2月25日に公開されたAppleが申請中の新しい特許は、タッチスクリーンを搭載したMac新製品登場の可能性のほか、公共のKIOSK端末やPOS端末事業への進出など、同社の新しいビジネスへの布石を予感させるものとなっている。
この特許は「SHAPE DETECTING INPUT DEVICE」と呼ばれるもので、米特許商標庁(USPTO)への登録日は2009年10月30日となっている。内容についてはPatently Appleの「You Might Need a Secret Decoder Ring to Log on to Future Macs」という記事が詳しい。
平たくいえば、これはタッチスクリーンを利用した電子印鑑システムだ。個々にユニークな形状を備える印鑑型の認証デバイスをタッチスクリーンに押し当てることで、システムはその形状を認識、内部で保持している形状データと照合することで誰がアクセスしているのかを識別し、ログイン動作あるいは個々のユーザーに応じたアクションを実施するという仕掛けだ。ログインパスワードやスマートカード、指紋などのバイオメトリクス認証を代替するものだと考えればいいだろう。
では、なぜ印鑑型認証デバイスなのかといえば、セキュリティとコストのバランスが理由となる。一般にログイン動作を必要とするシステムではIDとパスワードといった文字フレーズが利用されるが、これらは盗むのが簡単なうえ、実際に誰かに盗まれていた場合にそれを追跡する手段がなく、その意味で危険度が高い。またスマートカードのような物理デバイスの場合、紛失した時点で盗難が発覚するため、すぐに対策が行える。また複製が非常に困難だが、一方でカード1枚あたりのコストが高く、不特定多数のユーザーを対象にした大量配布には向いていない。そこで作成コストが安く、追跡性の比較的高い印鑑型認証デバイスの登場となる。
Appleがこの特許申請書でサンプルとして挙げているが、駅などにあるKIOSK情報端末、銀行ATM、POS端末、産業機械、ゲームマシン、アーケードゲーム、自動販売機、空港のチケット端末、レストラン予約端末、カスタマーサービス、図書館の端末、学習端末といったものだ。これらに共通するのは特定の利用者に縛られないことであり、1つの端末を何人もの人間が入れ替わり立ち替わり利用するものだ。学校などの教育現場にiMacが導入されていた場合、これもまた1端末を複数人で兼用する形になるため、こうした認証方法が有効だろう。Appleが実際に産業機械や組み込み市場への進出を狙っているかはわからないが、今後タッチパネルの用途をさらに拡大させるつもりであれば、KIOSKや情報端末といったアイデアは悪くないだろう。実際、筆者もカスタマイズでタッチスクリーン対応したiMacによる情報端末サービスを行っている事例を見たことがある。
またPatently Appleは、以前にAppleが「iTunes Kiosk」と呼ばれる端末システムの特許を申請していたことを報じている。これは"Media Distribution Kiosk"と呼ばれ、手持ちのPCでアクセスしているiTunes Storeに、例えばショッピングモールなどに設置された専用端末からアクセスして、しかも手持ちのiPodなどに楽曲のダウンロードが可能になるというものだ。もしこれが実現するのであれば、前述の電子印鑑認証と合わせて非常に興味深い。