米Los Angeles Timesは15日(現地時間)、米Appleが3月に発売を予定しているiPadにおいて、それに付随する電子書籍販売サービスの「iBookstore」にDRM (Digital Rights Management)によるプロテクトを掛ける意向だと報じている。同社は昨年1月のMacworldでDRMフリーのiTunes Plusの範囲を拡大し、実質的にほとんどの音楽コンテンツが"FairPlay"によるDRMの対象外となっている。今回の新サービス導入において、再びFairPlayが大きく躍動することになる。
FairPlayはAppleが採用するDRM技術で、MacやiPodなど、何台までのマシンにコンテンツがコピーされたかを管理し、無制限の頒布を防止する。米Apple CEOのSteve Jobs氏は「FairPlayの存在が自由競争を阻害している」とする批判について「DRMは存在しないほうが望ましい」と回答しており、DRMがライセンス契約を行っているレコード会社の要請であるものとの見解を示している。
だが、こうしたコメントがレコード会社のプレッシャーへのなったほか、Apple自身も従来までの1曲99セントという固定料金制を改め、価格オプションの選択権をレコード会社に委ねるなど柔軟な姿勢を見せたこともあり、iTunes Plusの楽曲が1,000万曲オーバーとなるなど、一気に楽曲ダウンロードサービスのDRMフリー化の勢いが加速した経緯がある(「米Apple、DRMフリーのiTunes Plus提供を800万曲に拡大 - 新料金体系を導入へ」)。ただし、依然としてiTunes Storeの残りのコンテンツの多くにはFairPlayが生きており、今回のiBookstoreでも多くの予想通りFairPlayが活躍することとなりそうだ。
LA Timesによれば、出版業界の複数の情報源からAppleがFairPlayを導入する意向であることが伝わっているという。だが技術出版で著名なO'Reilly MediaなどはFairPlay導入に否定的であり、これが逆に売上に悪影響を及ぼすと主張しているという。一方で他の出版社の多くはDRM導入に歓迎の意を示すとみられており、FairPlayのほか、Adobe SystemsのContent Server 4などのDRMサーバによるプロテクト技術導入を検討しているといわれる。
ここで興味深いのは、O'ReillyはAppleが当初発表したiBookstoreにおける5つのパートナーの中には含まれていないが、すでにパートナーの1社としてAppleとの交渉が漏れ伝わっている点だ。「【レポート】ジョブズ氏の魔法を上回るiPad「手にとって体験してほしい」- Apple発表会」にもあるように、確定済みの5つのパートナーのみをスペシャルイベントで紹介して、残りは水面下での交渉が続いていたと考えるのが正しいようだ。実際、McGraw-Hillなど複数の教育出版社がiPad向けコンテンツの拡充を計画しており、先に挙げられた5つの企業以上のパートナー候補が潜んでいる可能性がある。