全3部作総製作費60億円という壮大なスケールで、世界の終末と、それに立ち向かう人々の姿が描かれた本格科学冒険映画『20世紀少年』。その完結編である『20世紀少年 <最終章> ぼくらの旗』のDVD&Blu-rayが2月24日に発売される。この大作を完成させた堤幸彦監督に話を訊いた。

3部作ながら、3つの違う味わいを目指した

堤幸彦
1955年生まれ。愛知県出身。B型。『バカヤロー! 私、怒ってます』(1988年)で映画初監督。『金田一少年の事件簿』(1995年)、『トリック』シリーズ(2000年、2002年、2003年)、『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)など人気テレビドラマを多数手掛ける。映画監督作品に『溺れる魚』(2001年)、『トリック 劇場版』(2002年)、『明日の記憶』(2006年)、『包帯クラブ』(2007年)、『自虐の詩』(2007年)など多数。総制作費60億円の『20世紀少年』3部作を2009年に完成させる。次回作は『BECK』(2010年9月4日公開予定)、『劇場版トリック 霊能力者バトルロイヤル』(2010年5月8日公開)

――『20世紀少年』の撮影前に堤監督は「原作マンガのまま映像化する」と発言されていましたが、1章は本当に原作マンガが映画の絵コンテかと思うほど、そのままの作品でした。2章、最終章では、また違うテイストに仕上がっていますね。

堤幸彦監督(以下、堤)「3部作で3つの味わいが欲しかったんです。原作に忠実な1章、2章で観客を煙に撒くスピード感というかグルーヴ、誰もが膝を打つような結末の最終章、という構成にしたかったんです。こういう大きな3つの括りは、企画当初から考えていました。自分の中では、最後までブレないで完成させられたと思います」

――最終章では、2017年の未来が舞台です。1990年代末に原作マンガですでに描かれていた未来を、2008年に描くという部分に関して、強く意識した部分はありますか?

「『ブレードランナー』も『未来世紀ブラジル』も、映画における近未来表現のイメージは、ほぼ固定化しているような気がするんです。未来表現というのは、ある種の共通語じゃないかと……。そんな中で、あえて個性というかこの映画独自のテイストといえば飛行船ですね。映画独自のテイストとして、ともだちの政府っていうのはエコな政府だという部分を表現したかったんです。ともだちが世界を支配した後に、日本の街並みを昭和の街並みに戻すという行為の目的を考えると、経済発展の振り子を40年くらい戻すことなんじゃないかと思いました。だから、ともだちのプロパガンダにしても前近代的なイメージで行こうと決めていました」

20世紀少年 ぼくらの旗

ともだち暦3年(西暦2017年)。世界は世界大統領となった「ともだち」の独裁政治により支配されている。東京は高壁で分断され、都民の生活は厳しく制限されていた。「宇宙人によって人類は滅ぼされる」という最後の予言を実現しようとするともだちに、生き残ったかつての仲間たちは、それぞれの立場から最後の戦いを挑むのだが……

――一度滅びた後の世界を描くという部分で、描写の難しさは感じましたか?

「僕は都会的な地方で育ったので、ともだちの作り出したあの懐かしい時代描写はリアルなものに感じられました。だから、難しさや違和感はなかったですね」

――一あの、昭和の風景のセットは壮大でしたね。

「じつはあれはロケなんですよ。1作目の空港爆破のシーンの撮影中のロケハンで、愛知県常滑市という場所を見つけたんです。古い昭和のムードが残っている町で、この町を見たときに、『これがケンヂの町なんじゃないか』と思って、最終章の絵が自分の中で出来上がったんです。僕は、場所的な答えが見つかると、それで自分の中で結論が見つかるタイプなのです。場所が決まることで、映像が出来ていくんです」

――『包帯クラブ』もそうですが、監督は映像になる場所にこだわりますね。

「そうですね。最近は、ロケハン、撮影場所探しにハマリ過ぎて、通信教育ですが大学の地理学科に入ってしまったんです(笑)。今、実は大学の2年生んですよ。忙しくて留年決定ですが(笑)」

――堤監督は大学生でもあるんですね!

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