1月上旬に米ラスベガスで開催されたCES 2010にて、Antecがプライベートイベントを開催し同社新製品群のお披露目を行なった。多くの製品が2010年中に投入される予定のもので、新コンセプトを採用したPCケースなど、自作ユーザーには非常に興味深い内容となっている。今回も、ファンにはおなじみのScott Richards上級副社長がこれを紹介してくれた。

Antec上級副社長のScott Richards氏。あれ? ヒゲは? ……と、昨年までとの違いに気付いたアナタはAntecマニアだ

"Skeleton"コンセプトを一般ケースに

まずはATXタワーケース「LANBOY AIR」。MODULAR CASEと銘打たれた新シリーズのPCケースで、同社が発売中の"まな板"ケース、Skeletonシリーズのコンセプトを受け継いだ製品。どのあたりが"Skeleton"なのかというと、見た目はブラックを基調とした無骨なハイエンドPCケースなのだが、ケース内のあらゆるカバーがメッシュ仕様になっており、パーツへのアクセスも外側から簡単に行なえるよう工夫されているのだ。

Skeletonシリーズのコンセプトを受け継ぐ「LANBOY AIR」

例えばフロント部は全段フリーレイアウトベイで、部位ごとの着脱も非常に容易。そのフリーアウトベイも、通常のネジ固定だけでなく、ちょうど「ハンモック」の用に、専用アタッチメントでデバイスをベイスペースに自由に吊り下げることも出来るようになっているなど、これまでにない設置の自由度を実現している。

通気性が非常に良く、内部パーツへのアクセスも非常に良好

サイドパネルは別々に開閉でき、冷却ファン設置の自由度も高い

この専用パーツでHDDなどを吊るして搭載できる

さらにサイドカバーも普通のケースの様な一体型ではなく、フロントベイ部分のみ開閉して、サイドからアクセスすることも出来る。マザーボード/電源ユニットの上部に位置する部分も3分割されており、ケーストップからCPU上部、VGA上部、電源ユニット上部など、各個別に開閉してアクセスできる。サイドパネルについてもファンのフリーレイアウトを実現しており、使用環境の熱源に応じて好みの吸排気を設定することが可能だ。

フロント下部にはネジなどを入れておける小物入れ。こういった細かな工夫もふんだんに装備

上記した以外にも、ケーブルマネージメントや小物入れなどの小ギミックといった、従来のAntec製ハイエンドケースの機能を豊富に盛り込んでおり、満足度は高い。今回のものは試作品だが、今年上半期の製品発売を予定しており、価格帯は200~250ドル程度が想定されているようだ。

ストレージの取り回しが充実した新ケース

続いては、DARK FLEETシリーズとされる新シリーズのタワーケース。ATXサイズでドライブベイ14基対応の「DF-85」と、同じくATXサイズだが、やや小型でドライブ11基対応の「DF-30」をラインナップしている。

ドライブベイ14基対応の「DF-85」

ドライブ11基対応の「DF-30」

試作機ではサイドカバーがクリアパネル仕様

最大の特徴がコレ。2.5インチのダイレクトスロット。製品版では黒カバーになるかも、とのこと

「DF-85」のリア

「DF-30」のリア

フロント部のドライブベイの一部に、ホットスワップ機能を備え、フロントアクセスが可能であるほか、最大の特徴は、フロント上部の2.5インチストレージ用スロットだ。HDDなど2.5インチのドライブを、そのままダイレクトに抜き差しでき、ノートPCとのデータのやり取りや、単価の安いHDDなら持ち運びストレージ用にも便利な機能だろう。

フロントパネルのストレージ部分は分割開閉

内側の冷却ファン。フィルタ掃除が容易にできるようになっている

シャドウベイがホットスワップ仕様となっており、フロントアクセスでHDDを抜き差しするのに便利

内部はスタンダードなAntecケースといった感じ。ケーブル取り回し用のM/Bベース裏のスペースなども設ける。リア排気だけでなく、トップの大型ファンで熱溜まりも防ぐ

DF-85の主な仕様は、前述の2.5インチスロットを除き、ドライブベイが5.25インチ×3、3.5インチ(ホットスワップ付)×4、3.5インチシャドウ×5、2.5インチシャドウ(SSD用)×1。本体サイズはW213×D505×H596mm。発売されれば価格帯は200ドル前半程度になる見込みだ。

DF-30の主な仕様は、前述の2.5インチスロットを除き、ドライブベイが5.25インチ×3、3.5インチシャドウ×6、2.5インチシャドウ(SSD用)×1。本体サイズはW198×D468×H485mm。発売されれば価格帯は150ドル程度になる見込みだ。

オーバークロッカー向け、昇圧機能付の新電源

電源ユニットでも個性的な製品が登場していた。ハイエンドのTruePower Quattroシリーズの新モデルで、オーバークロッカー向けの「TPQ-1200 OC」だ。電源容量1,200WのATX12V v2.3電源だが、普通の電源との最大の違いとして、+12V出力の電圧コントロールができる。

見た目は普通のTruePower Quattro、と思いきや

見慣れないダイアルツマミが2つ。これがキモだ

本体に2つのダイアルツマミが搭載されており、1つはファン速度のコントロール用、もうひとつが+12V出力の電圧調整用で、このダイアルで11.8V~12.4Vの範囲で電圧を変更することができるようになっている。CPUやGPUのオーバークロック時に、+12Vの電圧を調整して限界値を上げてしまおうというものだ。「PowerCache」機能として、主要な各電源ケーブルに、安定動作用のコンデンサを搭載している点も大きな特徴となっている。

ケーブルにコンデンサを搭載。突発的な負荷にも対応するためという。ACケーブルの3ピンコネクタも通常のTruePower Quattroとは違い、ちょっと大きかった

出力スペックは、+3.3Vが25A、+5Vが30A、+12V1が38A、+12V2が38A、+12V3が38A、+12V4が38A、+12V5が38A、+12V6が38A、+5VSBが6A、-12Vが0.5A。高効率を示す80 PLUS SILVERの認証も取得している。発売されれば価格は350~400ドル程度になるとのこと。

ほか、AntecはノートPC用の冷却スタンドでも人気のメーカー。いくつか面白い製品があったので紹介しておきたい。まず写真の製品は、単なる冷却スタンドではなく、ノートPCのディスプレイ位置をデスクトップ利用時の目線の位置にできるというもの

会社内外で同じノートPCを使って仕事をしていたり、出張先のホテルなどでノートPCを使う時に便利。写真の用に、腰を据えて作業するときは、外付けのキーボードやマウスを用意して、ノートPCは何かに立てかける、なんて使い方をしている人もいると思う

こちらは個人的に購入決定したノートPCスタンド。ファンが無いので冷却性能はそこそこだが、キーボードが打ちやすい絶妙な傾斜を実現してくれる

薄型で折りたたみ式なので、かばんに入れても邪魔にならない。日本市場でも発売予定だ