FXオンラインジャパン ストラテジストの森宗一郎です。先週のオバマ米大統領が提唱した大幅な金融規制改革案、いわゆる「ボルカー・ルール」が、どの程度実現可能なのかという議論もありますが、現実的には相当に金融機関からの反対論が盛り上がることが予想されます。
一方、今回の金融危機の背景の中で、金融機関が機関投資家などあらゆる投資家からのあくなき要求を受けてリスクをとるようになったのが、過去のグラス・スティーガル法が事実上無くなったこと(1999年)によることは、議論の余地はないと思います。過去の恐慌・危機を踏まえて制定された法律が、金融機関等からの"なし崩し的なロビー活動"で無くなったのですから、自己規律を考えるのであれば立ち戻って考えるべきではないのでしょうか。
その意味において、米政府側のいらだちは分かりますが、時代が変わっていることは考慮すべきでしょう。その当時は、冷戦時代でしたし、新興国・途上国とでは先進国との差が大きかったと思いますが、今ではG20と称されるように先進国主導の経済ではありません。資源・資本の流れを考えますと、ベンチャー・新興国投資などリスクへの投資額がかなり減少する可能性が指摘されています。この点に関しては財務長官からも慎重な姿勢を示しており(木曜日にこのコメントが出た時、金融機関は拍手喝さいだったとか)、ある程度の修正(いや、それとも条件付き?)が、行われるかもしれません。
ただ、かなり良い(いや、悪い?) タイミングでこの発表が行われたことから、動揺が収まるかどうか……。ゴールドマン・サックスの決算発表に合わせて、という憶測もあるようですが、その点ではありません。ユーロにおいてはソブリンリスクがくすぶり、中国では引き締めへの転換、日本では政局不透明感、そのうえ資源関連の規制の動きとリスク回避になる材料が目白押しの中で最大級のバックアップですから、安全資産への逃避ならまだしも、キャッシュ化まで発展するとなると、円の地合いもコロッと変わるかもしれません。
そのうえ、先週末には、今月末で任期が切れるバーナンキFRB議長の再任に絡んで、反対を表明している議員が多くなってきており(その後、承認する議員も増えたが)、最悪今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で一旦は彼の任が解かれる?(任期が切れた場合後任が決まるまで暫定的に議長になるか、副議長が代行することになります)という話題になればどうなる事やら……。日本においても政局不安があるようですが、それ以上に米政府の強硬な姿勢がどれだけなのかを確かめる週となりそうです。
リスク回避的な話題が多数ある中で、今週は日本、アメリカ、ニュージーランド、そして南アフリカと金融政策会合が予定されています。世界の市場が動揺していることから、政策金利の変更の可能性はかなり低いと思いますが、出口戦略については日本以外では議論されることでしょう。 ただ、雇用情勢を考慮すれば、流動性供給の縮小の時期をどの時期にずらすかという話題になるかと思います。 FOMCにおいては、声明において地方の経済状況をどのようにみているのかに注目しておきましょう。
また、週後半にはオバマ大統領の一般教書演説、米GDP速報値という注目イベントがあります。 GDPに関して、市場平均では前期比+4.6%(前回+2.2%)と予想されており、2009年度末のクリスマス商戦も含めた数値となっていますので、ヘッドラインの数値よりは個人消費の数値がどういった内容になるかに注目しておきましょう。
ただし、やはり市場の注目は、前述したオバマ米大統領の金融規制案による「オバマショック」でしょう。 木曜日には一般教書演説があることから、FRB、財務省、欧州当局、などから様々意見が出てくるでしょうし、日々政府筋からのコメントが二転三転するかもしれません。はたして、演説において現状の強い姿勢を維持できるのかどうか、次第でリスク思考に変化が出てくることになると思います。
そう考えますと、週前半は、ポジション圧縮の動きで、市場で言われている一部偏っているポジションの解消の動きになりやすいと思います。 現状で一番偏っているのが資源関連、その次が新興国関連でしょうか。低金利状態で魅力のある分野かもしれませんが、調整圧力があるとみて無理なトレード・投資は控えておいたほうがよいかもしれません。
テクニカル的にS&Pで見れば、リーマンショック以降の反落で見て61.8%ポイントをクリアに抜けたとはいえず、HS指数においては61.8%ポイントを再度割り込んでおり、VIX指数が落ち着かない限りは下落リスク、つまりリスク回避地合いがあると認識して、見ていったほうがよいかと思います。
そして、為替市場においては不美人投票の地合い。
現状ではユーロ<ドル<円<AUDだったのが、ユーロ<AUDになる可能性が高くなっています。 中国の今後の姿勢+資源需要次第なのですが、オバマショックを受けて新興国に対する資本供給が金融機関から滞るという懸念が台頭した場合には、新興国通貨への圧力が高まる可能性があります。 今週は、イベント・政策会合、オバマ演説など、不美人投票が入れ替わりやすいと思いますので、リスクの話題には注意しておきたいです。 また、テクニカル的にユーロ円の長期のレンジ取引をいったん割り込んだことから、再度リスク回避の展開で下値模索となった場合には、他のクロス円にも波及する可能性があります。
今週の主なイベント
1月25日(月) |
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休日(ニュージーランド) |
(日)日銀金融政策決定会合(1日目) |
(韓)第4・四半期GDP |
(豪)第4・四半期PPI |
(欧)2月独消費者信頼感指数(GfK) |
(米)12月中古住宅販売件数 |
1月26日(火) |
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休日(オーストラリア) |
(日)日銀金融政策決定会合(2日目) |
(日)12月企業向けサービス価格指数 |
(日)白川日銀総裁会見 |
(欧)12月仏消費支出 |
(欧)1月独IFO業況指数 |
(欧)11月ユーロ圏経常収支 |
(英)第4・四半期GDP -速報値- |
(南ア)SARB政策金利発表 |
(米)11月S&Pケース・シラー住宅価格指数 |
(米)1月消費者信頼感指数 |
(米)11月住宅価格指数 |
(米)1月リッチモンド連銀製造業指数 |
(その他)IMF世界経済見通し(改訂) |
(米)財務省2年債入札 |
(米)FOMC(27日まで) |
1月27日(水) |
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(日)12月・2009年貿易統計 |
(日)1月日銀金融経済月報 |
(豪)第4・四半期CPI |
(南ア)12月南ア消費者物価指数 |
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数 |
(米)12月新築1戸建て住宅販売 |
(米)財務省5年債入札 |
(米)FOMC 政策金利発表 |
(その他)世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」(31日まで) |
(欧)1月独消費者物価指数 -速報値- |
(米)ガイトナー財務長官、AIG救済問題めぐり議会で証言 |
1月28日(木) |
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(NZ) RBNZ 政策金利発表 |
(日)12月商業販売統計 |
(欧)1月独失業率 |
(米)オバマ大統領一般教書演説 |
(欧)1月ユーロ圏景況感・業況感指数 |
(米)新規失業保険申請件数 |
(米)12月耐久財受注 |
(米)財務省7年債入札 |
(その他)世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」(31日まで) |
1月29日(金) |
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(NZ)12月貿易収支 |
(NZ)12月住宅建設許可件数 |
(日)12月全国コア消費者物価指数 |
(日)1月東京都区部コアCPI |
(日)12月有効求人倍率 |
(日)12月完全失業率 |
(日)12月家計調査 |
(日)日銀金融政策決定会合議事要旨 公表 |
(日)12月鉱工業生産速報 |
(日)白川日銀総裁 講演 |
(欧)12月ユーロ圏M3 |
(欧)12月ユーロ圏失業率 |
(欧)1月ユーロ圏消費者物価指数 -速報値 - |
(米)コーン・FRB副議長 講演 |
(加)11月GDP |
(米)第4・四半期雇用コスト指数 |
(米)第4・四半期GDP速報値 |
(米)1月シカゴ地区購買部協会景気指数 |
(米)1月ミシガン大消費者信頼感指数 -確報値- |
(その他)世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」(31日まで) |
(その他)BOI 金融政策決定会合 |