ソフトバンクは2日、2010年3月期第3四半期(2009年4月1日~12月31日)の決算を発表した。連結売上高は前年同期比3%増の2兆453億円で、その内の1兆2,567億円をソフトバンクモバイルが占めている。
連結営業利益は3,663億円となり、5期連続で最高益を更新した。営業損益に減価償却費やのれん償却費などを足したEBIDAは6,012億円で、6期連続で伸び続けている。営業キャッシュフローは4,691億円、フリーキャッシュフローは2,835億円と、こちらも過去最高を記録した。また、ソフトバンクの代表取締役兼CEOの孫正義氏は、営業利益をKDDIと比較。3,768億円のKDDIに迫っているとし、「一生懸命経営している、その結果が出た」と語った。
この日の決算会見では、来年度の通期業績予想も発表された。孫氏は「リーマンショックのあと、世の中が見えないと不安になっているときこそあえて腹をくくって1年分の予想を発表した。今回も他社より先に1年分の予想を出す」と話し、来年度は5,000億円の営業利益を達成すると宣言した。ボーダフォン買収時の巨額の借入は、2010年1月末で9,867億円となり、純有利子負債も2009年12月末には1兆6,782億円と1年間で3,700億円削減されている。さらに孫氏は、「Twitterを始めてから、皆さんの叱咤激励を受けた。それを真正面から受け止め、言い訳なしで頑張ろうと強く決意し、役員会、経営会議でも真剣に議論し、最優先課題として陣頭指揮を取ながらやっていく」と話し、2010年度には設備投資をさらに積み増すことを発表した。「最終的な金額はまだ調整中」としながらも、「金額の問題だけでなく、新しいテクノロジー、新しい手法も含めて検討している」と意気込みを語った。
なお、ソフトバンクの第2世代携帯電話(PDC)は、2010年3月に停波するが、このタイミングでの純減が懸念されている。これに対して孫氏は「今日現在の累積数を下回らないよう、第4四半期までで純増させる」と話し、回線数の一時的な低下が、売上に大きな影響が出ないことを話した。第2世代ユーザーからの売上は全体の1.7%になっており、利益面ではむしろコストの削減につながるという。
1契約あたりの通信料収入であるARPUに関しては、2009年度第3四半期で初めて前年同四半期を超え、基本料、音声通話料、データ通信料の合計は4,200円となった。内訳は、基本料と音声の合計が2,150円で、データARPUが2,060円。ただし、同社では月月割による割引の影響があるとして、端末割賦請求額などを乗せた1契約あたりの現金収入も発表している。これによると、2009年度第3四半期の端末請求は1480円。あんしん保証パックの280円も加えると、トータルで5,960円になる。なお、孫氏は会見の席上で総合ARPUやデータARPUの増加額が、他社を超えたと話しているが、NTTドコモ(総合ARPUが5,440円、データARPUが2,440円)や、KDDI(総合ARPUが5,470円、データARPUが2,260円)の絶対値を超えたわけではない。
将来に向けた取り組みの一環として、決算と合わせて発表されたUstream, Inc.(米国カリフォルニア州)への出資や、SNSの「人人(レンレン)」を展開するOPI(中国)、ロックユーアジアなどの現状も解説された。Ustreamに対しては、1月29日に約2,000万ドルの払い込みが終了しており、2011年7月までに追加で株式を取得可能なオプションを行使すれば、出資比率の30%にあたる7,500万ドルになるという。孫氏はこれらのソーシャルメディアを「人々が人々に自らの情報を広めあうことが、加速度的に広がっていく分野の事業」と形容し、双方向性を高く評価。「Web2.0時代の新聞がTwitterだとすると、テレビ局がUstream」と例え、Ustreamのユーザー数が今年中に1億を超えるとの見通しを語った。
このようなソーシャルメディアが伸長している「一番の要因はiPhone」(孫氏)だという。孫氏は、昨年1年間で最も売れた端末がiPhoneであるデータを示し、「前年対比で世界一売上が伸びているのは、日本ではないか。しかも、数百パーセントという形で伸びている」と話した。TwitterやUstreamが普及すれば、「ますますiPhoneじゃなきゃいけない、iPhoneだとサクサク使えるという方が出てくる」とし、今後の売れ行きにも自信をのぞかせた。
質疑応答で、先日発表されたアップルのiPadについてのコメントを求められた孫氏は、「素晴らしい製品だと心から思っているが、それ以上はコメントするタイミング、立場ではない」と、ノーコメントを貫いた。同製品に採用されるmicro SIMに対しても「ノーコメント」とした。一方、iPhone以外の端末については、「360度同時に撃つのは戦略ではない。狙いを定めて、まずはそこに重点配備する」との考えを明かし、「ある程度成功を収めたら、そこから横展開していく。スマートフォン、モバイルインターネットの時代を切り開く最大の主役がiPhoneで、一般的な携帯電話がスマートフォン化するのは時間の問題」と語った。
また、Ustreamに関しては「有名アーティストやスポーツ選手など、優れたコンテンツの生放送が世界的に伸びている。ロングテールのユーザーが作ったものも、これから大きく広がっていく。生放送なので、1ユーザーあたりの視聴時間が長く、濃い。広告主にも強い関心が呼べることが、最近だいぶ証明されてきた」とし、広告を事業の中心に据えることを説明した。このほか、ドコモがサービス化、KDDIがトライアルを発表したフェムトセルは「粛々と準備を進めている」と、今年度中に広げていく予定であることを語った。