減量しなければならないから、肉を食べるのはダメ。常識のように思われていることだが、実は大きな誤りだという。いったい、どういうことなのか? 管理栄養士の大柳珠美氏に聞いた。
1.肉は、たんぱく質、ビタミンの宝庫
減量の目的は、単に体重を落とすことではなく、体脂肪を減らすこと。筋肉を落としたり、基礎代謝を下げたりすることは避けたい。肉は、良質のたんぱく質を多く含み、エネルギー代謝に不可欠なビタミンB群も豊富。何よりも糖質をほとんど含まないので、食べても血糖値が上昇しない。肥満ホルモン、インスリンが追加分泌されないため、ステーキを食べている最中でも体脂肪は燃焼する。ダイエットのときこそ、エネルギーを制限するのではなく、栄養価の高い肉類を食べよう。
2.エネルギー代謝に必要なビタミンB群
ダイエット中、食事の量を減らしたり、野菜やこんにゃくなどエネルギーの低い食材ばかりを選んだりしていると、ビタミンB群が不足しやすくなる。たまった脂質をエネルギーとして代謝するときは、ビタミンB2やビタミンB6が必要。そのほか、ビタミンB群は各種ビタミンがチームとなってはたらくという特徴がある。ビタミンB群を多く含むのは、野菜ではなく肉類や魚介類。肉類では、豚、牛、鶏のレバーに多く含まれる。ほかには、牛ヒレ肉、牛もも肉、豚の赤身肩肉、鶏むね肉、鶏もも肉(皮なし)などがあげられる。
3.満腹感を得るためには野菜や海藻、きのこを
肉料理には、野菜や海藻、きのこをたっぷりと添えて、食物繊維を摂り、満腹感を得よう。きゃべつのせん切り、海藻サラダなどをサイドメニューとしてオーダーし、大根おろしのタレでさっぱりといただくのがおすすめだ。しゃきしゃきとした歯ごたえのある、もやしやきのこの和え物もいい。箸休めとなり、早食いを防止するという効果もある。ただし、糖質が比較的多い根菜やかぼちゃ、コーンやいも類は、風味や季節感を楽しむ程度にしておきたい。
4.肉の料理法には注意
糖質をほとんど含まない肉類だが、調理法には注意が必要。たっぷりの砂糖で味付けしたすき焼きや肉じゃが、照り焼きなどは避けたい。最近は糖質ゼロの甘味料が売られているので、自炊のときは、これらを使用すればダイエット中でも安心だ。そのほか要注意なのは、糖質の多いパン粉からつくられる衣。とんかつをはじめ、ぎょうざやシュウマイの皮にも気をつけよう。おすすめは、しょうが焼き、ステーキ、チキンソテー、ポークソテーやチンジャオロースーなど。鶏のから揚げには、比較的衣が少ないものもある。
5.肉の脂身はできるだけ避ける
肉類はダイエット向きとはいえ、脂身は摂りすぎないように。肉の脂肪に多い飽和脂肪酸は、血管を丈夫に保ったり、貧血を予防したりする大切な栄養素である一方、過剰に摂取すると血を流れにくくして細胞に酸素や栄養素が送られず、疲労感を生じさせたりする原因になるといわれている。脂質たっぷりの肉はエネルギーも高いので注意したい。霜降りより赤身肉、皮つきより皮なしを選ぶこと。焼肉屋ではカルビではなく赤身ロース肉、焼き鳥屋では手羽先や鶏皮より、鶏もも肉の塩焼きや鶏ささみを楽しもう。
PROFILE : 大柳珠美(おおやなぎたまみ)
管理栄養士。NPO法人糖質制限食ネット・リボーン理事。明星大学人文学部卒業。二葉栄養専門学校卒業。都内の3つのクリニックで、糖尿病、機能性低血糖症、脂質代謝異常、肥満等、生活習慣病の治療、予防のための食事指導を担当。講演会、レシピ提案、監修等を通し、広く情報を発信。著書に『糖尿病のための糖質オフごちそうごはん』(アスペクト社)をはじめ、『糖質オフのおいしいお菓子とパン』(アスペクト社)、『満腹ダイエット』(プレジデント社)の監修等がある。