米NVIDIAは2月9日(現地時間)、ノートPC向けのGPU切り替え技術「NVIDIA Optimus Technology」を発表した。これにより、チップセット内蔵型GPUとディスクリートGPUをアプリケーションによって適時使い分け、バッテリ稼働時間とパフォーマンスの両立が可能になる。
NVIDIAは以前にも「Switchable Graphics」と呼ばれるOptimusと同種の内蔵型(IGP)とディスクリート(外部チップ)なGPUの切り替え技術を公開していたが、マニュアル操作での切り替えが必要だったほか、関連するアプリケーションをすべていったん終了させ、さらに切り替えまでに時間を要するといった手間が必要だった。米Endpoint Technology AssociatesプレジデントのRoger Kay氏によれば「すばらしいアイデアだが、実際に切り替えを利用するユーザーは1%未満」と煩雑さを指摘しており、これをソフトウェアである程度自動化したうえで、より利用のハードルを下げるべく登場したのがOptimusだ。
Optimusでの大きなポイントはハードウェア構成の変更だ。Switchable Graphicsではグラフィックソースを切り替えるための専用チップとして「Mux」と呼ばれるハードウェアを用いており、これでディスプレイに接続されるGPUがIGPとディスクリートのいずれかであるかを明示していた。手順が煩雑であるうえに、Muxチップを搭載するぶん実装コストが高くなる欠点があった。これをOptimusではディスクリートGPU (dGPU)をIGPに直結する形に変更し、IGPを通してディスプレイ出力するようになった。そのためMuxは必要なくなり、より自然な形でソフトウェアによる切り替えが可能になった。NVIDIAでは「ちょうどハイブリッド車で電力とガソリンを自然でスムーズに切り替えるイメージに近い」と仕組みを説明する。OptiumsではアプリケーションによってIGPとdGPUの切り替えを行うが、この判断はSLIに酷似したプロファイル管理によって実現される。
「NVIDIA Optimus Technology」の発表にあわせ、同社General Manager for PC GPU Business UnitのDrew Henry氏が来日し、プレス向けに技術概要を解説した。同氏によれば、将来の可能性として、ニーズ次第ではデスクトップGPUに同技術を導入するプランも考えられるとのこと |
なお、Optimusの実装では「Copy Engine」という仕組みを使って、ディスクリートGPU側のメモリからIGP側のメインメモリへのDMAによるメモリ転送を行っている。このメモリコピーを使ってIGP経由でのディスプレイ出力を実現しているためだ。ただし、Copy Engineのハードウェアを実装していないdGPUではメモリコピーの間にCPUとGPUがともにストールする現象が発生してしまうため、Optimusを利用できるのはCopy Engine機能を搭載したNVIDIA 200M / 300M以降の世代のGPUということになる。
Asusでは、すでにUL50Vf、N61Jv、N71Jv、N82Jv、U30Jcという5つの製品でOptiumsに対応したノートPCをリリースしており、今後他のベンダーでも順次対応する見込み。