米Apple CEOのSteve Jobs氏が2月初旬にニューヨーク市内に現れ、米New York Timesや米Wall Street Journalといった大手新聞社ら幹部らと秘密の会合を繰り広げていることが話題になっている。新型タブレット製品「iPad」を発表したばかりのAppleだが、これらメディア関係者との会合で、何を実現しようとしているのか。

(左から)Apple Store Fifth Avenue(New York)、Wall Street Journal (News Corp.)、New York Times。Jobs氏のニューヨークでの秘密の会合の成果は?

今回のJobs氏によるメディア訪問を報じているのはGawker Mediaの4日(米国時間)の記事だ。Gawkerによれば、Jobs氏は過去数日にわたってニューヨークに滞在しており、両メディアのニューヨーク市内のオフィスを訪問していたという。特にWSJ編集部がある6番街の米News Corp.本社には、同氏を一目見ようと大量のスタッフがミーティングルームに押し掛ける事態になったという。

1月27日の発表会で「iPad」を発表したAppleだが、それに付随するものとして電子ブック販売サービス「iBookstore」も公開した。だがiBookstoreが提携相手として選んだのは、書籍を中心とした大手出版社らであり、新聞社や雑誌出版社らの名前はなかった。iPadとこれらコンテンツとの関係や将来性に関して、旧来メディアの関係者らは幾分かの失望感を抱いており、今後どのように両者が歩み寄っていくのかが課題になるとみられている。こうした中でのJobs氏のニューヨークと新聞社オフィス訪問は、何かが水面下で進んでいる予感を臭わせる。

特に、iPad発表会で同タブレット専用のリーダーアプリを紹介した米New York Timesは複雑だ。昨年10月、内部ミーティングで同社幹部がAppeのタブレット製品存在を示唆しつつ、こうしたデバイスの活用がNYTの将来の助けになる可能性に言及している(米NYT幹部、Appleの新型タブレット「Apple Slate」に言及)。一方で、NYTはiPad発表を待たずに1月中旬に同社サイトの有料化を発表したりと、水面下で進んでいたと噂されているAppleへの独占コンテンツ提供計画を破棄したという話がある。NYT側がこうした独占契約の締結に慎重になっているのが、同計画の進行を妨げたという噂だ。

だがNew York Magazineが4日に報じたニュースによれば、3日夜にニューヨークのミッドタウンにあるPrannaというレストランをNYTが予約し、50人あまりの幹部がそこに集合していたという。そこにはNYT発行人のArthur Sulzberger氏も出席しており、奇妙な帽子をかぶったJobs氏がその場に現れたという。地下のVIPルームで開催されたパーティはアットホームな雰囲気で、終始なごやかに食事会が催されたようだ。これもまた、緩やかな緊張関係にある両者の距離を縮めるための試みかもしれない。