東京証券取引所は8日、1月4日から稼動した新たな売買システム『arrowhead(アローヘッド)」の稼動後約1カ月の状況について、記者会見を行った。稼動後の注文件数は、2009年に比べて約10%増加、注文受付レスポンスはほとんど2ミリ秒で推移するなどの状況が明らかにされた。
「arrowhead」は、注文・約定処理の高速化といった投資者のニーズや注文の小口化、取引件数の急激な増加に対応するため、東京証券取引所が、「次代の現物市場を担うべく」開発した新たな売買システム。株式・CBなどのオークション取引を対象としている。2010年1月4日から稼動を開始した。
記者会見では、東京証券取引所 IT開発部 株式売買システム部長の宇治浩明氏が、arrowhead稼動後の状況について説明した。
宇治氏の説明によると、売買代金について、初日の1月4日は様子見傾向だったが、その後は堅調で、1日当たり1兆6,700億円程度で推移し、2009年に比べると、約10%ほどの増加傾向が見られた。また、注文件数についても、前年比約1割増で推移したが、約定件数はどれほど増えていないという結果となった。
TICK回数(値動きの回数)については、全銘柄の平均TICK回数は2009年末までは約200回だったが、arrowhead稼動後の2010年の平均TICK回数は約400回となり、約2倍となった。これについて宇治氏は、「約定する機会が増えたことになり、市場としての使いやすさが増した」と説明した。
新制度として導入した「連続約定気配」(※)に関しては、旧制度で約定しなかったケースで約定するなど、制度改正の影響が見られるとし、「今回導入した制度が充分に機能し、効果があった」(宇治氏)。流動性の低い銘柄に連続約定気配が出て、価格の急変動を抑える役割を担っていることも明らかにした。
※ 1注文の連続約定により、直近値段から更新値幅の2倍乖離した値段を超えて買い上がる(売り下がる)場合、当該値段に連続約定気配を1分間表示し、板寄せによって付け合せする制度
注文の小口化も進展した。宇治氏によれば、2000年ごろから1注文当たりの売買代金が少なくなる傾向は続いており、2010年1月以降もこうした傾向が続いている。
arrowheadの性能面では、5ミリ秒未満と公表されていた注文受付レスポンスに関し、概ねザラバ中において2ミリ秒程度で推移していると述べ、「5ミリ秒というのは、最も負荷がかかった場合を想定した数値。1日800万件程度であったため2ミリ秒となった」と説明した。情報配信件数については、2009年12月に比べ3倍以上となったと説明、「データ量、データ利用価値の両面とも増加した」と、"arrowhead効果"を強調した。