FXオンラインジャパン ストラテジストの森宗一郎です。若干明るさが見えたか? と思えた米経済も、先週発表された経済指標のうち、雇用・消費関連は市場の予想を下回る結果となり、企業マインドのみ堅調というアンバランス。

その上、ギリシャ発のソブリンリスクの話題は不透明感を増すどころか、ギリシャ国内でゼネストが起こり財務健全化への道のりはかなり遠くなった印象で、株式市場は上値が重たく、為替市場では不美人投票で円が好感されていますが、はたして今週はその地合いが継続するかどうか。

GDP JPYチャート

今週の話題としては、やはり米経済指標の内容とユーロ圏の話題、と先週に引き続いての展開。

まずは、米経済指標においては金曜日の雇用統計に向けて、先行指数でもある月曜日のISM指数を皮切りに、ADP雇用指数・新規失業保険申請件数、地区連銀経済報告など雇用・消費動向をさらに見極めるイベントがあることから、市場のやや期待薄感とでもいうのでしょうか、リスク回避的な地合いを転換するだけのポジティブな内容になるかどうかがポイント。

FRBとしても雇用情勢の改善が見られないのであれば、異常低金利水準の方向転換はなかなか難しくなってきます。そうなれば、短期金利の動向ではUSDへ影響が出てくるでしょうし、株式市場においては資金面でのサポートはポジティブながらも、あくまで企業マインド側なので、消費者とのギャップの点を考慮すれば重しとなる可能性が出てきます。

そして、市場の最大関心事であるユーロ圏の話題。 ギリシャ支援という点では、様々な憶測が出てきそうですが、安易な救済という話題にはどちらかというと懐疑的です。

現状においてはギリシャだけが問題ではなく、長く欧州および周辺の不動産市場の低迷や景気低迷からじわじわと南欧諸国に波及してきており、特に市場の注目点はポルトガルからスペインにややシフトするかもしれません。 ECB / EU双方においては各国が規律を明確に示したうえで、国民に対しても負担をある程度促す方針を示さなくてはならない苦渋の決断をしなくてはなりません。話題になっている国の国民としては反対の意見が多くなることはわかると思いますが、ギリシャの例で見れば、定年が62歳から63歳になることへの不満があるようです。しかし、ドイツでは去年定年が67歳に引き上げられており、ドイツ国民にとってはなぜ早めのリタイアメントを行っている国を支援しなくてはならないのか? と憤慨する意見も聞かれますし、さらには就労時間の点でも不満があるとか。

一般の企業に置き換えれば、長時間労働をある程度受け入れている従業員にとって、わがままな短期時間労働者(パートではなく)への援助をするべきなのか? といったところでしょうか。

ましてや、ドイツ・フランス双方でも、景気低迷・金融機関支援にともなった負担が重しとなっており、追加で他国への援助を行う余裕があった場合にははたして両国民が納得できるかどうか。

さらには、欧州側においてはリスク回避的な話題がまだまだくすぶっています。 ターゲットとなっている国の国民にとっては厳しい環境にはなっていますが、政府・金融機関への風当たりはそう簡単には収まらない状態。

その上、先週金曜日に総選挙の公示が? という話題がイギリスで持ち上がりましたが、女王陛下との合意がなければ公示できないので、王室との話題が出てくるとロンドン市場にとっては重しとなりそうです。 総選挙だから変化ということからの買いも連想するかもしれませんが、現状の各党の支持率を見れば、どちらも過半数を取れない状態ことから政局不透明状態になりやすく、それぞれの主張も最近やっと違いが出てきた程度で、あえてポジティブにはなりにくい状態ではロング志向はそう簡単ではないと思います。

ただ、市場のユーロに対するポジションは短期的にかなりショートに傾いており(IMM通貨先物ポジションにおいてはドルロングポジションが2008年以来高水準)、先週後半においてはアジア筋などの買いが段階的にはいっており、米経済指標の内容が悪ければ、通貨ではあっさりとユーロは対ドルで反発しやすいかもしれません。

HS株価指数チャート

一方、他の新興国や中国の話題では、引き締め姿勢に転じやすい国内事情があるものの、投資家のリスク回避的な志向が今週のイベントで強まれば、少なからず影響が出てくると思います。中国においては金曜日から全人代が開かれることから、市場において中国の規制・引き締めスタンスがどの程度になるかの話題が出てきそうです。沿岸地域と内陸部の格差があるうえに、沿岸地域においても都市部と周辺農村部とで格差が拡大しているという懸念があり、はたして全人代でさらにこの点を打ち出せるかどうか。ただ、ある紙面では税制優遇は富裕層向け? という話題もあったようで、はたしてバブル鎮静化なるかどうか……。市場ではもしや人民元の話題も出てくるかもしれないという意見も出ています。

いずれにせよ、リスク回避志向が優勢な中で、市場ポジションはやや傾いているという何ともやりにくい地合いですが、かなりのポジティブな話題が出てこない限りは株式市場・為替市場ではいずれも上値では売りが待ち構えている環境なのでしょうか。

今週の主なイベント

3月1日(月)
(豪)第4・四半期経常収支
(ユーロ圏)2月製造業PMI -改定値 -
(ユーロ圏)1月失業率
(米)1月個人所得・消費支出
(米)ラッカー・リッチモンド地区連銀総裁 講演
(米)1月建設支出
(米)2月ISM製造業景気指数
3月2日(火)
(日)1月有効求人倍率
(日)1月完全失業率
(日)1月家計調査
(豪)1月小売売上高
(豪)RBA理事会(金利発表)
(ユーロ圏)1月生産者物価指数
(加)BOC金利発表
(米)コチャラコタ・ミネアポリス地区連銀総裁 講演
3月3日(水)
(豪)第4・四半期豪GDP
(ユーロ圏)2月サービス部門PMI -改定値-
(ユーロ圏)1月小売売上高
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数
(米)2月チャレンジャー企業人員削減数
(米)2月ADP雇用報告
(米)ローゼングレン・ボストン地区連銀総裁 講演
(米)2月ISM非製造業景気指数
(米)ロックハート・アトランタ地区連銀総裁 講演
(米)地区連銀経済報告
(英)BOE金融政策委員会(4日まで)
3月4日(木)
(豪)1月貿易収支
(ユーロ圏)第4・四半期GDP -改定値-
(英)BOE金融政策委員会(政策金利発表)
(ユーロ圏)ECB理事会(政策金利発表)
(ユーロ圏)トリシェECB総裁 記者会見
(米)新規失業保険申請件数
(米)第4・四半期労働生産性・単位労働コスト -改定値-
(米)1月製造業新規受注
(米)1月住宅販売保留指数
(米)ブラード・セントルイス地区連銀総裁 講演
(米)エバンズ・シカゴ地区連銀総裁 講演
3月5日(金)
(英)2月産者物価指数
(ユーロ圏)1月独鉱工業受注
(OECD)1月G7景気先行指数
(米)2月雇用統計
(米)1月消費者信用残高
(中)中国全国人民代表大会(全人代)開幕