーバーのようにファイルを公開したり、クライアント同士が直接やりとりできるようになるものです。
Uniteはさまざまな興味深いチャンスをもたらすもので、モバイルで利用すれば可能性が広がります。たとえばOpera Uniteを利用して、携帯電話で撮影した写真を容易に他の人に公開できます。もちろん、MMSを使えばできますが、Uniteで容易になります。
端末が端末とやりとりする - Operaではこれが今後の方向性だと考えています。「クラウド」がブームですが、すべてがクラウドにいくわけではないし、クラウドが将来、すべての問題を解決するとも思っていません。
家庭の中を考えてみると、TV、ステレオ、複数台の携帯電話にPCとさまざまなものが接続されますが、これらをすべてクラウドにつなぐことは意味をなしません。Uniteを使って居間にあるTVから寝室にあるTVや携帯電話にストリーミングできます。
コラボレーションもあります。たとえば機密情報扱いの表計算シートで3人がコラボレーションするような場合、わたしならクラウドを利用したいと思いません。
Uniteアプリケーションは基本的にウィジェットで、Webページと同じようにHTMLなどで容易に作成できます。写真共有、ストリーミング、コラボレーションのほか、メモ帳やゲームなどが開発されています、
Uniteは現在PC向けの機能ですが、次はTVを考えており、将来的にモバイルにも拡大したいと思っています。モバイルでは消費電力や帯域など課題がありますが、解決できると思います。
--Symbian、iPhone、AndroidとモバイルOSが多数あります。対応は大変な作業ですか? 今後統合されると思いますか?
大変です(笑)。
統合が必要とは思いませんが、目的を明確にする必要はあるでしょう。モバイルでのプラットフォームの乱立を考える場合、PCの歴史を振り返る必要があります。以前、MacやLinuxを選ぶと、Windowsと同じアプリケーションが動かないという問題がありました。ですが、現在これは大きな問題ではありません - ユーザーはWebのアプリケーションを利用するようになったからです。
自社のプラットフォームを持つということは魅力的なことです。Microsoftがよく知っています(笑)。だから各ベンダがプラットフォームを持とうとしているのでしょうが、これは開発者にもエンドユーザーにもメリットをもたらしません。実際、スマートフォン向けといわれるプラットフォームはすべての携帯電話の一部 - 20%程度しかカバーしていないのです。
さらには、携帯電話だけではなく、TVも独自OSを持つようになるとどうなるか。これは持続性のあるモデルとはいえません。
そこで必要になるのが、アプリケーションがクロスプラットフォームで動く共通のレイヤです。そして、われわれにはすでに、Webという独立したプラットフォームがあります。Webとウィジェットならプラットフォームで動きます。
--OMTPが「BONDI」をプッシュしています。
BONDIはOMTPの標準化作業で、Web標準の上に構築する取り組みです。理想はW3Cで標準化されることですが、W3Cは必ずしも、ストレートに正しい方向に進むとは限りません。
OperaはBONDIチームを支援しており、BONDIは最終的にW3C標準が必要であることを理解しています。方向性としては正しい方向に向かっていると思います。
--年初めにCEO職を退きました。理由をお聞かせいただけますか?
投資家と話をしたり管理作業などに割く時間を減らし、製品開発、マーケティングにかかわり、コミュニティとの作業を通じてオープンなWebを実現する時間を増やしたいと考えたからです。やっていることはこれまでとは変わりませんが、比率が変わると思います。
新CEOのLars(Lars Boilesen氏)は、古くからOperaにいた人物です。彼を信頼しており、彼の成功とOperaの成功を支援したいと思っています。
Operaの目標は、インターネットをまだ使ったことがない人がインターネットを利用するのを支援することです。インターネットブラウジングに選択肢を与えることです。願わくば、貧困などの問題解決にわずかでも貢献できると信じています。現在、インターネットにアクセスできるのは全人口の25%にとどまります。情報、サービス、コマースへのアクセスは重要で、Web技術を利用してこれを提供できます。Operaはその入り口となります。