FXオンラインジャパン ストラテジストの森宗一郎です。今週は、先週金曜日のFRBの公定歩合の引き上げに関しては既定路線という見方にはなっているものの、今後の米経済指標の内容次第では、FF金利の正常化+過剰流動性供給の終了などで出口戦略の話題・議論は以前よりは活発になることでしょう。

EURUSDチャート

もちろん、雇用情勢等を考慮すればFRBが急ぐことはないと思いますが、24、25日のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言には注目しておきましょう。出口戦略に関するコメントは出てくると思いますが、市場では実際のFF金利引き上げの時期にはまだ慎重とみています。

また、その他には22日にイエレン・サンフランシスコ地区連銀総裁、23日にブラード・セントルイス地区連銀総裁、そして、26日にはコチャラコタ・ミネアポリス地区連銀総裁、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁、エバンズ・シカゴ地区連銀総裁、タルーロFRB理事の講演予定があり、3月のFOMCに向けてどのような議論の温度差が出てくるのかで、市場も一喜一憂するかもしれません。

その上、個人消費動向・地方経済を占う意味で、12月S&Pケース・シラー住宅価格指数、1月米新築1戸建て住宅販売、米中古住宅販売と住宅関連指標が続くほか、1月米耐久財受注などの経済指標の中身を見極めたいという慎重な意見も出ています。

前回のFOMCにおいても据置きに反対した理事もおり、先週こそCPIのコア指数が低下したものの今後の米経済指標において、労働市場に対してポジティブに影響するかどうかで米金利に対する思惑が出てきそうです。

一方、市場の最大関心事でもあるソブリンリスクに関連して、ギリシャ問題は依然として注目されよう。EUなどからの支援についてはギリシャも当てにしていると思われるものの、EUはそう簡単に支援をすることには慎重。ユーロのコア国であるドイツ国内の反発はかなり激しく、ギリシャ側の誠意ある安定策が示されない限り、安易な金融支援はできない。なぜなら、安易に行った場合には、モラルハザードのリスクがあるうえに、他のターゲットとされている国においても問題が発覚した場合には、支援できなくなる可能性がある。ましてや、コア国であるフランス・ドイツでさえも、それほど余裕があるわけでもない。

単にコメント上で示されただけで、実際の行動はギリシャ側がまず示すべきという雰囲気は継続されています。近いうちにギリシャが国債を大量発行するという話題が出ていますが、はたして市場で消化されるかどうかという点も話題になりそうです。

その上、最近では財政赤字に対しての海外依存度という点もクローズアップされており、STUPIDという枠組みの国に対しても警戒感が高まっています。アメリカを含め各国は出口戦略の構想をそろそろ立てるべき時期にはなっているものの、国民に対する負担増になる政策をどのように打ち出せるのかという点も今後話題になりそうです。

よって、上記に点を考慮すれば、IMM通貨先物におけるユーロショートは過去最大になっている点からの買い戻しの展開が警戒されるも、ユーロの戻りは限定的と市場では見ている模様。今週のアメリカ側のイベントでUSDの追い風となるかどうかに注目しておきましょう。

こういった中、ドル円は通貨間の不美人投票地合いの中、USDの地合いとリスク志向のはざまで右往左往する展開は継続されそうで、USDの他の通貨に対する温度差で、ユーロ円などのクロス円の振幅幅が増幅されるかもしれません。

ただ、気になるのが市場のソブリンリスクから財務体質にもややシフトしている点。日本の政局に対する不透明感に加え、政府・地方双方の債券発行余力の低下もあることから、格付け関連の話題には注意しておいた方がよく、その場合には円売り圧力が高まるかもしれません。今の子供たちに多額の負担を強いることはしてほしくないですが、小手先の政策・参議院に向けた姿勢だけに翻弄されているようですと、海外投資家からそっぽ向けられそうです。

HS指数チャート

そして、海外からの投資意欲が強い中国本土は春節開けで取引が再開されます。HS指数をみる限りでは、FRBの影響は少ないものの、旧正月直前の中国人民銀行の預金準備率が引き上げられ、金融機関に対する当局の姿勢が強まるのかどうかという点に市場は注目しています。仮に引き締め姿勢が示された場合には、資源需要後退という懸念から資源関連銘柄にも圧力が高まるかもしれませんし、上記のソブリンリスク関連の話題で、ポジション圧縮という地合いが強まれば、少なからず好調なアジア市場の雄でもある中国市場にも影響が出てくる可能性があります。

欧州においてはギリシャ問題による温度差、金融機関の南欧諸国に対する融資額に対する懸念(ある調査ではドイツ国内だけでも65兆円以上!?)、さらにはドバイ関連、財務規律の問題、政局の不透明性など、不安定要素があり、各株式市場の温度差が出てくるかもしれません。銘柄においては融資に絡んで、金融関連銘柄のボラティリティーが高まりやすいかもしれません。

よって、資源関連・新興国への投資の話題が多く出ているものの、中長期視点よりは、まずは取引主体のスタンスのほうが無難かもしれません。上記の懸念材料を払しょくするポジティブな経済指標・話題の内容が出てこない限り、通貨・株式における不美人投票の地合いは継続されそうです。

今週の主なイベント

2月22日(月)
(米)イエレン・サンフランシスコ地区連銀総裁 講演
2月23日(火)
(日)日銀金融政策決定会合議事要旨
(欧)1月仏消費支出
(欧)1月仏消費者物価指数
(欧)2月独IFO業況指数
(米)12月S&Pケース・シラー住宅価格指数
(米)2月・消費者信頼感指数
(米)ブラード・セントルイス地区連銀総裁 講演
(米)下院エネルギー・商業委員会、トヨタ車の不具合問題について公聴会開催
2月24日(水)
(日)1月貿易統計
(日)1月企業向けサービス価格指数
(日)山口日銀副総裁 会見
(欧)第4・四半期独GDPの詳細
(欧)3月独消費者信頼感指数
(欧)12月ユーロ圏鉱工業受注
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数
(米)1月新築1戸建て住宅販売
(米)米下院監視・政府改革委 トヨタ車の不具合問題について公聴会
(米)財務省5年債入札
(米)バーナンキFRB議長、議会証言
2月25日(木)
(欧)1月仏生産者物価指数
(欧)2月独失業率
(欧)1月ユーロ圏M3
(欧)2月ユーロ圏景況感・業況感指数
(米)1月耐久財受注
(米)新規失業保険申請件数
(米)ピアナルト・クリーブランド地区連銀総裁 講演
(米)12月住宅価格指数
(米)財務省7年債入札
(米)ブラード・セントルイス地区連銀総裁 講演
(米)1月住宅着工許可件数改定値
(米)バーナンキ米FRB議長、議会証言
2月26日(金)
(日)1月全国コア消費者物価指数
(日)2月東京都区部コアCPI
(日)1月鉱工業生産速報
(日)1月商業販売統計
(英)第4・四半期GDP改定値
1月ユーロ圏消費者物価指数改定値
(米)第4・四半期GDP -改定値-
(米)2月シカゴ地区購買部協会景気指数
(米)2月ミシガン大消費者信頼感指数 -確報値-
(米)1月中古住宅販売
(欧)2月独消費者物価指数 -速報値-
(米)コチャラコタ・ミネアポリス地区連銀総裁、
(米)ダドリー・ニューヨーク連銀総裁、
(米)エバンズ・シカゴ地区連銀総裁、
(米)タルーロFRB理事 講演