アメリカン航空は12日、同じくワンワールドアライアンス創設メンバーであるブリティッシュ・エアウェイズ、カンタス航空およびキャセイパシフィック航空とともに、JALに今後3年間で20億ドル相当の事業提携効果をもたらす提案をまとめ、都内にて記者会見を行った。
「ワンワールドにとって、JALは極めて大切な存在」
登壇したアメリカン航空財務・企画担当執行副社長兼 最高財務責任者(CFO)のトム・ホートン氏は、「アメリカン航空とワンワールド加盟各社はJALの今後の成功を支え、長年にわたる歴史を守る支援を行える独自の存在である」と強調。さらに、「ワンワールドにとって、JALは極めて大切な存在である」と繰り返した。
今回の提案の核となるのが、JALとアメリカン航空、ブリティッシュ・エアウェイズ、およびカンタス航空との事業提携関係の強化。この3社による20億ドル相当の事業提携効果は、今後3年間にわたって実現されるという。
20億ドル相当の事業提携効果の中には、JALがワンワールドを通じて現在、獲得している収益の継続による15億ドル、アメリカン航空が保証する収益の増分3億ドル、およびブリティッシュ・エアウェイズによる収益の増分2億ドルが含まれる。
アメリカン航空ではすでにJALに対して、日米間の独占禁止法適用除外(ATI)の申請を提案しており、「強力なネットワークとATI取得能力を持つアメリカン航空がJALにとって最善の選択肢であると確信している」とホートン氏。このATIとアメリカン航空との共同事業に基づき、JALは年間1億ドルと推定される収益拡大を実現することができるとしていた。さらにこの提案の一環として、「アメリカン航空は共同事業の最初の3年間について、年間1億ドルの新規収益を保証する」と言い切り、「こうしたメリットを保証することに大きな自信をもっている」とも付け加えた。
さらに、アメリカン航空とパートナー各社は、要望があり、かつ適切と見なされる場合、JALに対し、アメリカン航空・ワンワールドおよびTPGが従来の提案に3億ドル増額した14億ドル超の出資を行う財政的な提案をまとめている。この総額のうち、最大約3億ドルはアメリカン航空とワンワールドから拠出される見通しだ。
「格安航空会社の事業戦略のノウハウを提供する」
ブリティッシュ・エアウェイズは独占的に使用している英・ヒースロー空港のターミナル5の発着枠の一部をJALに譲渡することも検討。「いかにJALを大切にしているかがわかるだろう」とブリティッシュ・エアウェイズの投資部門ディレクター、ロジャー・メイナード氏 |
ブリティッシュ・エアウェイズも、JALとの間で一連の提携強化を提案。JALに3年間で約2億ドルの新規収益をもたらすと見込む。
ブリティッシュ・エアウェイズでは、共同事業の一環として、ロンドンのヒースロー空港と東京の羽田国際空港間の新路線就航の実現を目指す。4月からは、JALとのヒースロー空港発欧州行きのコードシェア便運航先を2倍以上に増やし、乗り継ぎ回数の少ないシームレスな旅行機会を増大させる予定。さらに、ブリティッシュ・エアウェイズでは、11月から成田国際空港での業務をターミナル1からターミナル2に移し、成田以遠便への乗り継ぎを改善することも発表した。
またカンタス航空では、格安航空会社の事業戦略のノウハウ提供を申し入れている。カンタス航空の本社統括グループ・エグゼクティブ、ロブ・ガーニー氏は「プレミアムと格安という、2つのブランドを利用したカンタス航空の戦略は規模やネットワーク、乗客の獲得の面で強みとなり、世界的な景気低迷の課題にも対応することができる」と自信をみせる。
さらに、香港をハブとする、キャセイパシフィック航空日本支社長であるサイモン・ラージ氏は「JALがワンワールドのメンバーとして存在することが、戦略的に重要であり、かつ急速な成長を遂げているアジア市場で強力なプレゼンスを発揮するうえで不可欠であると考える」と話していた。
「スカイチームに移るのは賢明な選択ではない」
さらにアメリカン航空は、「機材計画やネットワーク分析、財務予測、売上管理、およびメンテナンス業務などの分野で、JALに直接的な支援と協力を提供する用意がある」とアピール。2003年に自社の再建計画(Turnaround Plan)を導入以来、アメリカン航空は上記の分野におけるコスト削減プログラムと構造的改善の導入により約60億ドルを削減しており、「JALが現在直面している問題も含め、数多くの課題に対処することができえる」としていた。
JALをスカイチームに引き抜こうというデルタ航空の動きに対して、ホートン氏は「率直に言えば、デルタ航空が自社陣営にJALを引き込もうとしてることを知ったときは驚きました。しかし、デルタ航空の提案よりも、今回の我々の提案のほうがはるかに優れているのは明確な事実。ワンワールドに留まることはJALにとってのリスクが少なく、スカイチームに移るのは賢明な選択ではない」と述べ、アライアンスの移籍による混乱を生じさせるべきではないという考えを示した。