集積度の確信とI/O性能の向上
3つの技術は「Infinite Density(集積度)」と「Unparalleled I/O Performance(I/Oパフォーマンス)」の2つの要素に分けることができ、集積度側の技術が"Embedded HardCopy Blocks"と"partial reconfiguration"の2つ。I/O側の技術が28Gbpsトランシーバとなる。
Embedded HardCopy Blocksは、カスタマイズ可能なハードIPブロックのことで、同社独自のASIC技術「HardCopy」を活用し、標準的もしくはロジック比率の高いDSPやPCI Express 3.0などをハード化することで消費電力やチップサイズの低減が可能となるほか、カスタムIPなども活用できるためコスト削減も可能となる。
一方のpartial reconfigurationは、これまでのFPGAのリコンフィギュラブル性を向上させたもの。FPGA内の一部分だけを書き換えることができるようになる技術で、通常動作中に、その部分だけ動作を止めて当該部分だけを新しい機能に書き換えることができるようになる。これまではFPGAの回路を書き換えようとした場合、システム全体を停止させ、FPGAの回路書き換え命令を送り、書き換え後にシステムをリブートして新たなシステムとして動かすという手間とシステムのブート時間がかかっていた。同技術は同社の実証踏み「インクリメンタル・コンパイル設計フロー」を活用することで、FPGAの一部だけを書き換え、システムの停止やリブートをせずに新たな機能を稼動させることが可能となる。
これにより、必要な機能が必要な時に回路に入れることが可能となり、Hu氏は「既存のFPGAではシステム全体を考えた場合、ブート時間などがかなりかかっていた。そういった意味では相当早く回路切り替えが可能となるほか、ロジックエリアの大きさや場所の制限を設けていないため、好きなように構成を変化させることが可能となる」と説明するほか、「この技術により、FPGA設計者はFPGAの構造の詳細を気にする必要がなくなり、ハードウェア、ソフトウェア双方を新たなステージへと引き上げることができるようになる」ことを強調する。
なお、こうした新たなアーキテクチャの採用により、従来のFPGAと構造が変化するのかと聞いたところ、「今はまだその説明はする段階ではない」と含みを持たせた。
I/O側の28Gbpsトランシーバは、初めてトランシーバを搭載したFPGA「Mercury」から、現在の11.5Gbpsトランシーバを搭載した40nm FPGA「Stratix IV GT」まで培ってきたトランシーバ技術をさらに進化させたもので、28Gbpsに対応したFPGAとしては初めてとなる予定だ。
トランシーバ速度が向上すると何が良くなるのか。例えば10Gbpsと比べて、複数のトランシーバを組み合わせて同等の転送速度を実現しようとした場合、外部コンポーネント数やI/O数の削減が可能となる。また、それに伴い消費電力やチップサイズの削減が可能となり、結果としてコストの削減が可能となるわけだ。
「400Gbpsのシステムの実用要求時期は2013年。そこまでにシステムの評価などを行って提供するためには少なくとも2011年にはシステムの開発を開始しなければならない。そうすると、どうしても2010年以内にデバイスの仕様などを固めなければならなかった」とHu氏はこの時期での28nmプロセス採用デバイスに搭載する技術を公開した理由を語り、生産を担当するTSMCが28nmプロセスを順調に立ち上げられば、2010年内にも対応FPGAが登場する可能性もあるとした。
これらすべての新技術を搭載することで、性能を向上させつつ現行のFPGAと同様の消費電力などを実現することができるようになる。
こうした新たなデバイスが登場することで、より多くのソリューションが生み出される可能性が出てくる。また、今までASICが培ってきた分野にもよりFPGAが入りやすくなる可能性も出てくる。特に日本はASICが根強く使われる地域であり、そこに逆にチャンスが出てくるのではないかと、Hu氏は指摘する。中でもビデオやフルHD以上の解像度が要求されるディスプレイ、MFPといった分野での画像処理ではより高速なデータのやり取りが要求されることとなるとするほか、カメラやセンサなどの要素技術が日本にあることから、そういったものと組み合わせることで、日本企業の躍進も可能となるのではないかという。
最後に同氏は、「Alteraの日本法人である日本アルテラは2010年で設立20周年という区切りの年だ。そういった意味では、日本地域でこれまで以上の成長を遂げることで、記念となる年にしたい」と2010年の日本市場にかける抱負を語ってくれた。