近年、モノ忘れをきっかけに脳ドックを受診する40代が増えているという。若年性の認知症がマスコミで報道されるようになってから、脳の萎縮を見て欲しいというオーダーが増えているようだ。大手町にある東京クリニックの笹沼仁一医師によると、アルコールを飲む人は同世代より早期に萎縮が訪れることがあるとのこと。
「1日に日本酒なら2合、ビールなら大瓶2本を20年間飲み続けると、脳には何らかの影響が出ると言われ、1日2合の飲酒でも確かな差が現れるとされています」(笹沼医師)。
もし萎縮があったとしても、そのまま将来のアルツハイマーにつながるわけではないが、日本脳ドック学界では、脳ドックを認知症の早期発見の手段として推奨している。また、高血圧・高血糖・高脂血症などが原因で進行する「脳血管疾患」も併せてチェックできるのも嬉しいところ。そこで今回は、マイコミジャーナル編集長、上条氏に実際に脳ドックを体験してもらった。
脳ドックを受診したほうがいい人は以下の通り。このうち1つでも当てはまったら受診することをおすすめする。ちなみに今回受診した上条氏は毎日、発泡酒500ml、サワー500mlを飲んでいると話す。「脳ドックは一度やってみたいと思っていました。最近ひどく忘れっぽい、時々どもる、手の力が抜けてモノを落とすことがある、というのが心配だったからです」と不安を隠せない様子。
脳ドッグを受診した方が望ましい人(以下のうち1つでも該当する)
今回、脳ドックを受けさせていただいたのは、JR東京駅丸の内北口より徒歩3分の位置にある「東京クリニック」。同クリニックの脳ドックは、頭部のMRI(磁気共鳴断層撮影診断)・MRA(MRIによる血管撮影)検査で、脳の血管の異常や脳腫瘍の有無を中心に調べるほか、身体計測・心電図・血液検査などがセットになっている。ネクタイをつけたまま受診でき、検診時間も90分程度なので、会社帰りに立ち寄ることができるのも魅力だ。専門医による説明・相談の他、結果説明も受けられる。なお、受診当日は食事制限がある。
同クリニックでは最先端の医療機器が導入されており、これまでのMRIでは描出の難しかった全身の微小な構造や血管も明瞭に画像化することができる「1.5T(テスラ)MRI」で診断を受けられる。
実際に上条氏に検査を受けてもらったところ、頭部MRI・頭部MRAは20分程度で完了した。終了後、医師の診断を受ける。笹沼氏に話を聞くと、脳の萎縮程度は0.48。0~1の範囲なら、関心領域内の萎縮はほとんど見られないので安心だ。また、脳血管疾患についても問題なしとの診断だった。ただ、動脈硬化が起きている可能性のある部分も映像にうつっており、少々心配なところも。そうした不安は、医師にその場で相談できる。
上条氏に、脳ドックを受けてみてどうだったか、感想を聞いたところ「思っていたよりも時間がすごく短かったですね。20分というのは驚き。こんなに簡単なら定期的にやりたいと思います。結果が悪くなかったので安心しました。でも萎縮が気になるので、お酒は控えたいと思います」と笑顔を見せた。
笹沼氏によると、30代でも脳の委縮が見られる人がいるそうだ。例えば、仕事のストレスから、平日は仕事帰りに毎日同僚と飲みに行き、週末も昼からビールを飲み続けていたという38歳のサラリーマンにも萎縮が見られた。彼は、脳ドックによって年齢よりも明らかに萎縮が進んでいる自分の脳をみて、はじめてアルコールの怖さを知ったという。それ以来、酒豪を自認していた自分の生活を反省し、週末には休肝日を設け、平日も量を減らすように心掛けている。
タバコがやめられない人が肺のレントゲンを見て禁煙を誓うように、お酒がどうしても減らせない人は脳ドックを受けてみるというのもひとつの手段。飲み会が多くなるこの時期、脳ドックを契機に自分の酒量を見直してみてはいかが?
東京クリニックの開設日は月曜~土曜日(要予約)。検診料は4万7,250円(税込)、脳の萎縮を定量解析 オプション解析ソフトは1万500円(税込)。