米New York Timesによれば、1月31日(現地時間)、米Amazon.comが出版社らとの交渉の末に、ついに電子ブックの販売単価引き上げに応じたという。同社はKindle向けの電子ブック販売にあたり、9.99ドルという上限価格を設定している。これは新刊などでも一律で適用されるため、可能な限り話題のあるうちに利益を上げたい出版社らのハードカバー本のみでの提供を行うなどの抵抗につながっていた。
NYTの報道によれば、Amazon.comは1月29日に大手出版社の米Macmillanの書籍数千点から「Buy」ボタンを一斉撤去した。これには数々のハードカバーのベストセラーのほか、Kindle向けのデジタル版も含まれている。その理由は、Macmillan側が同社ハードカバー本を中心にデジタル版料金引き上げを表明したことを受けたもので、Amazon.comでは顧客向けのアナウンスの中で抗議の意味を込めた報復行為だったと言及している。Amazon.comでは、Macmillanのこうした行為が電子ブックの不当な値上げにつながりかねず、他の大手出版社らは追随しないものと考えていると述べている。
Macmillanでは、これらベストセラーやハードカバーを中心に電子ブック版について12.99ドルまたは14.99ドルの価格を設定している。Amazon.comではこの行為を非難しているものの、1月31日での顧客向けアナウンスを境に事実上黙認しており、最終的にユーザー側の判断に委ねる形となった。つまり、Amazon.comが設定した9.99ドルというKindleルールは事実上破られたものとなる。
ここで興味深いのは、12.99ドルまたは14.99ドルという価格設定の部分だ。以前に紹介したWall Street Journalの記事(「Apple タブレット用電子書籍は10~15ドル価格帯、報酬は3:7で出版社と配分」)のように、米AppleはiPadでの電子書籍(iBooks)の提供にあたり、出版社と12.99ドルまたは14.99ドル、あるいは9.99ドルという3種類のオプションを提示して交渉に当たっていると言われている。
AppleがiBookstoreの提携相手としてMacmillanを挙げていることからも、今回のMacmillanの動きの背後にはAppleとiPadの存在があることはほぼ間違いないだろう。Macmillanが強気の行動に出ているのも、iPadへの書籍提供をダシに利用した可能性がある。
Los Angeles Timesは先週末、米Apple CEOのSteve Jobs氏がジャーナリストのWalt Mossberg氏からの質問に対して「出版社はAmazon.comとの関係をハッピーとは思っていない。iBooksの価格は(Amazon.comと)同じになるだろう」と語っていたことを伝えている。なるほど、Appleは価格をAmazon.comに合わせるのではなく、Amazon.comがAppleの提案する価格帯に合わせざるを得なくなるという話だったのかもしれない。