カルティエやパネライ、IWC、ランゲ & ゾーネ、ジャガー・ルクルト、ピアジェといった高級時計ブランド、頂上ジュエラーによる年に一度の新作発表会「Salon International de la Haute Horlogerie」(国際高級時計見本市)こと「SIHH」が2010年1月18日から同22日までスイス・ジュネーブで開催された。
20日から最終日まで現地取材を敢行したが、大不況をものともせずに、体感的には例年通り、全世界から招待されたプレス、リテーラーが訪れ活気に溢れていた。SIHHは完全招待制であり、入場時には事前に送った顔写真との照会、パスポートによる本人確認が行われてパスが発行される。
入場に際しても、金属探知機を備えるゲートを通る。しかし一歩、会場内に入れば、そこは超エレガントな異空間。統一感のある各ブランドのブース前にはラウンジがあり、無料でコーヒーやワインなどを楽しむことができ、ジュネーブの一流寿司店の握り寿司なども堪能することができる。訪れる人たちもドレスアップをしている。ブランドが招待した、サッカーのジダン選手や俳優のジャン・レノといったセレブたちに遭遇することもある。
カルティエ初の男性専用モデル登場
こうした中、「王の宝石商」と賞賛されるカルティエは今季、インハウス(自社製)ムーブメントを搭載した、いわゆる高級時計愛好家の琴線にダイレクトに触れるニューモデルなどを発表して注目を集めた。カルティエ初の男性専用モデル「カリブル ドゥ カルティエ」には、思わず唸ってしまった。
というのも頑強さと繊細さが同居するエスプリが宿る優美なフォルムに、カルティエが満を持して自社開発した、2つの香箱(ゼンマイ)を備え、高い精度と安定性を有する初の自動巻ムーブメント「1904 MC」を搭載しているから。この「1904」という数字は腕時計史上、大きな意味を持つ。カルティエ腕時計史のスタートへのオマージュであるからだ。
なぜなら1904年、ルイ・カルティエが友人である飛行家のアルベルト・サントス=デュモンのために、操縦中に時間を確認できる史上初となる男性用腕時計を創作。これが近代腕時計史の一歩となった。1世紀の時を経て、カルティエのインハウス・ムーブメント「1904 MC」が産声をあげたのである。リュウズガードを備えるケースもマスキュリンで、プライスも大変魅力的。国内ローンチ直後からの反響がとても楽しみなアイテムだ。
インハウス・ムーブメント、リーズナブルという点では、パネライをはじめ、『ポルトギーゼ』の70周年を記念して同シリーズを充実させたIWCも要注目。パネライのニューモデルの充実ぶりは、現地でのオフタイムの話題によく挙げられた。
ケース径の縮小、薄型化がトレンド
自社製ムーブメントの開発のほか、もう一つの高級時計のトレンドとして挙げられるのが、ケース径の縮小、薄型化である。
半世紀前、自動的にゼンマイを巻き上げるローターを小型化してムーブメント内に納めるという画期的な手法によりCal.(キャリバー)12Pを開発したピアジェ。「世界最薄」のエレガントなムーブメント作りをDNAに組み込む同ブランドは今季、厚さがわずかCD2枚分相当という、世界最薄のインハウス・ムーブメントCal.1200系を搭載する『ピアジェ アルティプラノ』を発表。
ピアジェ「アルティプラノ」 |
一方、1830年の創業以来、真摯な時計作り、計算されたミニマムデザインといった、自社の歴史を継承するコアコレクション「クラシマ」シリーズのニューモデルを充実させたボーム&メルシエも最薄というトレンドを先取り。クオーツ・ムーブメントを採用して、ケースの厚さがわずか4.4mmというオーセンティックでエレガント、しかもリーズナブルというアイテムをお披露目した。
ボーム&メルシエ「クラシマ」 |
なおSIHH開催中のジュネーブでは、フランク・ミュラーらがウォッチランドで「WPHH」を、独立時計師のアントワーヌ・プレジウソ、アラン・シルベスタイン、HD3ら複数ブランドが国連本部近くのコンベンションセンターで「GTE」という独自の新作発表会を開催。ドゥラクールはレマン湖畔にある自社ショールームでニューモデルをお披露目した。