投資の心理的負担を「ポートフォリオ」を組むことで軽減
日経225mini、TOPIX先物を扱うトレードシステム「Sグレード グルス」「Mグレード リンクス」「Lグレード ドラゴ」を開発したヘリオス代表取締役の長谷川博也氏は、以前は自身が裁量トレーダーで、投資で失敗をしてきた人をたくさん見てきた。システムトレードで失敗をする人には共通点があるという。
「システムトレードは8割が損失が出ている期間で、2割が回復して利益を出す期間なんです。このドローダウンの時期に精神的ダメージを受けてしまって、投資を引き上げてしまう。もう少し辛抱すれば回復期がきて利益をとれるのに、その時にはやめてしまっている。こういう方がとても多いのです」。
では、個人投資家に対するアドバイスは「多少の負けにくじけず、もう少しがんばれ」なのか? それも違うと長谷川氏はいう。トレードは遊びではない。リアルな資産を投入しているものなので、どんどん目減りをする状況で、なおかつ投資金額を上乗せしていく心理は、投資ではなく、ギャンブルになってしまう。
「お客様の投資にともなう心理的な負担をどうしたら軽減することができるか。私はポートフォリオだと思います。ポートフォリオを組むことで、心理的な負担を減らすことができ、結果として長く続けることができるようになります」。
ヘリオスでは、「グルス」「リンクス」「ドラゴ」の3つのシステムをリリースしているが、実はこの3つはアルゴリズムがかなり異なるものだという。これを組み合わせることで簡単なポートフォリオができあがる。簡単にいえば、Aが損失を出している期間は、Bが利益をあげているといように、損失・利益の時期がずれるので、長く続けられるのだ。
「理想的には3つのシステムすべてに分散投資していただきたいですし、他社のシステムと組み合わせてみるのもいいと思います。あるいは技術がわかっているお客様であれば、ご自分で組んだシステムと弊社のシステムを組み合わせていただくというのも面白いかと思います」。
システムトレードはゴルフ同様「修練」が大切
長谷川氏は「システムトレードは長く続けることが大切」という。なぜなら、1万時間、真面目にシステムトレードと向き合えば、だれでも利益がだせる世界だからだという。この「1万時間説」はかなりのリアリティがある。「だれでも利益が出せる」というと眉に唾をつけたくなる人もいるが、1万時間トレードと向き合うというのは大変だ。なぜなら、忙しいビジネスマンにとっては、毎日1時間であっても時間をとるのがかなり厳しいが、毎日1時間のペースでは、1万時間に至るのに30年弱かかるのだ。つまり、長谷川氏が「だれでも利益がだせる」と言うのは、システムトレードが簡単で儲かる世界だと言っているのではなく、「修練を積んできた人だけが利益を出せる世界」と言っているのに等しい。
「私はよくシステムトレードをゴルフに例えるんです。練習場ではいいショットが出せるのに、コースに行くといい成績が出せない方がたくさんいらっしゃいます。それは、コースは傾斜や風向きや芝目といった複雑な応用問題だからなんです。これを解くのに必要なのは、経験からでてくる感覚しかありません。パターの距離感というのは練習だけでは身につかない。これと同じ感覚が投資にも必要なんです」。
今まで、この連載で紹介してきた2社の方々は、「合理的な判断ができるトレードシステムの方が有利で、人は心理的な不安から間違いを冒しがち」という見方をとっていた。ところが、長谷川氏は「経験を積んだ人間の判断こそが重要だ」と言うのだ。真っ向から対立する。ヘリオスがリリースしているトレードシステムには、この「人間にしかできない高度な判断」がプログラミングされているという。
長谷川氏のゴルフ理論には説得力がある。なぜなら、ゴルフはだれでも上手になれるスポーツだからだ。野球やサッカーをうまくなろうとしたら、持って生まれた体格と運動神経がなければ話にならない。ところが、ゴルフはスポーツが生来苦手な人でも、うまくなれる唯一のスポーツだと言われる。練習さえすれば、シングルプレーヤーレベルには到達できる。ただし、そのためには膨大な時間が必要で、ここから「銀行は社長がシングルプレーヤーである企業には金を貸さない」という冗談が生まれている。シングルになるほどゴルフがうまい社長は、仕事そっちのけで練習をしているはずだというわけだ。
「トレードに対する感覚」を磨くことが重要
「まずシステムトレードの世界を知っていただきたい」と長谷川氏は言う。「今、システムトレードは自宅の書斎でパソコンさえあればできてしまいます。ですから、一人で始められる方も多いと思いますが、誰にも相談しない、誰とも議論しないという状態で、チャートとだけ向き合っていると、トレードに対する感覚が磨かれていきません」。
長谷川氏はこうも言う。「この世界、利益を出されている投資家は10%もいないと思います。残りの8割、9割の方は、損失を出し、システムトレードの世界を1年以内に去っていってしまう。でも、地道に続けていけば、確実に利益を出せる世界でもあるのです」。
では、人間の判断こそ重要だと主張する長谷川氏のトレードシステムはどのようなアルゴリズムになっているのだろうか。次回でご紹介をしたい。