東京証券取引所グループは22日、同社代表執行役社長の斉藤惇氏による定例の記者会見を行った。金融庁が公表した、上場企業などに1億円以上の役員報酬の個別開示を義務付けるなどとした内閣府令(案)について、「役員報酬を開示する目的は何なんだということが大事」などと述べた。
金融庁が2月12日に公表したのは、「企業内容等の開示に関する内閣府令(案)」。「上場会社等のコーポレート・ガバナンスに関する開示の充実について(企業内容開示府令)」とし、有価証券報告書などの「コーポレート・ガバナンスの状況」などにおいて、役員報酬に関し、以下の事項などの開示を義務付けるとしている。
役員(報酬などの額が1億円以上である者に限ることができる)ごとの報酬などの種類別(金銭報酬・ストックオプション・賞与・退職慰労金など)の額
役員の役職ごとの報酬などの種類別の額
報酬等の額またはその算定方法に係る決定方針の内容及び決定方法
これに対し斉藤社長は、「情報開示という意図、趣旨には賛成だが、役員報酬を開示する目的は何なんだということが非常に大事」とし、「はっきり説明しないと、社会的なコンフリクト(摩擦)を醸成する」と意見を表明。「単に金額だけ見て、社会的な批判、あるいは後ろ向きなことが起こったりする、格差的な感覚が起こったりするのは、好ましくない」と否定的な見解を示した。
また諸外国でも、役員報酬を開示する方法はいろいろあるとした上で、「日本における新入社員とトップの年俸格差は30倍ぐらいで、アメリカが300倍、世界的には200~250倍」と説明。「日本という国は世界から見ると非常にフラットな社会で、そういう意味で、個別に、しかも1億という数字の意味をしっかり社会に説明するべき」と述べた。
さらに、「個人情報の過剰なまでの保護の一方で、個別に財産状況を出せというのは矛盾している。絶対反対ではないが、相当慎重にやらなければいけない」と話し、懸念を表明した。
また、斉藤社長は、同日の記者会見で、CO2の排出量取引市場に関連し、将来的にその運営を行うことになる準備会社を、2010年4月1日に設立することを認可したと発表した。出資金は1,000万円で、東京工業品取引所(TOCOM)が500万円、東証は500万円を拠出。斉藤社長は、「一種のペーパーカンパニーで、専門のスタッフを置くことは今の段階では考えていない」と述べた。
また、同市場開設の時期についても、「いつになるか全く分からない」とした上で、「政府の検討状況や世界の状況を見ながら、状況がマッチすればスタートすることになる」と話していた。