エムエスアイコンピュータージャパンは12月15日、同社の2009年を振り返り、2010年の展望を説明する記者発表会を開催した。台湾MSI本社のAssistant Vice PresidentであるVincent Lai氏が来日し、説明を行なっている。同氏は、2009年が全体的に厳しい年であったと認めるが、2010年の成長には自信を見せていた。
Vincent Lai氏の来日会見といえば、将来の新製品の情報など、本来ならば発表してはならないような最新情報まで、幹部特権(?)で公開してくれる場としても知られているのだが、今回は同社の"情報統制"が徹底されていたのか、そういった話題はほとんど無かった。
代わりに、2010年に向けた製品展開を考えて行く上で重要となる、パーソナルコンピュータを取り巻く動向をLai氏が分析したものが紹介されていた。まずはインフラについてで、Netbookのヒットを例に挙げるまでもなく、ネットワークの環境が、ハードウェアメーカーにとっても、これまで以上に重要度を増している。
興味深かったのは各国のネットワーク環境の整備に、かなり個性的な傾向の違いが出ていることだ。回線の普及率で言えば北米が強く、回線の速度で言えば日本や韓国などが強いという、よく知られるデータに目新しさはなかったが、注目は東欧の新興諸国が急激にインフラ整備を進めているというデータだ。これらの国々のブロードバンド回線の整備の伸びは、経済発展とも連動している。MSIとしてもここを新たな開拓市場として大きな期待を寄せているそうで、2010年にはこの地域へは今まで以上に注力していく方針であることが説明されていた。
関連して話されていたのが、ネットワークを利用するコンテンツについてだ。MSIはハードウェアのメーカーであるが、Lai氏はコンテンツが重要であると思いを述べ、例として、AmazonのKindleなどを挙げた。北米ではそれら電子ブックリーダーと呼ばれる製品の普及が進んできている。そしてMSIのお膝元である台湾でも、各社が電子ブックリーダーを発売したのだが、これまでは、思うように普及していなかったという。
その理由がコンテンツで、台湾のハードウェアメーカーはコンテンツを持っておらず、電子ブックリーダのコンテンツを持つ出版社ともうまく協力できなかったことが、普及を阻んでいたと説明する。Lai氏は、この例で、デバイスの機能や最新のハードウェア技術だけに目を向けるのではなく、今後はさらにコンテンツの存在を重視しなければならないと述べていた。
話題の新OS「Windows 7」についても言及があった。Lai氏は、特にWindows 7のタッチ機能に注目しており、同社製品でアピールしていきたいという意向を話していた。同社の現行製品では、日本国内でも一体型PCのMSI AE1900など、タッチパネル搭載機が発売中だが、同社は一体型PCでWindows 7登場以前よりタッチパネルに取り組んでいただけに、Windows 7のタッチ機能との連携にも期待が持てる。ちなみに、同社の一体型PCは現在非常に好調なセールスを記録しており、2009年は台湾AIO市場のトップシェアを獲得したそうで、NetbookなどのノートPC製品などと並び、同社の事業の柱になりつつあるようだ。
OSでは他にも、GoogleのChrome OSやAndroidなどの登場で活気づく、将来のOSについてのLai氏の見解も話された。PC製品へのインストールという観点で、Windows 7を除き、同氏が言及したOSはAndroid、Moblin、Chrome OS、Ubuntu。まずAndroidとMoblinについては、ミニノートやNetbook向けで考えられるが、Moblinには互換性の懸念があるする。Chromeについては、パワーユーザーにとっては機能がシンプルすぎるため、利用には限りがあると見ているようだ。Ubuntuは既に5%程度という現時点では十分なシェアを持ち、将来性を感じているというのが、同氏の見解だ。
さらに、3Dディスプレイや、PCでのTV利用の将来など、様々な話題が語られたが、Lai氏最後に、MSIの2010年のスローガンを発表した。台湾の言葉で「効能首選 影音極微」というもので、「選りすぐりのパワフルなハードウェアで、ユーザーがエンターテイメントライフを満喫できるようにする」というような意味だそうだ。まだ明かせない魅力的な新製品を多数計画中であることを述べ、Lai氏は自信の表情で「2010年はすごく良い年になる」と語っていた。