KONAMIよりリリースされたプレイステーション・ポータブル向けミステリーアドベンチャーノベルを原作とする、TVアニメ『おおかみかくし』が2010年1月7日よりTBSにて放送開始となった。

TVアニメ『おおかみかくし』はTBSにて現在放送中

メインスタッフOP・EDアーティスト編に続く今回は、TVアニメ『おおかみかくし』の音楽を担当する尾澤拓実氏。TVアニメの劇伴を担当するのは今回が初めてという尾澤氏だが、高本監督が「音楽面によって、作品の世界観が際立ってきている」と語るとおり、非常に期待が高い。そこで今回は、エンディングテーマ「月導-Tsukishirube-」の作詞・作曲・編曲も手掛けた尾澤氏に、TVアニメ『おおかみかくし』の音楽面での魅力について語ってもらった。


音楽・尾澤拓実が語るTVアニメ『おおかみかくし』の魅力

――TVアニメ『おおかみかくし』の音楽を担当することが決まったときの感想を教えてください

尾澤拓実氏

「最初、本当に私で良いのでしょうか? というのが正直な感想でしたが、元々アニメや漫画が大好きで、いずれアニメの劇伴を手掛けてみたいという思いもありましたので、大変嬉しかったです。タイトルからミステリアスで和風で、ちょっと怖い御伽話的な印象を受けました。楽曲打ち合わせの時にも、和や民族的な方向で話を進めていただけたので、そういった世界観の曲が好きだった事もあり、自分の作風に合っているのかもしれないなと思いました」

――TVアニメ『おおかみかくし』の音楽を制作するにあたって、作品のどのようなイメージを重視しましたか?

「やはり怖さですね。まずはこれを重視しました。ですが、単に脅かしの恐さだけというわけではなく、悲しみや苦しみ、怒りなどと背中合わせの怖さもあると思ったので、それらを上手く絡ませていこうと思いました。ただ、その怖さがなかなかの強敵でして、思うように怖さが出なかったり、別の方向に怖すぎたり……。色々アドバイスをいただきながら、心地よい怖さを目指して格闘しました。心地よい怖さ……変な表現ですね(笑)」

――TVアニメ『おおかみかくし』の音楽を制作する際、苦労した点を教えてください

「例えば原作が漫画や小説の場合は、とにかく読み込んで読み込んで、自分自身を世界に入り込ませた状態で曲作りに臨んだりするのですが、すでに音楽や声の付いてしまっている物はモロに影響を受けやすく、そのイメージに捕われて、離れられなくなってしまう恐れがあったので……、今回はゲームで使用されていた歌物を少し聴いた程度で、BGMなどはほとんど聴かず、ゲームも敢えてプレイしないで、なるべくまっさらに近い状態で作ろうと決めていました。ファンの皆さんのほとんどは、やはりゲームの印象を強く持たれていて、各キャラにも思い入れがあったり、場面場面で印象に残っている、お気に入りの音楽があるのだろうなと思ってましたので、聴かない、プレイしないと決めたはいいけど、途中どうしてもゲームの存在が気になってしまい……。私の解釈は間違ってないだろうか? このキャラにこの雰囲気の音楽は、本当は違うんじゃないだろうか? と、何度も自問自答して手が止まる事も多々ありました。ここを打破するのに、苦労というか少々時間がかかってしまいましたが、何曲も作り進めていくうちに、これが私なりの『おおかみかくし』なんだ! と、変に考えすぎず、感じたありのままを出して行こうと思えるようになり、そこからは、こんな曲調は予想外かもしれないぞ? とか、反応を想像しつつ、ちょっとワクワクしながら作っていけました」

――エンディングテーマ「月導-Tsukishirube-」を制作するうえでのポイントや聴きどころを教えてください

「全体のストーリーを読ませていただいて、一番強く印象に残ったのが五十鈴の想いだったんです。だけど彼女だけではなく、与えられた使命を全うしなければいけない運命にいる眠や、その狭間にいる博士、過去に何らかの傷を負った者などなど……、本当に様々な人物の『想い』が交差して、最終的には『大切な人、人達と生きて行ける未来』みたいなものに繋がりまして、葛藤しながら、もがき生きていく、生きていきたい……そんな願いを歌詞にしました。楽曲はノリが良く疾走感があり、どこか物悲しいメロディーだけど、希望を感じる事の出来る形を目指しました。また、南里侑香さんの歌声によって、切ない想いの中にも凛とした芯のある強さが出たと思うので、そこは大きな聴きどころかと思います。要するに全部、じっくり隅々まで何度も聴いてほしいです。楽曲のある部分が本編に登場する曲ともリンクしていますので、そこも要チェックで。

――「月導-Tsukishirube-」というタイトルにはどのような想いが込められていますか?

「お話の中に月が出てきていたというのもあるのですが、太陽は光の中に闇(影)を生む……だけど月は闇の中に光を生みます。真っ暗な空に浮かぶ一つの大きな光は、闇になればなるほど強い光となって照らしてくれるような気がしたので、闇=悩みであったり、先が見えずにどうしていいかわからない状況を、月の光がその時その時の進むべき道へと導いてくれるのではないかな、というイメージで『月導-Tsukishirube-』と付けました」

――TVアニメ『おおかみかくし』の音楽面で注目してほしいポイントを教えてください

「和風の音やメロディーをメインに使いつつ、所々ほんのり多国籍な匂いのする要素を混ぜていきながら、怖い曲はもちろん、哀しく切ない曲や怪しい曲、激しいシンフォニックメタル調の曲もあったりします。でも、そういったダークな世界だけでなく、ちょっと楽しくホっとできる曲もありますので、そんなギャップを楽しんでいただけたら嬉しいです。あとは『声』ですね。何語だかわからない、呪文みたいな造語コーラスを多用した曲をよく作るのですが、この『おおかみかくし』の音楽にも、そういった声がたくさん入っています。造語コーラス系は、曲によって声色を変えたりしながら、全て自分で歌わせていただいてますので、その辺りも是非注目して聴いてみて下さい。そしてもう一つ、忘れちゃいけない最大のポイント、裏ボスと言ってもいい曲があります。劇中のどこかで出てくるであろう『八朔CMソング』ですね(笑)。すぐに覚えられるので、皆さんにも楽しく口ずさんでもらいたいです」

――それでは最後に、番組を楽しみにしているファンの方へのメッセージをお願いします

「初劇伴作品という事もあり、ほとんどの方が初めて私の音楽を耳にすると思うんです。なので、この作品で尾澤拓実を知って下さる、おおかみかくしファンの方はもちろん、新作アニメをチェックされているアニメファンの方々や、ずっと尾澤の活動を見守って下さっていた方々にも気にいっていただけて、後々曲を聴いただけでシーンを思い出して浸れるくらいに印象づける事が出来たら嬉しいです。あんなこんな曲達が、本編で絵にはまってどのように聴こえ、感じるのか。数々の魅力的なキャラ達がどう動いていくのか……。私も非常に楽しみで今から放送が待ち遠しいです。音楽、エンディングテーマ共々、どうぞよろしくお願いします!」

――ありがとうございました



TVアニメ『おおかみかくし』は、TBSにて毎週木曜日の深夜1時59分より放送されているほか、2010年1月19日(火)の深夜0時よりサンテレビ、2010年1月30日(土)の深夜1時よりBS-TBSにて放送開始予定。なお、マイコミジャーナルでは、引き続き、TVアニメ『おおかみかくし』に関わる人々のメッセージを紹介していく予定だ。

■TVアニメ『おおかみかくし』おもなスタッフ
原作 / コナミデジタルエンタテインメント◆原作原案 / 竜騎士07◆キャラクター原案 / PEACH-PIT◆監督 / 高本宣弘◆シリーズ構成 / 待田堂子◆キャラクターデザイン・総作画監督 / 渡辺敦子◆アニメーション制作 / AIC

■TVアニメ『おおかみかくし』おもなキャスト
九澄博士 / 小林ゆう◆櫛名田眠 / 伊瀬茉莉也◆摘花五十鈴 / 加藤英美里◆九澄マナ / 藤田咲◆朝霧かなめ / 渕上舞◆真那香織 / 後藤邑子
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