不況が来る前にリストラを敢行し、得意とする市場をかっちりと握る。こういったビジネスの王道を歩み、創業30年の実績を持つEMS(電子機器製造請負サービス)メーカー大手の1つ、米Sanmina-SCIが日本市場への進出拡大に意欲を見せている。Sanminaは国内にも現地法人を持ち、滋賀県の野洲に製造工場を持つ。このほど日米の太平洋をはさんでインタビューした結果をお伝えする。

Sanminaが他のEMSメーカーと明確に違うところは、産業用に力を入れ、少量多品種生産をしているところだ。産業用では特に、医療機器分野と宇宙防衛分野が強い。医療部門では、世界で最も多くのFDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)およびISO(International Standard Organization:国際標準化機構)の認定工場を持っているという。このため厳しい品質管理手法を導入しており、他の追随を許さないとしている。製造する医療機器の範囲は広く、家庭用の小型医療器から、世界の大病院で使われているような大規模の医療機器まで扱っている。

宇宙防衛部門でも最大のEMSメーカーであることも特長だという。信頼性の高い製品やシステムの設計・製造・テストに至るまでの工程においてこれまで会社創業よりも長い40年以上の経験とノウハウを持っている。監視カメラやセキュリティカメラ、赤外線カメラ、スパイカメラ、さらにはビデオなどを販売している米Redi Comm Industriesの緊急通信システムを製造している。またTOCNET(Tactical Operations Center Intercommunications System:戦術作戦センターの相互通信システム)においても共同設計開発製造(JDM:Joint Design Manufacturing)の仕組みを利用して成功したとしている。

この他、通信・企業向けコンピュータやストレージ部門にも力を入れており、電子機器メーカーの大手と協業しており、光通信機器部門では特に米JDSUとパートナーを組み、光通信用のテスト機器で大きく躍進したとしている。

こういった産業用は基本的に高品質、高信頼の少量多品種生産であり、専門能力を身につけたEMSという企業イメージをブランドとして売っている。技術力を付けるため、同社は最新技術にも投資し、最先端の製造工場を作ってきた。新しい工場は新しいビジネス客を惹きつけるだけではなく既存の顧客にも付加価値を与えることにもなる。

Sanminaは最初から産業用に特化してきたわけではない。かつてはパソコン製造も手掛けていたが、今は撤退している。「個人向けのビジネスパソコン市場は長期的には当社の戦略に含まないことを決めた。このためこの分野を売却することが最も良いと考えた」と答えている。今後のネットブックやスマートブックなど将来的な市場に関しても大量生産の分野であり、同社のグローバル戦略の観点ともズレてくるため進出しない。

同社はグローバル展開の強みをさらに強くし、高い熟練技能と複雑な生産技術、優れたサプライチェーンやロジスティックス能力、そしていつでも可能な限り低コストを追求し、戦略的な優位性を保ち続けるとする。こういった努力すべてを全うすることによって同社はキーカスタマとの関係を維持し、成長できるようになる。