既報の通り、NTTドコモはソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「Xperia」を今年4月から発売する。山田隆持社長は昨年来スマートフォンに注力する意向を示していたが、Xperiaの発売に合わせて、取り組みをさらに強化していく方針を示している。
iモードメールやポータルサイト、Xperiaに向けたドコモの施策
Xperiaは、ソニー・エリクソンがグローバルに開発する端末を、ほぼそのまま国内に持ち込んだ製品だ。国内の携帯は一般的に、日本市場向けに開発された端末が持ち込まれることが多いが、Xperiaは、日本語のソフトウェアの一部が導入されている以外、ハードウェアの変更点はない。
ソニー・エリクソンの日本法人社長・仲井雄一氏は、「まったく新しいユーザーエクスペリエンスを日本マーケットに導入する意気込み。日本の携帯と違った使い方を盛り込んでいる自信作」と話す。
山田社長が「すべてにおいて新感覚」と強調するXperiaは、独特のUIと、メールやTwitter、Facebookといったコミュニケーションとの連携機能が充実。特に連絡先のアドレスから、その人のTwitterなどのデータが閲覧できるなど、インターネットサービスと端末UIを融合させている。
ソニーのデジタルカメラ「サイバーショット」部隊と協力して開発された機能も独特。サイバーショットの顔検出アルゴリズムを利用し、連絡先に登録した顔写真と、撮影した写真の顔をマッチングさせ、写真の顔からその人の連絡先にアクセスすることができるようになっている。
Xperiaが採用するAndroid OSは、アプリをインターネットからダウンロードして機能を拡張することができ、アプリ配信プラットフォームとして「Android Market」が用意されている。しかし、2万以上と言われるアプリには日本語以外のアプリが多く、アプリが見つけにくいという難点もある。山田社長は、日本の携帯に慣れ親しんだ人にとってはやりづらいのではないか」と指摘する。
そこでドコモでは、Xperia発売に合わせて「ドコモマーケット」を開設する。スマートフォン向けのポータルという位置づけで、人気のアプリやお勧めのアプリの情報を提供することで、ユーザーのアプリ検索を手助けする。
山田社長は、Androidだけでなく、Windows Mobile向けのアプリなどの情報もドコモマーケットに掲載していきたい考えで、「オープンアプリの総合百貨店にしたい」と意気込む。
Android Marketでは有料アプリの購入に「Google Checkout」サービスを利用するため、Googleにクレジットカードの情報などを登録する必要があり、一手間が必要となる。Xperia発売には間に合わないが、年内にはドコモの料金とあわせて徴収できるようにする計画だ。従来のiアプリの購入のように、より手軽に購入できるようになるのがメリットだ。なお、ドコモマーケットはXperiaとHT-03Aが推奨機種とされているが、ほかのAndroid端末でもアクセスできる。
さらに、スマートフォン向けの定額プラン「Biz・ホーダイ ダブル」を廃止し、通常の携帯向けの「パケ・ホーダイ ダブル」に一本化する。Biz・ホーダイ ダブルとパケ・ホーダイ ダブルの間に料金の差異はないが、一般の携帯からスマートフォンに変更するときに料金プランを変更する手間がなくなる。月額料金は、スマートフォンでは390円から5,985円の2段階定額制になる。
現在、国内のiモードメールの利用が無料となる「メール使いホーダイ」も提供されているが、無料対象範囲を拡大することで、ドコモのインターネット接続サービス「mopera U」メール送受信料金も無料となり、よりXperiaが使いやすくなるように配慮されている。
Xperiaでiモードメールは利用できないが、山田社長は「iモードメールが利用できるように鋭意開発中」と明言。今年中にスマートフォンでもiモードメールが使えるようにしたい考えだ。
国内企業からさまざまなアプリが登場
ドコモがAndroid端末に注力するということで、国内のコンテンツプロバイダらの動きも活発化してきている。音楽配信のレーベルゲートは、スマートフォン向けの音楽配信サービス「mora touch」を開始する。
mora touchでは、Android端末向けにAAC 128kbpsの音楽やVGAサイズ(30fps)の動画を配信し、タッチパネル操作に適したUIでコンテンツを購入できるようにする。PC向けには現在200万曲以上を配信しているmoraだが、mora touchでは新たな楽曲ファイルが必要になるため、当初はPCよりも少ない楽曲数になるが、順次曲数を増やしていくという。
mora touchで配信される楽曲にはDRMがかけられており、現時点では再生できるのは購入した端末に限るという「端末縛り」になるそうだ。電話番号での縛りでもないため、Xperiaを買い換えると、別の端末では購入した曲は再生できなくなる。PCなどへのバックアップもできない。
これはAndroidが対応するDRMのためということで、DRMがバージョンアップするか、楽曲側がDRMフリーになるか、どちらかでしか対応できないようだ。
購入した楽曲は着信音としても設定できるほか、他のアプリが利用することも可能で、たとえばDJアプリなど、マッシュアップアプリ出利用できるそうだ。
ANALOG TWELVEによる「待ちぴったん」は、ユーザー同士の「待ち合わせ」を支援するためのアプリ。ユーザー同士が待ちぴったんを使って待ち合わせ場所を指定すると、その場所までのルートが表示され、それぞれの画面にお互いの現在位置が表示されるため、お互いがきちんと待ち合わせ場所に近づいているかが把握できる。待ち合わせ場所を指定する際には、その周辺の飲食店などが検索でき、その店を待ち合わせ場所に指定すれば、相手にもそれが通知される仕組み。配信は4月の予定だ。
シリウステクノロジーズは、「nearnear(ニアニア)」を提供。飲食店の住所が入ったWebサイトをブラウザで閲覧中に、ブラウザの「共有」メニューからnearnearを選択すると、そのサイトを解析して住所を抽出し、アプリのリストに追加。その後、その場所に近づくとそれを通知してくれる。2月の配信予定。
リクルートは、「ホットペッパーFooMoo」を提供。同名のクーポンサービスをAndroid向けにアプリ化したもので、iPhone版にも提供されているが、Android版は「3週間で作り上げた」(担当者)という。それでも、音声認識による検索やTwitterによる情報共有などの機能も搭載。Twitter上に投稿されたURLに、Android端末からアクセスすると、FooMooアプリが起動してそのサイトが表示される連携機能も備えた。また、チラシ無料配布の「タウンマーケット」のAndroid版も開発中とのことで、いずれも2月ごろの提供予定だ。
音楽チャンネルのMTV Japanは、音楽ニュースやビデオクリップを配信する「MTV Apps」を提供する。米国ではiPhone版のアプリが配信されているが、MTV JapanとしてAndroid版を開発。豊富なコンテンツを提供する。配信は4月の予定だ。
公式アプリを始めてリリースするはてなは、「はてなフォトライフ」を配信。写真のアップロードや、サーバー上の画像の閲覧などが可能。カメラと連携し、写真を撮ると自動的にフォトライフにアップロードする機能も備えた。マルチタスクでこうした連携機能が使えることからAndroidアプリの開発に着手したそうだ。配信は4月の予定。
インデックスは、スライドショーアプリ「Tap Photo」を配信。BGMとスライドショーしたいフォルダを選び、画面をタップすると、そのタップのリズムに合わせてスライドショーするというアプリ。4月ごろの配信。
そのほかにも、サーバーアプリの「ServersMan」やソニー銀行のおこづかい帳アプリ「簡単おこづかいメモ」などが登場。Androidアプリを始めて出すだけでなく、アプリ自体を初めて出す企業もあり、Xperiaの登場に合わせて国内企業のアプリも活発化しそうだ。
期待を上回る商品を
ソニー・エリクソンのプレジデントBert Nordberg氏は、ソニーグループのビジョンである「make.believe」を実現するための重要な製品としてXperiaを位置づけ、「コミュニケーションが真のエンターテインメントになるようなユーザーエクスペリエンスを提供できるようにXperiaを作った」と話す。
Nordberg氏は、「日本市場に力を入れている」と強調。普及にはアプリ開発者らの強力も不可欠として、会見にも開発者を招待し、ドコモとともにアプリが多く提供されるよう注力していく考えを示している。
ドコモの山田社長も、Androidが日々進歩するOSだとして、アプリやサービスの拡大によってさらに進化していくと指摘。山田社長は、ドコモ全般について「ユーザーの期待を少しでも上回るような商品、サービスを提供していきたい」と話し、Android向けにも今後さらなる施策を展開していく意向だ。